バレルアルデヒド

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ペンタナールから転送)
バレルアルデヒド[1][2]
Structural formula of pentanal
Ball-and-stick model of the pentanal molecule{{{画像alt1}}}
識別情報
CAS登録番号 110-62-3 チェック
PubChem 8063
ChemSpider 7772 ×
UNII B975S3014W チェック
国連/北米番号 2058
DrugBank DB01919
ChEBI
特性
化学式 C5H10O
モル質量 86.13 g mol−1
外観 無色の液体
匂い 刺激臭
密度 0.8095 at 20 °C
融点

−60 °C, 213 K, -76 °F

沸点

102 - 103 °C, 272 K, -51 °F

への溶解度 14 g/L (20 °C)
蒸気圧 0.35 kPa (20 °C)[3]
粘度 0.6 mPa·s (20 °C)
危険性
安全データシート(外部リンク) Fisher Scientific
GHSピクトグラム 可燃性急性毒性(低毒性)
NFPA 704
3
3
 
引火点 12 °C (54 °F; 285 K) [3]
発火点 220 °C (428 °F; 493 K)
許容曝露限界 無し[3]
半数致死量 LD50 3200 mg/kg (oral, rat)
4860 mg/kg (dermal, rabbit)
半数致死濃度 LC50 14.3 ppm (rat, 4h)
関連する物質
関連するアルデヒド ブチルアルデヒド
ヘキサナール
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

バレルアルデヒド (valeraldehyde) はアルデヒドの一種の有機化合物で、構造的にペンタンの誘導体にあたる。IUPAC名ペンタナール (pentanal)。その他の名称として、吉草酸アルデヒド、アミルアルデヒド (amyl aldehyde)、ブチルホルマール (butyl formal)、バレラール (valeral) がある。

ほとんどの有機化合物と任意の割合で混ざり合う。可燃性で、引火点は 12 ℃、自己発火点は 222 ℃ である。貯蔵中に爆発性の過酸化物が生成するおそれがある。甘酸っぱい焦げた刺激臭を持ち、特定悪臭物質のひとつだが、果物や酒の香り成分でもあり、食品添加物香料)として利用されている。

有害性については、大量に摂取すると急性毒性を発揮するという情報がある一方で、反復投与毒性はないとする試験結果もある。蓄積性、発ガン性はないとみられる。 ラットLD50(経口)は 5.66 mL/kg、許容濃度は時間加重平均 50 ppmである[4]。食品薬品安全センターの実験による無毒性量 (NOAEL) は300 mg/kg-体重/日 と見積もられている。BOD/TOD比が0.6以上と生分解性が高いことから、環境への残留性は低いとされる。

異性体[編集]

イソバレルアルデヒド[編集]

イソバレルアルデヒド
構造式
IUPAC名3-メチルブタナール
分子式C5H10O
示性式CH3CH2CH(CH3)CHO
分子量86.13
CAS登録番号590-86-3
形状特徴的な臭気のある無色の液体
密度0.8 g/cm3, 液体
融点−51 °C
沸点91–93 °C
水への溶解度2
出典[5]

バレルアルデヒドの構造異性体として、イソバレルアルデヒド (isovaleraldehyde) があり、イソ吉草酸アルデヒド、3-メチルブタナール (3-methylbutanal)、3-メチルブチルアルデヒド (3-methylbutyraldehyde) の別名を持つ。

性質はノルマル体に類似し、特定悪臭物質のひとつだが、果物や酒の香り成分でもあり、食品添加物(香料)として利用されている点も共通する。

引火点は −5 から 0℃、自己発火点は 210〜240℃ である。化学合成用途で利用されている。ラットLD50(経口)は 5600 mg/kg[5]。食品薬品安全センターの実験による無毒性量 (NOAEL) は 100 mg/kg-体重/日 と見積もられている。

細胞呼吸において、酸化還元酵素の 3-メチルブタナール還元酵素 (EC1.1.1.265) による、イソアミルアルコールとの酸化還元反応がある。

2-メチルブタナール[編集]

2-メチルブタナール
示性式CH3CH2CH(CH3)CHO
CAS登録番号96-17-3
沸点94 °C
(R)-(−)-2-メチルブタナールの構造式

さらにメチル基の位置が異なる、不斉炭素を持つ2-メチルブタナール (2-methylbutanal)、別名 2-メチルブチルアルデヒド (2-methylbutyraldehyde) も存在する。

性質は光学異性体による差があり、臭気については (R)-(–) 体の閾値は、(S)-(+) 体の10倍である。香料や化学合成用途で利用されている。沸点 94 ℃、引火点 9 ℃。ラットLD50(経口)は 6400 mg/kg[6]

出典[編集]

  1. ^ Merck Index, 11th Edition, 9813.
  2. ^ n-Valeraldehyde at chemicalland21.com
  3. ^ a b c NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0652
  4. ^ Valeraldehyde MSDS、東京化成工業
  5. ^ a b イソ吉草酸アルデヒドMSDS、関東化学
  6. ^ 2-Methylbutyraldehyde、東京化成工業。

関連項目[編集]