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「狼と香辛料の登場人物」の版間の差分

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2019年5月28日 (火) 01:47時点における版

狼と香辛料 > 狼と香辛料の登場人物

狼と香辛料の登場人物(おおかみとこうしんりょうのとうじょうじんぶつ)では、支倉凍砂小説狼と香辛料』に登場する人物を解説する。人物名にある「声」は、アニメ等における声の出演。

主要人物

クラフト・ロレンス
- 福山潤
本作の主人公。ローエン商業組合に所属する25歳の行商人。12歳で親戚の行商人に弟子入りして18歳で一人立ちした。将来どこかの街に店を構えるという漠然とした夢を描くだけの孤独な行商人生であったが、パスロエ村でホロと出会い、ともに旅をすることとなった。ホロの言動に翻弄され、時には衝突しながら、ともに事件を乗り越え、次第に絆を深めていく。
商人としての能力は高く、「自分は一介の行商人でしかない」と自己評価しつつも困難な局面を何度も成功裏に切り抜け、大物の商人たちから一目置かれることになる。特に教育らしい教育は受けていないようだが非常に博識な人物であり、政治経済から宗教、歴史、地理、科学技術など多岐に渡る知識を持っている。また、様々なタイプの人間がこの世に居る事も知っており、男女の問題を除けば元々の人柄の良さも手伝って対人関係で失敗する事が非常に少ない。
商人として頭の切れる一方、自ら窮地を招きホロに助けられたり、会話で一泡吹かせようとするも軽くあしらわれ「可愛い仔」扱いされることもある。商売相手としてならば女性の扱いは決して不慣れな方ではなく挨拶程度にお世辞も使えるが、肝心な所で女心が分からず、自分に対する好意には非常に鈍感である。
バランス感覚に長じており、その判断基準は非常に常識的である反面、革新的な発想をすることはどちらかと言えば苦手であり、効率の悪い稼ぎ方に陥る場合もある。逆に論理的な推理能力は高く、僅かなヒントから隠された真実を突き止め、窮地を脱した経験も1度や2度ではない。確信を得た際の行動力には商人としても目を見張るものがあり、場合によっては敢えてあくどい手段を使ったり、必要とあらば力技を押し通したりもする。その思い切りの良さはディアナからも賞賛されている。
これらの長所はしばしば彼を、普通なら一介の行商人が関わることなどないような大事件へと巻き込む一因ともなっており、その身を窮地に陥らせる事がある。特にホロと旅をするようになってからはまさしく波乱万丈の人生となっている。そのため罠に嵌められる事も多く、経験を積んで抜け目なくなりつつも、不可避の危機に晒されることになる場合が少なくない。
ホロとは相思相愛で、第17巻では正式に結婚はしていないが事実上夫婦となっており、ニョッヒラで一緒に暮らしつつ、湯屋の開業準備をしている。その後正式に結婚し、娘のミューリをもうけた。十数年経った後も、湯屋「狼と香辛料亭」の主人を務めつつ変わらずホロと仲睦まじく暮らしており、客の間では「楽師の歌や踊り子の踊りより、主人夫婦のやり取りを見ていたほうが面白い」と評判になっている。歳を重ねてかつてほど無理はきかなくなってはいるが、ホロが嫌がるためでっぷりと太った親父にはなっておらず、若々しい外見を保っている。
ホロと自分の現状を脅かしかねない相手に対する警戒心が非常に強く、いちいちそう感じてしまう事はコンプレックスでもある。しかし反面、自分の下の者にはとても慈悲深く、かつて修行時代に自分が上の者にされて嫌だったことを下の者に行うことに抵抗を持ち、逆に自分が上の者にされて嬉しかったことを未だに覚えている程、どこまでも優しい人間である。
自己評価に反して守銭奴としての面は比較的薄く、自分一人で利益を独占するよりも、皆で分け合う方を好むといったお人好しな面があり、ホロにも時として呆れられることがある。また、「金で全てを解決する」と言う考え方を非常に嫌っており、物以外のもの、つまり心や誇りを金で買うような行為は「悪」と断じてさえいる。そのため常にフェアな取り引きを前提とし、ホロを含めた誰もが、彼を信用する原因になっている。
ホロ
声 - 小清水亜美
普段は、亜麻色の長い髪、赤い琥珀色の瞳、可憐な面差し、鋭い犬歯、そして先の白い尻尾と立った獣耳を持つ、10代半ばぐらいの小柄で細身の少女の姿をしている。ロレンス曰く、10人中10人が振り向くほどの別嬪である。しかしその正体は、数百年もの歳を重ねた、人を丸呑みにできるほど巨大な[オオカミ|狼]である。北のヨイツという土地の生まれだが、そこを出て各地を経巡った末に南のパスロエの村に豊作を司る神として数百年にわたり住んでいた。しかし農業技術の発展もあって村人に必要とされなくなり、孤独感と望郷の念に苛まれるようになっていたところに偶然やってきたロレンスの荷車にもぐり込み、村を出た。以後、ロレンスとともに旅をするようになった。
「わっち(私)」「ぬし(貴方)」「…ありんす」「…かや」「…してくりゃれ」などの廓詞を使う。数百年にわたって生きてきたためか、ときおり達観した物言いをする。相手の声色から嘘を見抜いたり、触れあった硬貨の音から純度の差を聞き分けたりすることができる優れた耳を持ち、鋭い洞察力や、麦を瞬く間に成長させる能力などを有する。また、狼以外の動物(鳥、狐、鹿、熊など)と会話し使役することも可能。言われた動物も、よくそれを覚えている様子。もっとも、ロレンスと出会うまで何百年もパスロエ村に「麦の神」として居着いていたため、少々世間からズレたところもある。
かつて「賢狼ホロ」と呼ばれ、故郷であるヨイツの地を離れてからは行く先々でその地の伝承に名を残してきたが、今は悪魔憑き人狼の類)と誤解され騒がれるのを嫌って、気を許した相手をほかにして耳や尻尾を見せることはない。なお、伝承によってはホロウという名で記録されていることもある。
故郷のヨイツでは指導者として頼られ、教会からは迫害を受けて追われ、村人からは神として扱われてきた彼女には、対等の立場で話のできる相手は本編までの長い間居なかった。そのため他者から畏敬されるということを好まず、ロレンスが自分に張り合ってくることを内心では喜んでいる。
狼の習性でものを丸呑みすることもあるが基本的には美食家。しかも、細い体のどこに入るのかと思わせるほどの大食いである。肉が大好きであり、ひとりで子豚の丸焼きを平らげてしまうほど。また甘い物にも目がなく林檎が大好物。その上に大酒飲みでもある。
必要となれば、生き血か数粒の麦粒を食べることで、人の姿から本来の狼の姿に戻ることができる。麦に「宿る」ことで自らの命をながらえ不死となり、その麦は腐ることなく温もりを保つという。自分が宿った麦粒を収めた皮袋をロレンスに作ってもらい、首から下げて大切にしている。
第17巻ではロレンスと事実上夫婦になっており、その後、正式に結婚し娘のミューリをもうけた。十数年経った後も、外見はほとんど変わっていない。

各巻登場人物

1巻

ヤレイ
パスロエ村の交渉人(商人に売り渡す麦価の交渉を担う)で、ロレンスとは本編開始以前からの顔馴染み。重税による高値の為に麦の価格交渉では苦労していたが、領主主導の技術革新によって生産力を高め、村の経済力に自信を深めつつある。
しかし、麦の豊穣を司る神「ホロ」を「豊作・凶作を弄んで村人を苦しめる気まぐれな存在」としか認識しておらず、教会から異教徒の疑念を持たれた事をきっかけに「ホロを恐れ崇める古い時代」と決別しようとして、ロレンスのもとにいるホロを教会に告発しようとした。
クロエ
声 - 名塚佳織
テレビアニメ版でヤレイの代わりに登場する女性。女性としてロレンスに好意を寄せているという設定が加えられた以外、基本設定はヤレイとほぼ変わらない。トレニー銀貨切り下げをきっかけとしてメディオ商会と手を組んでパスロエの麦を無関税にしようと企む。その過程でロレンスのそばに麦の神ホロがいる事を知り、ホロを教会に売ろうとしたが、失態を重ねて返り討ちにされてしまったあげく、ロレンスには決別されてしまう。
テレビアニメ第1期最終話にも少しだけ登場しており、丘の上から憂い顔で遠方を眺めていた。
ゼーレン
声 - 浪川大輔
旅の途中にロレンスとホロが立ち寄った修道院で知り会った、謎の商人。ロレンスに貨幣改鋳に関わる儲け話を持ちかける。
その正体はメディオ商会に雇われた新米行商人で、切り下げが予定されているトレニー銀貨を商人達に貯めこませる罠を張っていた。
ワイズ
声 - 花輪英司
パスロエ村にほど近い港町パッツィオで、ロレンスが懇意にしている両替商。ロレンスより少し年下の金髪の青年。師匠同士が知り合いであった縁で、ロレンスとは付き合いの長い友人の様な存在。ホロから「賢い雄」と評される程、あしらい上手の女好きであり、テレビアニメ版では初対面の彼女にいきなり抱きつく。
17巻で開店の前祝としてロレンスに招待され、エネクに追い立てられながら一番乗りを果たした。
リヒテン・マールハイト
声 - 大塚芳忠
港町パッツィオで3番目に大きいミローネ商会のパッツィオ支店店長。よく頭が回り、沈着冷静で丁寧な言葉遣いの人物。トレニー銀貨切り下げに絡んだロレンスの取引話を受け、商会の利益の為に様々な面で協力する。その取引自体は不調に終わるものの、ロレンスの商人としての素質や誠実さに感じ入り、予定外の分け前を提示する。「肥え太った魂に香辛料を効かせた体の商人の話」に絡めてロレンスが成功する事を期待した。
エーレンドット
名前のみの登場、伯爵。パスロエ村を含む地域の領主で、物語が始まる数年前に領地を与えられた。貴族の館でふんぞり返るよりも農民と一緒に土にまみれるほうが好きという変わり者で、農学にも深く通じる。彼により南方の農業がパスロエに導入され、パスロエの収穫率が向上した。さらにメディオ商会の後ろ盾となって関税撤廃を画策する。

2巻

ノーラ・アレント
声 - 中原麻衣
教会都市リュビンハイゲンの教会に雇われ、羊飼いとして働く金髪の少女。優しく穏やかな性格だが、芯の強いところもあわせ持っている。顔を隠していると近くで見ても男の子と見間違える程に痩せぎすであり、自分でも胸がない事を気にしている。ただ、その羊飼いとしての腕前と聡明さにはホロも一目置いている。いつもエネクという優秀な黒い牧羊犬を連れている。
仕立て屋になる夢を持ち、真摯に働いていたが、女性羊飼いという珍しさと優秀すぎる能力から、教会から異教の技を使っているのではないかと疑われ、苛烈な待遇を押し付けられていた。その事に、口には出さないものの小さからぬ不満を持っていた。その不満を嗅ぎ取ったロレンスから金の密輸に参加する事を勧められ、それを受ける。途中、リーベルトの裏切りによって危機に陥るものの、密輸は成功、報酬を受け取り、羊飼いを辞めて町を出た。
テレビアニメ第1期の終盤やゲーム『狼と香辛料 海を渡る風』では一時、ロレンス一行と行動を共にしている。
羊飼いを廃業した後は、仕立て職人になる夢を叶える為にエネクと共に疫病で人口の半分が死滅した町クスコフへと赴く。そこでジョゼッペ司教と知り合い、町を救う為に仮の助祭となった。
17巻では正式に司祭になった模様。ホロの出した招待状を受け取り、エーブと合流。道中他の女性招待客と出会い、昔話を温めつつニョッヒラを目指した。
金の密輸の一件でホロの真の姿を見ており、その正体を知っている数少ない人間のひとり。
エネク
声 - 不明
ノーラの元で牧羊犬をしていた黒い犬。一人称は我輩。最初の主人が流浪の傭兵に殺され、自身も重傷を負っていた時にノーラと出会う。ノーラのことを他人に優しすぎると心配する一方で、その能力・性格を主として認め忠誠を誓っている。ホロの様な超自然的存在ではないものの、ある程度の人語を解す。表情は豊かで機転が利き、且つ旅籠を襲撃した賊に奇襲をかけるなど戦闘能力も高い。ノーラが主役の外伝ではエネクの視点から物語が進行した事もある。
クスコフの町ではジョゼッペ司教から教会騎士の称号を賜り、町の人たちから可愛がられつつものんびり暮らしていた。
ヤコブ・タランティーノ
声 - 辻親八
リュビンハイゲンにおいて、ロレンスが所属するローエン商業組合の経営する商館の主。古参の商人で「ローエン商業組合にいる全ての者達は自身の子供だ」と語る。ロレンスを修行時代から知っており、「クラフト」と名前で呼ぶ。面倒見は良いが、必要な時には商館主としての厳然たる態度で接する厳格さも持ち合わせる。ロレンスが「北の大遠征」を見越して大量の武具を仕入れた末に価格暴落で破滅の危機に直面した際はロレンスの欲深さを叱咤しつつも何とか事態を改善できるよう祈っていた。
ロレンスが抱えてしまった借金の期限が到来した際もロレンスの安否を気にしていたが、期限が過ぎてもロレンスどころかレメリオ商会からの取り立ても来ないため、同じくロレンスの身を案じていた商人たちとロレンスを待ち続けることになる。ロレンスがレメリオ商会による裏切りを撃退し無事戻ってきた際には、しっかり拳骨でロレンスを叱咤しつつもその帰還を心から祝福してくれた。ロレンスがホロやノーラと共に成功した金の密輸に関しては痛快だったらしく大笑いで黙認、まだ確実にノーラから受け取っているわけではない金に関する手形などもきちんとロレンスから買い取ってくれている。このヤコブの配慮のおかげでレメリオ商会への借金取立てはローエン商業組合が行うことになり、ロレンスは恨みを買うことなくレメリオ商会と手を切ることが可能となった。
ハンス・レメリオ
声 - 郷田ほづみ
リュビンハイゲンにあるレメリオ商会の主人。ロレンスと同様に「北の大遠征」を見越して大量の武具を仕入れたものの、遠征中止で価格が暴落し破産の危機に陥る。商才としては決して無能ではなかったらしく大商会を取り仕切るだけの実力はあった模様。ロレンスとしては自分と同様に最悪のタイミングで武具の取引に手を出してしまっただけであり、現時点での破産さえ乗り切れば十分に商会を立て直すことができる人物と評価していた。
窮余の策として、ロレンスが振り出した約束手形を買い取りリュミオーネ金貨50枚を得ようとする。その後ロレンスの策に乗って金の密輸に関与するが、持ち金が少な過ぎた為、借金返済出来るギリギリの資金しか用意出来ず、思い余ってロレンス放逐とノーラ殺害を決意。然し、それがホロの逆鱗に触れ計画は失敗。本来の姿で戻ってきたホロとロレンスを前にして降伏、商会を続けていく事は許されたものの、ローエン商業組合にリュミオーネ金貨550枚に相当する借金を背負ってしまった。ただし一介の行商人ではなく巨額の取引を行う商会単位での金額としては決して支払えない金額ではなく、なおかつ10年での支払いで最初は小額からの返済で構わないという商会相手の借金としてはかなり緩い条件の借金であり、レメリオ商会がもう一度立ち直ることも十分可能な範囲での借金となった。これによりロレンスは恨みを買うことなくレメリオ商会と手を切ることができ、レメリオ商会もとりあえず救ったということで心情的にも負い目を負うことなく行商人を続けることが可能になった。
アニメ第1期最終シーンでは、金銭的に立ち直って活気に湧くレメリオ商会が描かれている。
マーティン・リーベルト
声 - 堀内賢雄
ロレンスらと、北東の町ラムトラに同行するレメリオ商会の若き幹部。レメリオよりロレンスとノーラを殺す様に命令されていたが、ホロの逆撃により計画は失敗した。
最終的にロレンスとノーラと敵対してしまったものの、本来の性格としてはそこまで非道ではなく若き幹部としてレメリオ商会の行く末を案じていた。裏切り前提とはいえロレンスたちを急かしてまでラムトラへ到着しようとしたことを謝罪するなど、それなりに歩み寄りも模索していた。
ラトペアロン
声 - 伊藤和晃[1]
リュビンハイゲンにほど近い町、ポロソンに商会を構える町商人。敬虔な正教徒だが、商売では不正を働いているらしい。不良在庫を掴まされ大損を被ったレメリオ商会の人々からは嫌味をこめて「ラトペアロンの狐」と呼ばれている。
ロレンス相手に机の傾きによる天秤の細工を仕掛け詐欺に嵌めようとするが、気づいたホロがわざと机に水をこぼしたことで机の傾きを見抜かれてしまう。詐欺ということで商会の信用も教会の信用も失うという絶体絶命の危機に陥りかけるが、口外しないという条件でロレンスがこれまで高価格で取引していた武器を低価格での大量購入を申し出たため「遠征の中止による武器の価格が大暴落中」という大事な情報をロレンスたちがまだ知らないことに気づく。自分が行っている商売上の不正を知ったロレンスに対し、本来なら暴落中で売りたくても売れない武器をそれなりの価格で売ってしまうことで逆に大損を負わせる形で利を得た。更にすでに不良在庫となっていた武具を大量に売りつけたことで大損を負わせていたレメリオ商会にロレンスと交わした債券を譲渡するという手段に出る。これにより約束手形が破産寸前のハンスの手に渡ったことでロレンスはレメリオ商会への借金を抱えてしまい、2巻におけるロレンスとホロの絶体絶命の危機を招く。

3巻

フェルミ・アマーティ
声 - 千葉紗子
祭が開かれる町クメルスンに住む、ローエン商業組合所属の魚の仲買人。南の方の国の良家出身の人物と噂される。3年ほど前からクメルスンで商売を始めて頭角を現し、若手の有力な商人となった。「遍歴の修道女」を名乗るホロに一目惚れし、借金で縛っている(とホロから説明された)ロレンスへ借金肩代わりを条件にホロ解放を要求、ホロ解放の暁には求婚すると宣言した。
契約成立後、祭りの雰囲気と開運効果があると宣伝された黄鉄鉱相場の急上昇で急速に資金をため、契約期間である祭り終了までに規定金額を集めることは確実視されていた。
しかし契約期限前夜にロレンスより「信用売りによる決闘」を申し込まれ、これを受ける。期間最終日も黄鉄鉱は順調に値上がりするが、ロレンスと自分から離れたホロの大量投げ売りによって価格は大暴落、借金肩代わりどころか利益をほとんど出すことができなかった。ホロによると、何やら「腹に据えかねる」ことを言ったらしく、手ひどく別れてやるつもりらしかった。
その後しばらくは失意に沈んでいたが、そういった男性を慰めることが好きな女性との良縁を得て、今は幸せに暮らしていることがディアナによって語られている。
マルク・コール
声 - 小山力也
クメルスンに露店を開く商人。ロレンスとは旧知の仲。かつては行商人をしていたが、クメルスンで妻のアデーレと出逢ったのをきっかけに、町商人となった。妻との間には2年前に生まれた子供がいる。弟子の小僧エウ・ラントを使う。異国の言葉にも通じている。
商店の規模は小さいものの背負っているものは大きく、ロレンスが黄鉄鉱買付の代役を頼んだところ、「店の看板に傷をつけるわけにはいかない」と断っている。その上で友人であるロレンスのために「値上がりしすぎて売れない黄鉄鉱を抱えている町商人」を調べ伝えた。
アデーレ・コール
声 - 柳沢真由美
マルクの妻。4年前にクメルスンでマルクとぶつかった拍子に恋におち、戯曲のような顛末を経て彼と結婚した。結婚した当初はか弱い外見だったそうだが、今ではマルクより体が大きい。
エウ・ラント
声 - 笹島かほる
マルクの露店で働いている少年。クメルスンより北にある寒村出身。まじめで機転が利き、マルクから教えられた商売や人生のイロハを忠実に守っている。ロレンスとアマーティの決闘でもロレンスの手足として細々とした雑用を引き受けている。ホロに一目惚れしていたが、アマーティとの勝負で劣勢に立っていたロレンスを殴られる事を覚悟で諫言し、背中を押すなど、勇敢で義侠心のある性格。
ギ・バトス
声 - 赤城進
ローエン商業組合に所属し、貴金属を主に扱う年配の行商人。鉱山地帯とクメルスンとの間を30年近く、重い荷物を自分で背負って往復しているため、体格はがっしりしており、堅そうな不精ひげを蓄えている。商売上、異端の錬金術師たちとも付き合っているため、敬遠する者が多い。最近まで無趣味であったが年代記に興味を持つようになり、ディアナとも懇意にしている。マルクの依頼でロレンスにディアナを紹介した。
ディアン・ルーベンス
声 - 渡辺明乃
ギ・バトスに紹介された年代記作家で、流れるような美しい黒髪を持つ謎めいた美人。通称ディアナ。異端として修道院を追われたため、教会の手が及ばないクメルスンに来た。錬金術師たちが集まる一角に住み、各地に散らばる異教の物語を収集しつつ錬金術師たちのまとめ役ともなっており、ホロの要望に応じて彼らが持つトレニー銀貨400枚分の黄鉄鉱を集めた。その正体はホロと同じように人ではなく、何百年も生きている巨大な白い鳥である。かつて人間の僧侶と夫婦同然の暮らしをしていたが、老いないことを訝しがられ、そのために修道院を追われることとなった。
17巻ではホロの招待状を受け、ホロたちの「人生の先輩」と称してエーブとノーラに合流。自分の正体は明かしていなかったが、ノーラに人でないことを見破られた。正体を知る者はロレンス、ホロ、ノーラ(ノーラは「鳥」とまでは気づいていない模様)。
DS版ゲーム『海を渡る風』にも登場し、重要な役割を果たす。

4巻

リーンドット
エンベルクの町で1番大きな粉屋、リーンドット商会の主を務める恰幅のいい男。
エンベルクの街が、テレオの村のフランク司祭と結んだ「テレオ村の麦は提示された量を提示された金額で全て買い取らなくてはいけない」というような一方的な契約に苦しんでおり、可能なら破棄したいと考えていた。その折、フランツ司祭が死去したことからケパスの酒(コミックスでは「リデリウスの業火」に変更)による死亡事件をでっちあげてバン司教とともに契約破棄を狙うが、ホロによる奇跡を見せつけられ計画は頓挫した。しかしその後、契約破棄とロレンスによるクッキー作成を提案され、それを受ける。クッキーは物珍しさもあって飛ぶように売れ、テレオ村ともある程度良好な関係に落ち着いた。
ギヨーム・エヴァン
エンベルクにほど近いテレオの村外れでロレンス達が出会った、快活な性格の黒髪の少年。エルサとは恋人関係にある。
村では水車小屋で粉挽きをしており、村人からは麦をくすねているのではないかと疑われ嫌われていた。毒麦の騒ぎではロレンスの次に混入犯人に疑われ捕縛されかける。それを察知したロレンスによって村外に逃がされるが、村のためにバン司教(及びリーンドット商会)と向かい合う決意をしたエルサとともに村に戻る。騒動の解決後、テレオ村の麦売買の交渉人となり、商業の勉強を始めた。
毒麦騒ぎの際に後述のエルサとともにホロの真の姿を見ており、その正体を知っている数少ない人間のひとり。
フランツ・シュティングハイム
テレオの教会の司祭だったが、ロレンス達が尋ねた時には既に故人。異教の神々の話を集める修道院長ルイズ・ラーナ・シュティングヒルトが住むディーエンドラン修道院への道を知っているとされていた。しかし実はフランツ司祭がシュティングヒルト修道院長であり、テレオ村の教会がディーエンドラン修道院そのものだった。
毎日の祈りを欠かさない、信仰心篤い敬虔な正教徒だったが、信仰心ゆえに異教の物語を収集するようになる。その中には教会が禁書としたものもあり、一度ならず異端の嫌疑をかけられるが、その全てを晴らしている。周辺の貴族、司教などとも縁が深く(弱みを握っていたような印象)、またエンベルクとの麦の取引の特権や関税権などで破格の条件を認めさせるなど、謎の多い人物。
異教の物語の全てを平等に収集しようとする一方で、月を狩る熊についての話のみが系統だった複数の話で構成されることに神の存在を証左する特別な意味を見出していたと思われる書き込みを残している。
エルサ・シュティングハイム
テレオの教会に住むまじめで無愛想な少女で、司祭代理。フランツ司祭亡き後の教会を1人で守っていた。フランツ司祭の娘だが血はつながっていない。蜂蜜色の瞳を持ち、人前では常に焦げ茶色の髪を後ろに引っ張って束ねている。エヴァンに思慕の情を抱いていたものの、教会を預かる身として言い出せずにいた。
義父であるフランツ司祭をこの上なく尊敬しており、異教の神の物語を収集していることについても表立って非難しなかった。その時、北の森の狼神ホロウについても聞かされていた。その後、ディーエンドラン修道院への道を尋ねてきたロレンスらを門前払いにするが、策略をもって教会に入られ、ホロの正体を知るに至り、協力することを決める。毒麦騒ぎの際には異端として村人に吊るし上げられそうになるが、ロレンスの機転によって村を脱出する。しかし「村の教会を預かる者」として村人を見捨てるわけにはいかないと村に戻ることを決意、ホロの協力もあってエンベルクの陰謀をはねのけた。
14巻ではル・ロワと共に村の教会で聖務を務める人材を探すための(エヴァンと結婚するために教会を委ねられる人物を探すためでもあった)旅の途中で、立ち寄ったレノスのフィロンの店でロレンス達と再会する。宿を確保できなかった為、ロレンス達の泊まる部屋に厄介になる。聖職者としての威厳を漂わせているが、面倒見がよくコルに食事の時の作法を教えたり、聖典の講義等を行う。ロレンスがホロを愛していることを(自身がエヴァンに告白できないことと重ね合わせて)気付いており、「自分の気持ちにもっと正直になるべきだ」と泣きながら説教した。
15巻ではロレンスと別れコルを連れてル・ロワと共に旅立つ。17巻ではテレオの村に戻っており、ロレンスの紹介で訪れたフランに異教の神の物語を資料に貸し出していた所にホロの招待状が届き、エーブたちと合流してニョッヒラを目指した。
毒麦騒ぎの際にホロの真の姿を見ており、その正体を知っている数少ない人間のひとり。
セム
テレオ村の村長。杖を突く小柄な老人。温厚かつ冷静さを失わない指導者。フランツ司祭によって生活が楽になる前の村を知っており、生きることすら苦痛であった時代に戻ることを恐れている。「ケパスの酒」による騒動でも動揺する村民をなだめ対策を講じ、容疑者扱いされていたロレンスにも公平に接している。この騒動がエンベルクによって仕組まれたものであることに薄々気づいていたが、打つ手がなく煩悶としていた。
イーマ・ラネル
テレオの居酒屋の女将。村人たちに慕われる赤毛で恰幅のいい女傑。若い頃は海岸から山ふたつ向こうの村に住んでいたが、海賊の襲撃によって難民となり、村から逃げる時に何故か持っていたビールの醸造器を使ってビールの行商を行っていた。その後鹿狩りの名手と呼ばれる伯爵と出会い、そのビール造りの腕を見込まれて伯爵お墨付きとしてビールを売ってよいと言われた。面倒見のいい人物で、訪れる者がほとんどいない村の教会へ食べ物などを寄付していた。
エンベルクによる毒麦の陰謀でもエルサの味方という立場を貫いており、エルサを吊るし上げようとする気運が高まるのを感じ取ってロレンスにエルサを連れて村を離れるよう依頼した。
ホロの真の姿は見ていないが、毒麦騒ぎの際に耳と尻尾は見ており、ホロが人でないことを知っている。
バン
エンベルクの町にある聖リオ教会の司教。教区拡大のために異教を信じるテレオを狙い、リーンドットとともにテレオ村に乗り込むが、ホロが仕組んだ奇跡によってテレオ村の教会を正統なものであると認めざるを得なくなった。コミックスではロレンスに提示された利益供与の見返りにクッキーにお墨付きを与え、反発するであろうパン屋の職業組合を抑えつつテレオ村以外でクッキーを作ることを禁止する約束をした。

5巻

アロルド・エクルンド
声 - 廣田行生
港町レノスで宿屋を営む寡黙な老人。青い瞳と顔の半分以上を覆う白い髭の持ち主。かつてはローエン商業組合に属する旅の毛皮商人で、革紐工場を営む家に入り婿して革紐職人親方を継いだ。その後、革紐工場を宿屋兼荷物置き場に改装して、そこの主人となる。客の詮索はせず、興味を持った人物以外は名前も尋ねない。日がな1日、温めたぶどう酒を手に、南へ巡礼の旅に出ることを望んでいる。
北の大遠征中止と、それに伴う町の経済不振、くわえてエーブに諭されたことから町を出ることを決意、その際ロレンスに宿の所有権を譲った。
エーブとともにケルーベに到着するが、イッカク騒動でキーマン配下に捕らえられる。その後、騒動が落着した後エーブのもとへ返されるが、以降の動向は不明。エーブとともに南へ渡り、巡礼の旅を開始したと思われる。
エーブ・ボラン(フルール・ボラン)
声 - 朴璐美
本名はフルール・フォン・イーターゼンテル・(マリエル)・ボラン。「マリエル」は隠し名で、ごく親しい者しか知らない。ウィンフィール王国の没落した貴族であるボラン家の第11代当主。失敗や裏切りなど波乱に満ちた人生を歩む。金のためなら命さえ惜しまない守銭奴。ディアナからは、ホロよりも狼らしいと評されている。女性としては背が高く、体つきは細めだが弱々しいという感じはなく、胸が小さいことを気にしているノーラにコンプレックスをもたせるほどのスタイルをもつ。レノスの司教と組んで塩の密輸を行っていたが、自分より大きな商会に乗り換えられたことからレノスでの商売に見切りをつけ、教会を出し抜く形で儲けを引き出そうとした。ロレンスたちとはレノスの宿屋で出会い、毛皮への投資話をもちかける。8巻、9巻、11巻にも登場する。
頭に頭巾のように布をきつく巻き、顔も目元以外を布で覆っており、女だということを隠して男に扮している。普段はしゃがれた声で男のような言葉遣いで話しているが、場合によっては柔らかい声音で、貴族の女性らしい話し方をすることもできる。一人称は通常「オレ」だが、わざと女性的な話し方をする時や、窮地に陥って仮面がはずれかけたときなど、ごくまれに商人になる前に使用していた「私」に戻ることがある。基本的に自分以外の誰も信用していないが、ロレンスのことは初対面の時から気に入ったらしく、何かにつけ頼りにし、心を許しているふしがある。ケルーベでのイッカク騒動で命を助けられたロレンスに「マリエル」を含めた本当のフルネームを教え、同時に「あること」をした(その「あること」はホロを激怒させた)。
商人になって間もないころに、服の取引で騙され、そのとき組んでいたパートナーにも裏切られたという過去を持ち、その事件がきっかけで商人の覚悟を得た。詳細は11巻の「フルール・フォン・イーターゼンテル・マリエル・ボラン」項を参照。
17巻の時点では南方の帝国に渡り、商会を興して成功している模様。ホロの出した招待状を受け取り、最も南に居住し、最も財力があることから他の女性招待客を回収していくこととなり、悪態や昔話を交えながらニョッヒラを目指した。
DS版ゲーム『海を渡る風』でもヒロインの1人として登場し、活躍する。
ロレンスおよびホロと長い期間にわたり何度も接してきたにも関わらず、ホロの真の姿はおろか耳や尻尾すら一度も見る機会がなかった。そのため、17巻で招待に応じてニョッヒラに来るまでホロの正体は知らなかったとみられる。
続編「狼と羊皮紙」ではラウズボーンの騒動を巡る重要人物として登場。現在では女性の姿を隠しておらず、往時と変わらぬ美貌を白日下に晒している。旧知の仲である「薄明の枢機卿」コルを懐柔し、貿易商人組合側に引き込もうとするが、ミューリに邪魔され失敗。その後もコルを翻弄するが、ウィンフィール王国がラウズボーン徴税人組合に対し討伐を宣言した際にふと漏らした「仕事」という言葉により今回の最終目的である「大司教の救助=教会に恩を売る」という計画が露見。とっさにコルを殺害しようとするも、狼の姿となったミューリによって阻まれて為す術もなく協力する形となってしまう。さらにコルの機転により討伐を穏便に終結させる案に加担させられ、大商いの機会を得たにもかかわらず完全にやり込められたことから怒りで顔を真赤にしつつも全面的に降参する。
ヘレーナ[2]
声 - 中山さら
レノスの酒場「獣と魚の尻尾亭」の看板娘、働き者で美貌の少女。賢くて口が上手いため店の繁盛に一役買う。また、その頭の良さから「他の酒場の尻軽女」よりも町の裏事情に深く通じている。酒場の客を籠絡させることに自信を持っていて、レノスの商売の情報をロレンスに伝えると同時に落そうとしたが、それが通じなかったため悔しがっていた。14巻でロレンスと再会しホロとも対面、気が合うのか2人でロレンスをからかう。
リゴロ・デドリ
声 - 内田夕夜
レノスに住む年代記作家の青年。レノスで大きな権限を持つ五十人会議の書記でもある。書記の仕事がない時は、教会の代筆で糧を得ている。教会への石材の取引(実際は塩の密輸)をしていたエーブとは教会を通じて知己となった。理解者である修道女メルタ(声 - 豊崎愛生)が、身の回りの世話をしている。
書記という職にあるためか、他者の視線、表情変化から心理状況を読み取る術に長けている。その技量はエーブをして「あの男と組めば、たいていの商人は丸裸も同然だ」と太鼓判を押すほど。しかし彼の趣味はガラスで作った温室に植えた植物たちの世話であり、穏健な生涯を送ることを望んでいた。
ロレンスとはエーブを通じて知り合い、北の地の物語に関する書物を貸した。
ルッズ・エリンギン
声 - 牛山茂
レノスにある人身売買を行っているデリング商会をまとめる4人のうちの1人。蛇のようにまとわりつく声と、好感を持てない迫力のある威厳の持ち主。エーブの儲け話のためにホロを質入れに来たロレンス達と面会する。14巻ではロレンスを知人として扱い、彼とル・ロワの持ってきた儲け話を受ける。町役人からはエリンギン卿と呼ばれ阿られている。ロレンスのことを気に入って高く評価しているらしく、ロレンスとホロの関係が強いものであることを感じた後は、ロレンスとホロが離れ離れにならずとも取引が円満に行える方法を模索していた。扱っている取引などの関係で悪名が高いことも自覚しており、ロレンスとホロが一緒に旅を続けられる方法を見つけた後も信用してもらえない可能性を考慮し言い出せずにいた。このためロレンスが自分自身でその方法に気付いた際には安堵している。その後も付き合いは継続しているらしく、ロレンスがニョッヒラに店を開くことを決めた際には資金の面倒を見ることを申し出ている。
コミックス版では原作5巻がオミットされていることもあり、未登場。原作14巻でル・ロワに融資する展開は、キーマンが行っている。

6巻

イブン・ラグーサ
港町レノスが面するローム川を行き来する船の船頭。大きい体と声の持ち主で、顔は丸く酒やけなのか赤い。西方の沿岸地方の北にある村の出身。「ローム川の主」と自称しており、実際に色々と詳しい。偶然から出会ったコルを気に入っており、別れる時に餞別として新品の銅貨を贈った。
トート・コル
ローム川の関税徴収所でロレンスたちと出会った、少女のようにも見える容貌の華奢で粗末な身なりの少年。北の山奥にある異教徒の村、ピヌ出身で、改宗を迫る教会から村を守るために教会の権力機構に食い込もうと、アケントという町で教会法学を学ぶ学生だったが、金がなくなり勉強を続けることができなくなって放浪していた。年相応に世間知らずだが、知恵が回り覚えも良く素直な性格。この巻からロレンス達の旅に同道する。
異教徒の村に育ったためか、正教徒の教えの外にあることにも違和感を感じない。ホロが正体を見せた時にも臆するどころか触らせてほしいとねだっていた。
ロレンスにとっては可愛い弟分であり、世間の常識に始まり商売のメカニズムまで、コルが知らない事を何でも教える事を楽しみにしている。ホロにとっても自らが賢狼たる事を律するための存在であり、自らを慕ってくれる事から弟のように可愛がり、一人の立派な「雄」への成長を期待する家族となっている。15巻ではロレンス達と別れエルサらと共に旅立つ。その後2年ほど各地の教会や修道院を巡りながら勉強し、ロレンスたちのもとへ戻ってきた。
その容貌からか周囲から同情を買いやすく、物乞いに扮して情報収集していた時には同業者から「かわいいって得だなぁ」と言われるほど銅貨や食べ物が集まり、ロレンスも「物乞いだけで自活できるのではないか」と内心呆れていた。なお、コミックスでは小説の挿絵よりもさらに背が低く童顔で長髪に描かれている。
17巻ではロレンスが開こうとしている温泉宿の手伝いをしながら聖職者を目指している。背は高くなったものの痩せたままのうえ髪を伸ばしているので女性と見間違えられることもある。根が真面目の上熱心に神の教えを勉強しているとあって、ニョッヒラへ湯治に来る高位聖職者や知識人などの覚えもめでたい。また、その性格や容貌は女性たちの興味を惹かないわけがなく、実際に誘惑してくる者が引きも切らないが、聖職者を目指すという目標から目をそらすことなく、気付かないか丁重に断っている。そしてそのストイックさが女性の心をくすぐり、新たな誘惑者を生み出すという「世の男性がうらやむ悪循環」にとらわれている。
続編『狼と羊皮紙』では主人公となり、ロレンスとホロの娘ミューリと共に旅に出る。

7巻

クラス
中編「少年と少女と白い花」の主人公。ホロがロレンスと旅をする以前[3]に出会った、10歳くらいの少年で、年相応に世間知らず。とある領主の屋敷で小間使いとして働いていたが、領主は旅先で死亡し、代わりにやってきたその弟に屋敷を追い出された。杖代わりの太い枝と貧相な旅装束を携え、一緒に屋敷を出たアリエスと共に、海を目指して旅する。
アリエス・ベランジェ
クラスと共に旅をする少女。自分の歳を知らないが、クラスは自分よりほんの少し背が高いということで2つ年上だとしている。クラスの事を女の子だと思っていて、寝るときはいつも抱きついて寝る。屋敷では物心ついた頃から石の壁に囲まれた建物を出たことがなく、クラス以上に物をしらない。ただ、熱心な正教徒で礼儀作法は心得ており、文字の読み書きもできる。実は亡くなった領主が隠していた実の娘である。
テレビアニメ第2期0話ではホロの回想に砂浜を歩く2人らしき人物が登場している。

8巻 9巻

テッド・レイノルズ
ローム川河口の町ケルーベ北岸にあるジーン商会の主人。ジーン商会は、ローム川流域の製品について取引を任されていると見られるが、軒先ではラバがあくびをし、ニワトリが駆け回る貧相な店構えをしている。教会からの依頼で、神と崇められる狼の骨を探している。
箱単位で行われる銅貨の取引の仲介をしており、その際に箱に詰める銅貨の枚数を操作することによって不正に利益を得ていた。その財をもって捕獲されたイッカクを教会から買い取って貴族に売りさばこうとしたが、カラクリを見抜いたロレンス(枚数操作についてはコル)に不正操作暴露を示唆され頓挫、キーマンとエーブからの無理難題を受け入れるかわりに不正を黙認するということで落ち着いた。
ルド・キーマン
ケルーベにあるローエン商業組合商館の副館長。商業の盛んな三角州にある分館の仕切りを任されている。ロレンスより2歳程年下の細い体と金髪の持ち主で、ケルーベ有数の貿易商の息子であり、自身も貿易商人。1度も行商をした事がないながら「頭の中には万枚に及ぶ地図がある」と言われるほど地理に明るく、「ケルーベの眼」の異名をとる情報通。組合に所属する商人からの信頼も厚く、「帳簿を見るだけで商売の流れを完全に把握する」ほど商才に秀でている。12巻にも登場する。
商業組合副館長として、貿易商としてふさわしい冷静さを持つが、イッカク取引という目も眩むような巨額の商売の前では冷静さも失ってしまい、エーブを操るためにアロルドを拘束したり、レイノルズと手を組んだ(とキーマンは判断した)エーブを殺そうとしたり、それを止めようとしたロレンスを「行商人風情」と罵ったりしている。騒動終了後は、利益を得る手助けをしてもらった礼として(過程で迷惑をかけた詫びも兼ねて)豪華すぎる昼食を提供した。
17巻ではロレンスがニョッヒラに温泉宿を出す際に借金を申し込まれ、出資する。その後所有する貿易船が難破して大損害をこうむるが、ロレンスへの出資分は確保できた。
コミックス版では、イッカクの騒動の後、「地図を見ているだけでは分からないこともある」ことを痛感し、あちこちに足を延ばすことを行うようになる。また、エリンギンにかわりル・ロワへ禁書の代金を融資する役どころとして登場する。
ジーダ
ケルーベにあるローエン商業組合商館の館長。町の南側にある本館の管理をしている。
セイン・ナトレ
ケルーベ南側にある教会の助司祭。

10巻

アム・ドイッチマン
テイラー商会に属する商人。細目で口髭を蓄えた壮年の男。羊毛の買い付けを担当しており、ロレンス達にピアスキーを紹介する。
ラグ・ピアスキー
ルウィック同盟に属するフィアス商会の商人。金髪の青年。ブロンデル大修道院にロレンス達を案内する。商売の傍ら入植の世話もしており、料理が得意。
ハスキンズ
ブロンデル大修道院に属する寡黙な羊飼い。白い髪と髭を蓄え、野の賢人といった雰囲気を漂わせている。長年にわたってこの修道院に仕えており、年老いてはいるが、迫力のあるがっしりとした体格をしている。
その正体は羊であり、修道院に伝説として伝わっていた「黄金の羊」本人。羊の仲間の指導者の立場にある。月を狩る熊のために故郷を追われてから、人間にまぎれて生活する仲間のために「故郷」を造ることを生涯の目標として生き続け、その地を守るために陰から教会勢力に協力してきた。ホロを「若き狼」と呼び、ユーグからも「翁」と呼ばれるなど、ホロよりもさらに長く生きているらしい。
修道院での騒動が終わった後、ロレンスに北の地の動向を伝え、ユーグを紹介した。

11巻

この巻に掲載されている外伝「黒狼の揺り籠」はアニメ化されていないが、第2期BD3巻及び4巻にてオーディオドラマ化されている。この項目で示されている声優はオーディオドラマのもの。

ハイ・バートン
ジサーズ村の住人。ドレという村人と土地のことで争っていた。
クローリィ
ジダーズ村の住人。金髪の少年。村の土地の基準点を決める儀式に参加する。
ハンス
声 - 小松史法
エーブが駆け出しの頃取引をしていたジョンズ商会の商人。貧しい農家の四男坊の出。金儲けのためなら犯罪行為(文書偽造)にも良心が痛まない守銭奴。フルールとポーストとの間に交わした青い服と銀細工の仕入れの契約書を黒い服と琥珀細工と書き換えて不良在庫を押し付け、さらにポーストがフルールに振り出した債権を買い取ってポーストを手駒として使おうとし、フルールをも人身売買同然に手元に置こうとした。
フルール・フォン・イーターゼンテル・マリエル・ボラン
声 - 朴璐美
駆け出し商人。元没落貴族であり、未だに貴族階級の慣習が抜けない。その後も商人に家柄ごと買われて嫁となっていたため、初めての独り立ちに意欲を燃やしている。
ジョンズ商会の紹介で、かつて舞踏会で会ったことのあるミルトンと商人として知り合う。彼とともに服の取引に手を出すも、ハンスに騙され失敗。とっさに服を持ち逃げしたミルトンを商人として追うも、彼は事故で既に半死半生の体であった。彼にその手でとどめを刺すことで貴族としての自分に決別し、その時から「ミルトン」という名前の綴りに線や点を足すことで「エーブ」という商人としての名を名乗った。
オーラー
声 - 宗矢樹頼
フルールの元夫の下で働いていた老人で貴族の出身。主が死んだ後も帳簿係としてフルールに仕え、彼女に商人のイロハを教える。
ベルトラ
声 - 溝邉祐子
フルールの元で働いている1つ年下の女中。フルールの夫が死んだ後も彼女に仕えている。家の家事一切は彼女が取り仕切っており、フルールとは仲がいい。
ミルトン・ポースト
声 - 谷山紀章
主に服を扱っている商人。金髪の若者。騎士として勇名を轟かせ、未亡人と結婚し領主になったポースト家の出身で、2番目の側室の三男坊。駆け出しのフルールから、貴族向け服飾を仕入れるための融資を受ける。しかし契約相手の契約書改竄によって不良在庫をつかまされ破産の危機に陥り、思い余って仕入れた服飾を持ち逃げしようとする。逃亡先で荷馬車が事故にあい重傷となり、判断を誤った詫びとしてフルールに自分を殺させ、商人として生きる事の覚悟を教えた。

12巻

ハフナー・ユーグ
ケルーベにある美術品(主に絵画)を扱うユーグ商会の主人。豚を思わせる太った中年男性。ハスキンズの紹介で訪れたロレンス達にフランを紹介する。その正体はハスキンズと同じく齢を重ねた羊。
故郷があったことを記録に残すため、かつては自ら絵筆を取ってその一帯を巡っており、後に絵画商となった。顧客は人間だけではなくホロのような「知性ある獣」もいる模様。
14巻では重傷を負ったフランに代わって筆をとり、北の地図を描いてレノスのロレンス達に送った。
フラン・ヴォネリ
黒い髪と瞳、南方の砂漠の民であることを示す褐色の肌をした少女。ハフナーと取引している絵描き兼銀細工職人で、腕は確かだが偏屈で頑固な性格だという評判の持ち主。旅慣れており、肝も据わっていて荒事に慣れている。またキーマンからは、客筋が悪く過去のわからない怪しげな人物ということで、関わるべきでない相手とみなされていた。北の地図を描く代金として、天使の伝説と魔女の噂が伝わるタウシッグへの同行をロレンス達に依頼する。
実は、かつて異端扱いされ壊滅させられたキルヤヴァイネン傭兵団の従軍司祭を務めていた人物で、傭兵団唯一の生き残り。傭兵たちの世界では「赤鷲傭兵団の黒司祭」という通称で呼ばれていた。悲惨な最期を遂げた、想い人でもあった傭兵団の隊長の後を追うように、死をも恐れぬ情熱で天国の扉を司るという天使伝説の真実を知るためにタウシッグに赴く。
14巻にも登場しロレンスたちにフィロンを紹介する。17巻では引き続き各地を放浪していたようで、最後にロレンスと連絡を取った際にはエルサの修道院にある異教の神の物語を資料として紹介されていた。ちょうどそこに駐在しているときにホロの招待状を受け取り、エルサと共にエーブと合流してニョッヒラを目指す。
タウシッグでの一件の際、ホロが意図して見せたわけではないが、その真の姿を見ている。それがホロであったことにも、明言はしていないが気づいている模様。
ウルー・ミュラー
タウシッグに住む体格のいい壮年の男。年老いた村長に代って村を取り仕切り外部との交渉を請け負っている。
ヴィノ
タウシッグに住む若い男。妻と子供がおり、村を訪れたロレンス達を自宅でもてなす。話し上手でロレンス達に村に伝わる天使の伝説と魔女の噂を話す。
カテリーナ・ルッチ
かつてレノスに住んでいた修道女。天使の伝説の真偽を確かめるため、伝説の残るタウシッグを訪れ、湖の近くにある森に住み付く。魔女の噂の元となった人物。
信心深い、ただの女性であったが、それがために他の司教区の司教や貴族などからの質問や相談にも真摯に答えてしまい、本人も望まない名望を得てしまう。自身の列聖への手続き終了が近づくに至り、世俗とのかかわりを捨てて犬とともに隠遁生活に入った。
天使伝説のもととなった滝のそばにあった炭焼き小屋に住み着く。ロレンス達が小屋を訪れた時には椅子に座った状態で死亡し遺体はミイラ化していた。
カカナ・リンギット
タウシッグ周辺の地を治める領主。痩せた体をした神経質そうな壮年の男。自らの地位を守るため、カテリーナの存在や天使の伝説を利用している。

13巻

ジョゼッペ・オーゼンシュタイン
敬虔な信仰心を持つ、髭面の司教。疫病により住民の半数が死んだクスコフに、新しい教会の司教として向かうために旅をしていた所、夜に旅籠が3人の賊に襲われて危うい所をノーラとエネクに助けられた。この時エネクに教会騎士の称号を授けた。負傷したため、目的地が同じノーラとともにクスコフまで向かう。負傷により寝たきり状態が続くが、その合間にも聖務とレズール対策を怠らなかった。
ノーラが服の仕立職人になることを夢見てクスコフに来たことを知ったうえで、助祭としてレズールとの交渉役に立ってくれるよう依頼する。しかしそれはノーラの夢を絶つことにもなり、「より多くの人を生かすために1人を殺す」苦渋の決断であった。
トリー・ロン=クスコフ・カレカ
クスコフの参事会代表を務める若い青年。ジョゼッペ達を迎える。
アマン・グウィングドット
ローエン商業組合クスコフ商館の館長。リュビンハイゲンからヤコブ館長の紹介状を持って商館をおとずれ、服の仕立て職人になりたいというノーラに、仕立て職人の組合長アルスへの紹介状を書いた。
アルス・ヴィッド
背が高くてやせた赤毛の女性。クスコフの仕立て職人組合長だが、それは親方でもある先代組合長が疫病で死亡したためであり、本人はまだまだ親方から学びたいことがあったと語っている。
建物を訪れたノーラとエネクに最初はきつい表情と態度であたるが、それは疫病に手も足も出なかった自分の不甲斐なさから出た八つ当たりであり、その態度をヨアンに叱られたこともあり、のちに謝罪する。助祭としてレズールに赴くノーラのために司祭服を仕立てた。ヨアンとの結婚を考えている。
ヨアン・エルドリッヒ
クスコフで高利貸しをしている若い男性。先祖が高利貸しであった故にその職業を受け継いでおり、それが故に皆から嫌われてしまうという苦労人。職業柄町の人々からは良く思われていない存在だが「現在の貨幣と未来の貨幣を交換する両替商」だと自称してうそぶいている。鋭い観察眼と巧みな話術を持つ。アルスとは知人。

14巻

フィロン・ジームグルント
ロレンスと同じくらいの身長の金髪の中年男性で、左足をやや引きずるように歩く。レノスで傭兵団の輜重部隊を務める商人の手配と配置を行っているジームグルント雑貨商店の店主。一見傭兵上がりのような雰囲気だが、本人は戦いに赴いた経験はない。かつて世界中で戦い、レノスの建設に尽力した戦士を先祖に持つジームグルント家13代目当主。フランを嬢様と呼び敬意を払っている。
ル・ロワ
書籍の行商を行っている商人。大げさな身ぶり手ぶりをする黒髪の小太りな男。強欲ではあるが、むしろ欲望に正直な性格であるため逆に信用されると言う奇妙な人物。エルサの父親であるフランツと知り合いでエルサの旅に同行する。キッシェンの商会にあるとされる画期的な採掘技術が記された禁書を手に入れるため、デリング商会のエリンギンと面識のあるロレンスに彼との仲介を依頼する。

15巻

パロ、キリス、ユエ、インティ、シャリエミン
全てホロの狼仲間。月を刈る熊が来襲した時に逃亡、以降の消息は不明。
ミューリ
ホロの狼仲間の1頭。昔ルワードの先祖に出会いミューリ傭兵団の創設に協力、この事績は傭兵団では伝説として語り継がれており、傭兵団の旗にも守護者として天に向かって咆哮する姿で描かれている。自らの爪にホロ宛ての伝言を当時の古い文字で記し、傭兵団に託した。その後の消息は不明。
ルワード・ミューリ
ミューリ傭兵団の団長を務める青年。北で戦いがあるという話を聞き、戦いに加わるため[4]に団員と共にレスコの宿屋に逗留していた。また、デバウ商会の意を受けて大量のトレニー銀貨をレスコに運び込む役目も担っていた。
当初はロレンス達を警戒していたが、ホロが伝説に出てくる狼だと知り、先祖から受け継いだ爪をホロに見せる。昔話に出てきたホロに畏敬の念を抱いており、伝言を伝えた後は町に滞在するロレンス達を歓待する。
年齢はロレンスより5歳程度若い。しかし傭兵団を束ねる者として十分な威厳と知性も有している。酒よりも騎士物語(英雄物語)を好む。デバウ商会の思惑と自分たちの役割を知り、報酬の額と傭兵の誇りの間で懊悩していた。
新規貨幣発行に端を発する騒動では、ヒルデの策にかかってスヴェルネルに向かうしか道はなくなるが、ルワード自身はその策の見事さに感心していた。また、力のない正義に加勢できることを喜んでもいた。しかし討伐隊であるフーゴ傭兵団の裏切りによって重傷を負い昏倒、市壁を巡る攻防戦が終決した後に目をさまし、重要な場面で寝ていただけの自分を責めて泣き叫んだ。それを知ったロレンスとヒルデの計らいで、壊れていた溶鉱炉の修復の指揮を任された。
数年後である17巻でも相変わらず懇意の関係を継続しており、ロレンスの店の看板を輸送したり、ホロとロレンスの招待した面々の案内と護衛を引き受けるなど傭兵以外としても密接な関係を持っている。
続編「狼と羊皮紙」四巻にも名前が登場。ミューリ(ホロとロレンスの娘の方)お気に入りの「狼と香辛料亭」の常連客であるとともに、「英雄譚にふさわしい」武勲を誇る傭兵として名を馳せていることが語られている。
マックス・モイジ
ミューリ傭兵団に属する銀髪の大男。ルワードの参謀を務めておりロレンスからの相談にも応じている他、ルワードとロレンス達の話し合いにも度々参加している。

16巻

ヒルデ・シュナウ
銀髪の混じった長い髪と口ひげをたくわえているどこか品のある年長の男。その正体は普通の大きさの白いウサギ。昔デバウ商会の現主ヒルベルト・フォン・デバウの夢に共感し彼に力を貸し、今は商会の会計人を務めている。新通貨発行に端を発した商会の内部分裂を収めるため、ホロとロレンスに脅迫まがいの手段を用いて協力を依頼する。
実権を得ようとする急進派からの拷問によって重傷を負うが、ウサギの姿に戻れることを利用して軟禁状態から脱出、策をもってミューリ傭兵団の協力を得てスヴェルネルにたどり着く。そこで討伐軍を率いて来たヤナーキンとの論戦で窮地に陥るものの、ロレンスの機転とホロの弁才によって大逆転、デバウ商会は救われた。
騒動終結後、ロレンスを商会へ誘うが固辞される。その理由がホロへの愛情だと分かっていたので「自分も娘に化けられればよかった(気を引けたかもしれない)」と笑えない冗談を飛ばしている。
続編「狼と羊皮紙」三巻にも登場。「狼と香辛料亭」開店後も懇意にしていたコルとミューリの要請に応じ、鳥たちや鯨の化身である「オータム」の力を借りてデザレフに火急の速さで到着すると、大司教と共謀して大聖堂所蔵の宝物を故売買するなど当地で背任を行っていた商会支配人一同を処分、デザレフが抱えていた問題の一端を解決するに至らしめた。また、デザレフで聖遺物として秘され、コル達の窮地を救った「燃えない布」を石綿であると知らしめ、コルを落胆させると共に「鉱石から布が生産できる」という事実でミューリを驚愕させた。
ルイス
ヒルデの部下。年月を経て知性を持った鳥だが、人間に化けることはできない。また、大きさも普通。ヒルデの命令でキッシェンに向かっていたコルの頭陀袋を盗んでヒルデのもとに運び、ヒルデが隠していたリュミオーネ金貨300枚とヒルベルトから託された打刻槌をホロに届けた。ホロもルイスを気に入っており、「勇気ある者」と称していた。
レボネト
数百年の歴史を持つフーゴ傭兵団の団長、ルワードとも交流がある。赤毛で筋骨隆々の大男で、ロレンスは「燃え盛るモイジ」と評した。ルワードと同じく誇り高い傭兵だったが、デバウ商会の金の力に己の無力を感じ、一生かかっても使い切れない報酬の前に膝を屈してしまう。しかし強烈な負い目も感じており、ルワードに「裏切り仲間」となるよう必死に懇願した。
ミューリ傭兵団を裏切ってルワードに重傷を負わせ、ヒルデの居場所を聞き出そうとするが、狼になったホロの介入によって部隊は混乱、火矢を射かけるよう命令しようとした時にホロの足に跳ね飛ばされ雪の上に落ちる前に踏みつぶされた。以降の生死は不明。これにより傭兵団は作戦行動不可能となる。
ラジ・グレム
デバウ商会に属する若く未熟な商人。ミューリ傭兵団追討の任を受けたフーゴ傭兵団の目付け役として同行。デバウ商会の名を出せば皆がひれ伏すと考えていた、傲慢で激昂しやすい男。ロレンス曰く「貴族の三男坊」のような軟弱者。フーゴ傭兵団がミューリ傭兵団を裏切ったことで圧倒的優位に立つが、ホロが介入したことでフーゴ傭兵団は蹴散らされ、自身もホロに捕らえられた。
クラウス・フォン・ハビリシ3世
スヴェルネルの北方にある土地を治める領主。権力者の雰囲気をまとった年嵩で赤毛の男。スヴェルネル参事会の商人株筆頭議長を務めるジャン・ミリケが闘病中のため彼の職務も兼務している。
数十年前、スヴェルネル出身の妻が死亡、スヴェルネルに墓があり、スヴェルネルの安泰が第1となっていた。それゆえにヒルデが主導した市門閉鎖(デバウ商会との戦争となる可能性があった)にも難色を示すが、市民が考え市門閉鎖の行動を起こすことには反対しなかった。
ヒルデとホロが超自然的存在であることを直感で見抜いており、ある程度「知性ある獣」に関する知識をもっていたものと思われる。また、彼自身人と獣の血を引く存在であり、人であるロレンスと獣であるホロが愛し合っていることに複雑な感情を抱いていた。
商会の内紛が終結してからホロと交流を結び、互いに酒を贈りあったりロレンスの温泉宿が開店する際に開かれる宴には呼んでほしいと手紙を送ったりしている。
エマニエル・ヤナーキン
デバウ商会の商人で、ヒルデの敵方(急進派)の筆頭とされる。スヴェルネル無血開城要求の使者としてあらわれ、ヒルデと舌戦を交える。
金がすべて解決する、金の力に屈しないものはないという考えの、ロレンスがもっとも嫌悪するタイプの商人。ヒルデとの交渉でもトレニー銀貨をばら撒くことで市民の歓心を買おうとするが、その銀貨が横領同然の不正なものであることをロレンスに見抜かれ(彼の言葉を受けた)修道女姿のホロに民衆の前で舌鋒鋭く説破されて完全敗北し、茫然自失としたままモイジに拘束された。

17巻

リフキン
クスコフの住人で、桶屋の主人を夫に持つ。エネクいわく「熊もかなわない」ほどの恰幅の良さを誇る。鷹揚かつ快濶な人柄で、司祭の仕事を怠けて裁縫の練習をし、しかもその最中にうたた寝をしていたノーラを笑って許した。エーブが乗る黒塗りの馬車が町に来たことを知らせた。
アニー
ニョッヒラに温泉宿を構えたロレンスに色目を使ってきた女性の中で、彼に本気で惚れこんでしまった、一流の腕を持つ楽師の女性。ロレンスに膝詰めで説得され身を引いた。その真摯さを周囲に吹聴したため、ロレンスの信用が上がることとなった。温泉宿開店前の宴で音楽を披露した。
ハンナ
ロレンス達の家事を受け持ち、宿の開業後は厨房を任される予定の女性。デバウ商会のヒルデの紹介で、かなりの倹約家。雪山の中からでも山菜や薬草を見つける名人。
その正体はホロやヒルデと同じく「知性ある獣」とロレンスは推測したが、彼女は自身のことを語らないし、詮索するものでもないと考えていたので不明のままとなっている。
ヒルベルト・フォン・デバウ
名前のみの登場。スヴェルネルの攻防ののちに解放され、ロレンスと面会、感謝の意を示した。ロレンスが温泉宿を開業するにあたり資金提供を申し出たが、「日の出の勢いのデバウ商会から金を借りる恐ろしさ」を承知しているロレンスから断られた。
モリス
ニョッヒラの温泉宿の中でも特に金持ちや身分の高いものをターゲットにしている高級宿の主。ロレンスが温泉を見つけるまでは「最も辺鄙(上流階級が好む)な場所にある温泉宿」として気を吐いていたが、そのお株をロレンスに奪われそうになっているため何かと突っかかってくる。ホロ曰く「宿の食事は(残飯を漁っている鳥や狐からの情報によると)二流もよいところ」。
フリード・リッテンマイヤー
短編「行商人と鈍色の騎士」に登場する老騎士。ホロと出会う3年前にロレンスと出会う。主君であるゼンフェル伯が荒地に建てた砦の管理を任されていたが、その主君は既に亡く、砦での生活を維持するための特権も近々切れるとのことで、ロレンスに砦に溜め込まれた宝物の換金を申し出る。
その後、砦を離れる前に「最後の一戦」の相手をロレンスに務めてくれるよう頼み、受け入れられる。しかし戦いの途中で羊から落ち、失敗。ロレンスに「名誉ある死」を与えてくれるよう頼むが受け入れられず、騎士を廃業して砦を去った。
ポール、シュティッケンガルト、エドワード二世
リッテンマイヤーが住んでいた砦に飼われていた家畜達。ポールは鶏、シュティッケンガルトは豚、エドワード二世は羊。エドワードはリッテンマイヤーの乗騎も兼ねる。ただし人を乗せる訓練を受けていないので、すぐに振り落とそうとした。

18巻

トート・コル
すっかり成長して、出会った当時のロレンスと同じくらいの年頃の青年となっている。しかし、ホロには、未だに〝コル坊〟と呼ばれている。ロレンスの湯屋「狼と香辛料亭」を手伝いつつ神学者を目指して勉強を続けてきたが、湯屋にやって来たある客の話に感銘を受けて一大決心をし、十数年ぶりにニョッヒラを出て旅立つことになる。
ミューリ
ロレンスとホロの間に生まれた一人娘。狼の耳と尻尾を持ち、灰に銀粉を混ぜたような不思議な色合いの髪をしている。髪の色を除けば外見は人の姿を取っている時のホロと瓜二つだが、中身はまだ年相応に幼く、ホロに輪をかけて天真爛漫な性格で、ロレンスやコルの悩みの種でもある。耳や尻尾を隠すことができ、ふだんはその姿で普通の人間のふりをしているが、感情が大きく揺れ動くと無意識のうちに出てしまうことがある。なお、狼の姿になることもできるが、狼が本来の姿であるホロと違って人の姿の方が自然であるらしく、狼の姿になるには練習が必要だった模様。生まれたときから一緒にいるコルのことを「兄様」と呼んで懐いており、ニョッヒラから旅立つコルの荷物の中に紛れて一緒に家を出てしまう。
ハンナ
第17巻で初登場した、ヒルデから紹介された女性。ロレンスの店「狼と香辛料亭」の厨房を一手に引き受け、涼しい顔で一人で三人分は働くという働き者。その正体は当初の予想通り人ではなく、ロレンスは今なお詳しくは聞いていないが、どうやら鳥の化身であるらしい。
カーム
ミューリの幼馴染で、ミューリと同じく悪戯好きの男の子。ミューリがコルと家を出た事を聞きつけ、ロレンスにミューリへ求婚したい旨を告げに来る。
サイラス
ニョッヒラの湯屋の店主、酒造が趣味で、カームの父である。
アラム
南の国で傭兵稼業のようなことをして細々と食いつないでいた、短い金髪の生真面目で不器用な青年。ひょんなことからニョッヒラから西に山を越えた先にある土地の特権状を手に入れ、そこにある修道院跡を利用して湯屋を始めようと仲間とともに北の地にやってきた。
実はその正体はホロと同じ狼。真の姿はホロより小さく、また年齢もずっと若いらしい。特権状をめぐる騒動の後、温泉は出なかったものの、奇跡の起きた巡礼地として観光名所となったその土地で宿を始めることになる。
セリム
アラムの妹で、湯屋を始めるべくアラムとともに北の地にやってきた。アラムよりもさらに生真面目そうで物憂げな顔をした、修道女のような佇まいの少女で、髪の色も顔色も薄く、幸薄そうな印象を与える。見た目は人の姿の時のホロよりも少し年上に見える。
その正体は銀色の毛並みが美しい雌の狼。人の姿の見た目に反して、実際はホロよりもずっと若い模様。真の姿はやはりホロより二回りは小さいが、それでも人よりは大きい。紆余曲折の末、コルとミューリが抜けて人手不足になっていた「狼と香辛料亭」に住み込みで働くことになる。

19巻

アマーリエ・ドラウシュテム=ハディシュ
ハディシュ村第7代領主の少女。
ヤーギン
アマーリエに仕える。

狼と羊皮紙

ハイランド
ウィンフィール王国の貴族で、庶子ではあるが王家の血を引く人物。男から見てもなお目を引くほど整った顔立ちと目の覚めるような金髪の持ち主。気さくな性格で、阿られるのはあまり好きではないらしい。コルよりも若いが聡明さと胆力をあわせ持ち、ミューリの正体にも気づいているようだが、特に詮索もせず放置している。
教皇の横暴に立ち上がった父親の国王を手伝い、教会側との交渉に奔走するとともに、聖典の俗語訳を作るという計画を発案し推し進めている。ニョッヒラで「狼と香辛料亭」に滞在した際にコルを気に入ったらしく、自分の計画に引き入れた。
実は女性で、ふだん人前に出る時は男装している。コルは男装を解いた姿を見るまでそのことにまったく気づいていなかったが、ミューリは気付いていた模様。

脚注

  1. ^ ただしスタッフロールでは名前は出ず「主人」となっている。
  2. ^ アニメ版で付けられた名前で、原作では名前が判明していない。
  3. ^ 『狼と香辛料ノ全テ』では400年程前
  4. ^ 開戦後にミューリの故郷であるヨイツを戦禍から守る目的もあった。