「疫学」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
タグ: モバイル編集 モバイルウェブ編集 改良版モバイル編集
m編集の要約なし
タグ: 2017年版ソースエディター
(同じ利用者による、間の4版が非表示)
1行目: 1行目:
{{Multiple image|perrow=2|total_width=400|image1=Contact-tracing_adapted.svg|image2=3548786222 7a3d3208d3 bInfluenzaGrippe.jpg|image4=3つの密.png|image3=Research design and evidence ja.svg|footer=疫学のさまざまな側面:上から下へ:CDCの資料に基づく接触者追跡の図、フランスの連合軍各収容所で医師が作成した1918年のインフルエンザ流行の症状を示す統計表、研究デザインとエビデンスの図、新型コロナの集団感染の発生リスクが高まる条件を示した3つの密の図}}
[[ファイル:John Snow.jpg|right|thumb|200px|疫学の祖・[[ジョン・スノウ (医師)|ジョン・スノウ]]<ref>[http://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/clinical-research/rinsyo-susumu/cr/cholera.html 臨床研究の先人たち Vol.1「コレラ」][[国立循環器病研究センター]]最終更新日 2010年12月01日</ref>]]
'''疫学'''(えきがく、{{Lang-en-short|Epidemiology}})とは、定義された[[個体群|集団]]における健康と疾病の状態の分布(誰が、いつ、どこで)、パターン、{{仮リンク|risk factor|en|risk factor|label=決定因子}}の研究と分析をする学問である。
'''疫学'''(えきがく、[[英語]]:Epidemiology)は、[[個人]]ではなく[[集団]]を対象として[[病気]]([[疾病]])の発生原因や流行状態、予防などを研究する学問。元々は[[伝染病]]を研究対象として始まったが、その後、[[公害病]]や事故などの[[人災]]、[[地震]]などの[[天災]]、[[交通事故]]、[[悪性腫瘍|がん]]などの[[生活習慣病]]など、研究調査対象は多様化している。疫学は[[公衆衛生]]と[[予防医学]]への基礎を提供する領域として、また、疾患への危険要因および最適な治療方針決定への実証的な[[根拠に基づく医療]](evidence-based medicine, EBM)として評価されている。


また、疫学は[[公衆衛生]]の基礎であり、{{仮リンク|risk factor|en|risk factor|label=リスク因子}}を特定し、[[予防医学]]の対象を特定することで、政策決定や[[根拠に基づく実践]]を形作るものである。疫学者は、研究デザイン、データの収集、[[推計統計学|統計分析]]、結果の解釈と普及([[査読]]と時折の[[システマティック・レビュー]]を含む)の修正を支援する。そして、疫学は[[臨床研究]]、[[公衆衛生]]研究、より限定的には生物科学における[[基礎研究]]で使用される[[方法論]]の開発に貢献してきた<ref>{{Cite book |first=Miquel |last=Porta |title=A Dictionary of Epidemiology |url=http://global.oup.com/academic/product/a-dictionary-of-epidemiology-9780199976737?cc=us&lang=en |edition=6th |year=2014 |location=New York |publisher=Oxford University Press |isbn=978-0-19-997673-7 |access-date=16 July 2014}}</ref>。
伝染性および非伝染性の病気を含む疫学の研究範囲は、突発的流行疾患の[[医学]]的調査研究から、研究計画、データ収集と解析、統計的モデルの考案による仮説検定などの[[統計学]]的研究に及ぶ。疫学研究では[[分析]]的手法として、概念的な[[単位]]を生物一個体に置く。集団において病気を持っている[[個体]]数を測定し、流行状態を[[頻度]]([[有病割合]]や[[発生率]]など)として数量化する。また、疾患プロセスを理解する際には[[生物学]]を利用し、危険因子の近因と遠因を探る際には[[社会学]]や[[哲学]]を利用する。


疫学研究の主要分野には、病因、[[感染経路]]、[[アウトブレイク]]調査、{{仮リンク|disease surveillance|en|disease surveillance|label=疾病サーベイランス}}、{{仮リンク|environmental epidemiology|en|environmental epidemiology|label=環境疫学}}、{{仮リンク|forensic epidemiology|en|forensic epidemiology|label=法医学的疫学}}、{{仮リンク|occupational epidemiology|en|occupational epidemiology|label=職業疫学}}、[[スクリーニング (医学)]]、{{仮リンク|biomonitoring|en|biomonitoring|label=バイオモニタリング}}、[[治験]]などの治療効果の比較が含まれる。疫学者は、病気のプロセスをより理解するために[[生物学]]、データを有効に活用し適切な結論を導き出すために[[統計学]]、近接原因と遠因をより理解するために[[社会科学]]、{{仮リンク|exposure assessment|en|exposure assessment|label=ばく露評価}}のために[[工学]]などの他の科学分野に依存している。
初期の疫学は[[急性疾患]]([[感染症]])の流行の制御に大きな成果をあげた。この成果に伴い、社会の疾病構造が急性疾患から[[慢性疾患]]([[生活習慣病]])に変化したため、現在では長期間にわたる流行形態をとる慢性疾患の制御の研究も行われる。


疫学は疫の字にやまいだれ(疒)が付くため[[医学]]であると誤解されやすいが、[[英語]]では[[:en:Epidemiology|Epidemiology]](''epi-'' (upon、広範な) + ''-demos''(people、人間の) + ''-logos''(study 学問)と綴り、人間集団に対するあらゆる因果関係の確認に用いられる学問である<ref>[[日本疫学会]]監修『はじめて学ぶやさしい疫学-疫学への招待』[[南江堂]]、2002-10-10、ISBN 4-524-22468-8</ref>。しかし、この用語は動物集団の研究(獣医学的疫学)でも広く使用されており、「{{仮リンク|epizoology|en|epizoology|label=獣疫学}}(epizoology)」という用語も用いられることがあり、植物集団の研究(植物学的または{{仮リンク|plant disease epidemiology|en|plant disease epidemiology|label=植物病理疫学}})にも適用されている<ref>{{Cite journal|last=Nutter|first=F.W. Jr.|year=1999|title=Understanding the interrelationships between botanical, human, and veterinary epidemiology: the Ys and Rs of it all|journal=Ecosystem Health|volume=5|issue=3|pages=131–40|doi=10.1046/j.1526-0992.1999.09922.x}}</ref>。
集団生活を営む動物(例えば[[家畜]]、[[産業動物]])に流行する病気にも適用され、[[獣医学]]の分野において多用される。ただし、集団として捉えることが困難な[[野生動物]]への適用は難しい。


「流行」と「風土病」の区別は[[ヒポクラテス]]によって初めてなされた<ref>Hippocrates (~200 BC). ''Airs, Waters, Places''.</ref>。これは、集団に「訪れる」病気(流行)と集団内に「住む」病気(風土病)を区別するためである<ref name="Carol Buck 1998 p3">Carol Buck, Alvaro Llopis; Enrique Nájera; Milton Terris (1998) ''The Challenge of Epidemiology: Issues and Selected Readings''. Scientific Publication No. 505. Pan American Health Organization. Washington, DC. p. 3.</ref>。「epidemiology」という用語は、1802年にスペインの医師[[ホアキン・デ・ビジャルバ]]によって、『Epidemiología Española』の中で初めて流行病の研究を記述するために使用されたと思われる<ref name="Carol Buck 1998 p3" />。疫学者はまた、{{仮リンク|syndemic|en|syndemic|label=シンデミック}}として知られる、集団における疾患の相互作用も研究している。
== 定義 ==
国際疫学会の定義は「特定の集団における健康に関連する状況あるいは事象の、分布あるいは規定因子に関する研究。また、健康問題を制御するために疫学を応用すること」である<ref>日本疫学会翻訳、『疫学辞典第3版 国際疫学学会後援図書』財団法人日本公衆衛生協会、2000年、ISBN 978-4-8192-0167-4.</ref>。


疫学という用語は現在、流行性の感染症だけでなく、一般的な疾患の記述と因果関係を網羅するために広く適用されている。疫学を通して検討されるトピックの例には、高血圧、精神疾患、[[肥満]]などがある。したがって、この疫学は、疾患のパターンが人間の機能をどのように変化させるかに基づいている。
他の定義の例として「疫学とは生物集団における病気の流行状態を研究する学問」がある。すなわち、ある時点/期間で、ある集団において、ある病気が流行した場合、その流行の原因を調べ、その原因を除去することにより流行そのものを制御(終熄、予防)するための学問である。この点をもって「流行病学」とも呼ばれる。


== 歴史 ==
「疫学は人間集団における[[病気]]の発生に関する[[学問]]」だとする定義もある<ref>Anders Ahlbom,Staffan Norell,''Introduction to modern epidemiology'' 2nd ed,America:Epidemiology Resources ,1990/07/01,p.1,ISBN 0-917-22706-9</ref>。
{{Seealso|感染症の歴史}}[[医学]]の父と呼ばれたデモクリトスに教えを受けたギリシャの医師[[ヒポクラテス]]は<ref>{{Cite book |url=https://books.google.com/books?id=E-OZbEmPSTkC&pg=PA93 |title=A history of epidemiologic methods and concepts |author=Alfredo Morabia |year=2004 |publisher=Birkhäuser |page=93 |isbn=978-3-7643-6818-0}}</ref><ref>[http://samples.jbpub.com/9780763766221/66221_CH02_5398.pdf Historical Developments in Epidemiology] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20180219135301/http://samples.jbpub.com/9780763766221/66221_CH02_5398.pdf|date=19 February 2018}}. Chapter 2. Jones & Bartlett Learning LLC.</ref>、病気に論理を求め、疾患の発生と環境の影響との関係を調べた最初の人物として知られている<ref>{{Cite book |url=https://books.google.com/books?id=RMDBh6gw1_UC&pg=PA24 |title=Introduction to Epidemiology |author=Ray M. Merrill |year=2010 |publisher=Jones & Bartlett Learning |page=24 |isbn=978-0-7637-6622-1}}</ref>。ヒポクラテスは、人体の病気は[[四体液説|四体液]](黒胆汁、黄胆汁、血液、粘液)のアンバランスによって引き起こされると考えた。病気の治療法は、問題の体液を取り除くか、体のバランスを取るために加えることであった。この信念は、医学における瀉血と食事療法の適用につながった<ref name="Merril, Ray M. 2010">Merril, Ray M., PhD, MPH. (2010): ''An Introduction to Epidemiology'', Fifth Edition. Chapter 2: "Historic Developments in Epidemiology". Jones and Bartlett Publishing</ref>。彼は、(通常は特定の場所で見られるが、他の場所では見られない病気のために)[[風土病]]と、(ある時は見られるが、他の時は見られない病気のために)[[エピデミック|流行病]]という用語を作り出した<ref name="hip">{{Cite web |title=Changing Concepts: Background to Epidemiology |publisher=Duncan & Associates |url=http://www.duncan-associates.com/changing_concepts.pdf |access-date=3 February 2008 |archive-date=25 July 2011 |archive-url=https://web.archive.org/web/20110725065539/http://www.duncan-associates.com/changing_concepts.pdf |url-status=dead}}</ref>。


=== 近代 ===
また人間以外にも拡張した説としては、「疫学とは病気の発生に関する学問」だとする定義がある<ref>Kenneth J.Rothman,Sander Greenland,''Modern epidemiology'' 2nd ed,America:Lippincott Williams & Wilkins,1998/01/15,ISBN 0-316-75780-2</ref><ref>[[獣医疫学]]</ref><ref>[http://www.vet-epidemiol.jp/]</ref><ref>[http://www.sat.affrc.go.jp/sishocho/Ogawa/ekigaku/ekigaku_title.html]</ref>。
{{See also|新興感染症の歴史}}16世紀半ばに、[[ヴェローナ]]出身の医師[[ジローラモ・フラカストロ]]が、病気を引き起こす非常に小さな、目に見えない粒子が生きていると提唱した最初の人物である。これらの粒子は空気によって広がり、自分で増殖し、火によって破壊されると考えられていた。このようにして、彼は[[ガレノス]]の[[瘴気]]説(病人の中にある毒ガス)を否定した。1543年、彼は『[[ジローラモ・フラカストロ|De contagione et contagiosis morbis]]』という本を書き、その中で病気を予防するために個人的および環境的な[[衛生]]を推進した最初の人物となった。1675年に[[アントニ・ファン・レーウェンフック]]によって十分に強力な顕微鏡が開発されたことで、[[病気の病原体説]]と一致する生きた粒子の視覚的証拠が提供された{{要出典|date=June 2022}}。


[[明]]の時代、[[ウー・ヨウケ]](1582-1652)は、1641年から1644年の間に様々な流行病が猛威を振るうのを目撃した際に、''Li Qi''(戾気または悪因子)と呼ばれる伝染性の物質によって引き起こされる病気があるという考えを発展させた<ref>{{Cite book |last1=Joseph |first1=P Byre |title=Encyclopedia of the Black Death |date=2012 |publisher=ABC-CLIO |isbn=978-1598842548 |page=76 |url=https://books.google.com/books?id=AppsDAKOW3QC&pg=PA76 |access-date=24 February 2019}}</ref>。彼の著書『Wen Yi Lun(瘟疫論、疫病論)』は、この概念を提唱した主要な病因学的著作と見なすことができる<ref>{{Cite book |last1=Guobin |first1=Xu |last2=Yanhui |first2=Chen |last3=Lianhua |first3=Xu |title=Introduction to Chinese Culture: Cultural History, Arts, Festivals and Rituals |year=2018 |publisher=Springer |isbn=978-9811081569 |page=70 |url=https://books.google.com/books?id=-KFTDwAAQBAJ&pg=PA70 |access-date=24 February 2019}}</ref>。彼の概念は、2004年のWHOによるSARS流行の分析において、伝統的中国医学の文脈でいまだに考慮されていた<ref>{{Cite web |title=SARS: Clinical Trials on Treatment Using a Combination of Traditional Chinese Medicine and Western Medicine |url=http://apps.who.int/medicinedocs/en/d/Js6170e/4.html#Js6170e.4 |publisher=World Health Organization |access-date=24 February 2019 |archive-url=https://web.archive.org/web/20180608111238/http://apps.who.int/medicinedocs/en/d/Js6170e/4.html |archive-date=8 June 2018}}</ref>。
疫学は疫の字にやまいだれ(疒)が付くため[[医学]]であると誤解されやすいが、[[英語]]では[[:en:Epidemiology|Epidemiology]](''epi-'' (upon、広範な) + ''-demos''(people、人間の) + ''-logos''(study 学問)と綴り、人間集団に対するあらゆる因果関係の確認に用いられる学問である<ref>[[日本疫学会]]監修『はじめて学ぶやさしい疫学-疫学への招待』[[南江堂]]、2002-10-10、ISBN 4-524-22468-8</ref>。


もう一人の先駆者である[[トマス・シデナム]](1624-1689)は、1600年代後半のロンドン市民の熱を最初に区別した人物である。熱の治療法に関する彼の理論は、当時の伝統的な医師から多くの抵抗を受けた。彼は、自身が研究し治療した[[天然痘]]の熱の初期原因を見つけることができなかった<ref name="Merril, Ray M. 2010" />。
== 歴史 ==
{{Seealso|感染症の歴史}}
=== ジョン・スノウ ===
[[Image:Snow-cholera-map.jpg|right|250px|thumb|'''ジョン・スノウの調査結果''' コレラによる死者(黒点)の分布から規則的なパターンが読み取れる。スノーはコレラの原因がブロード街の中央にある手押し井戸 (Pump) であると判断した。手押し井戸のレバーを取り外すことでコレラが収束した。後年の調査によると肥料に用いるために備え付けられていた汚水だめに1854年8月末の最初の患者 (40 Broad Street) の糞便が混入したこと、汚水溜めと問題の井戸が90cmしか離れていなかったことが分かっている]]
{{See|ブロード・ストリートのコレラの大発生}}
疫学の始まりは[[ジョン・スノウ (医師)|ジョン・スノウ]]の[[コレラ]]研究にあると言われる<ref>R. Bonita:Basic Epidemiology, Second Edition, WHO,ISBN 978-9241547079</ref>。コレラのイギリス侵入([[1831年]]10月)当時、コレラは[[感染経路|空気感染]]すると考えられており恐れられていた。しかしスノウは同じ流行地域でも患者が出る家は飛び飛びである等の知見を得て空気感染説に疑問を持ち、「汚染された水を飲むとコレラになる」という「[[感染経路|経口感染]]仮説」を立て、疫学的調査と防疫活動を行った。


{{仮リンク|John Graunt|en|John Graunt|label=ジョン・グラント}}は、{{仮リンク|haberdasher|en|haberdasher|label=装身具商}}であり、アマチュアの統計学者で、1662年に『Natural and Political Observations ... upon the Bills of Mortality』を出版した。その中で、[[ロンドン]]の[[ロンドンの大疫病|大疫病]]以前の死亡者記録を分析し、最初の[[生命表]]の1つを提示し、新旧の多くの病気の時間的な傾向を報告した。彼は、多くの病気の理論に統計的証拠を提供し、それらに関する一部の広く普及していた考えを否定した{{要出典|date=June 2022}}。
[[1854年]]8月、[[ブロード・ストリートのコレラの大発生|ブロード・ストリートでコレラの大発生]]が起きた。[[ロンドン]]の水道会社は[[テムズ川]]から取水していたが、当時の[[テムズ川]]は汚濁がひどく衛生的とは言えなかった。スノウはコレラ患者が多量発生した[[ロンドン]]のブロード街にて患者発生状況の調査を行った。スノウは患者発生マップと各水道会社の給水地域との比較照合を行い、特定の水道会社の給水地域において[[コレラ]]患者が多発していることを突き止めた。同社の取水口は[[糞尿]]投棄の影響を受ける位置にあったという。スノウは、ある井戸が汚染源と推測、あてはまらない事例について調査を行い、「汚染された井戸水を飲んでいる人は罹る」と結論した。行政がこれに従い問題の井戸を閉鎖したため、流行の蔓延を防ぐ事が出来た。この出来事は『ブロード街の12日間』という史実を元にしたフィクションにまとめられている。
[[ファイル:Snow-cholera-map.jpg|サムネイル|350x350ピクセル|{{仮リンク|1854 Broad Street cholera outbreak|en|1854 Broad Street cholera outbreak|label=1854年のロンドン流行}}における[[クラスター (疫学)|コレラ症例のクラスター]]を示す[[ジョン・スノウ (医師)|ジョン・スノウ]]による元の地図]]
[[ジョン・スノウ (医師)|ジョン・スノウ]]は、19世紀の[[コレラ]]の流行の原因を調査したことで有名であり、(現代の)疫学の父としても知られている<ref>[http://www.ph.ucla.edu/epi/snow/fatherofepidemiology.html Doctor John Snow Blames Water Pollution for Cholera Epidemic, by David Vachon] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20111228050259/http://www.ph.ucla.edu/epi/snow/fatherofepidemiology.html|date=28 December 2011}} UCLA Department of Epidemiology, School of Public Health May & June 2005</ref><ref>[https://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=3935461 John Snow, Father of Epidemiology] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20170620140913/http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=3935461|date=20 June 2017}} NPR Talk of the Nation. 24 September 2004</ref>。彼は、サウスワーク社が供給する2つの地域で死亡率が著しく高いことに気づいたことから始めた。ソーホー地区の流行の原因として{{仮リンク|Broadwick Street|en|Broadwick Street|label=ブロード通り}}の水道ポンプを特定したことは、疫学の典型的な例と考えられている。スノウは、水を浄化するために塩素を使用し、ハンドルを取り外した。これにより流行は終息した。これは、[[公衆衛生]]の歴史における重大な出来事と見なされ、世界中の公衆衛生政策の形成に役立った疫学の科学の創設事業と見なされている<ref>{{Cite web |url=http://www.ph.ucla.edu/epi/snow/importance.html |title=Importance of Snow |website=www.ph.ucla.edu |access-date=2024-03-10}}</ref><ref>[http://www.jsi.com/JSIInternet/About/snow.cfm Dr. John Snow.] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20140616100942/http://www.jsi.com/JSIInternet/About/snow.cfm|date=16 June 2014}} John Snow, Inc. and JSI Research & Training Institute, Inc.</ref>。しかし、スノウの研究と更なる流行を避けるための予防策は、当時の[[瘴気]]説が優勢だったため、彼の死後まで完全には受け入れられず、実践されなかった。瘴気説とは、空気の質の悪さが病気の原因であるとする病気のモデルであり、貧困地域の高い感染率を合理化するために使用されたが、その背後にある栄養不良や衛生面の問題に取り組むことはなく、彼の研究によって誤りであることが証明された<ref>{{Citation|title=The ghost map : [the story of London's most terrifying epidemic – and how it changed science, cities, and the modern world]|last=Johnson, Steven|url=http://worldcat.org/oclc/1062993385|oclc=1062993385|access-date=2020-09-16}}</ref>。


他の先駆者には、1849年に[[アイスランド]]の[[ヴェストマン諸島]]における{{仮リンク|neonatal tetanus|en|neonatal tetanus|label=新生児破傷風}}の流行の予防に関する自身の研究を関連付けたデンマークの医師[[ピーター・アントン・シュライスナー]]がいる<ref>{{Cite web |url=https://www.wikaeducation.com |title=Education Consultancy |author=Krishna |author2=Kr |date=May 2019 |publisher=Krishna |access-date=2024-03-10}}</ref><ref>{{Cite journal|author1=Ólöf Garðarsdóttir|date=25 August 2009|title=Public health measures against neonatal tetanus on the island of Vestmannaeyjar (Iceland) during the 19th century|journal=The History of the Family|volume=14|issue=3|pages=266–79|doi=10.1016/j.hisfam.2009.08.004|author2=Loftur Guttormsson|s2cid=72505045}}{{要検証|date=April 2011}}</ref>。<!--please check also Daniel E. Vaisey, "An Estimate of Neonatal Tetanus Mortality in Iceland, 1790–1839" European Journal of Population 13 (1997), 62, 67 as cited in Loftur Guttormsson and Ólöf Garðarsdóttir [http://www.ep.liu.se/ej/hygiea/ "The Development of Infant Mortality in Iceland 1800–1920"] (2002) Hygiea Internationalis 3(1) pp. 151–77-->もう一人の重要な先駆者は、[[ハンガリー]]の医師[[センメルヴェイス・イグナーツ]]で、1847年にウィーンの病院で消毒手順を導入することにより乳児死亡率を下げた。彼の発見は1850年に発表されたが、彼の研究は同僚に歓迎されず、手順は中止された。英国の外科医[[ジョゼフ・リスター]]が[[ルイ・パスツール]]の研究に照らして1865年に[[殺菌剤 (医薬品)|消毒薬]]を「発見」するまで、消毒は広く実践されるようにはならなかった{{要出典|date=June 2022}}。
スノウのコレラ研究は、[[1883年]]に[[ロベルト・コッホ]]が[[コレラ菌]]を発見する30年前の事であった。スノウの疫学的研究は、[[感染源]]・[[感染経路]]の解明という疫学的手法により、生物学的要因(病原体など)が不明であっても、社会的要因、状況の観察から、感染症流行を止めることができることを知らしめた。現代の疫学研究も、本質的にはスノウの研究と変わりない。


=== ロベルト・コッホ ===
[[ロベルト・コッホ]]は[[1876年]]、[[炭疽菌]]の純粋培養に成功し、[[炭疽]]の[[病原体]]であることを証明し、[[細菌]]が[[動物]]の病原体であることを証明した([[コッホの原則]])。[[1882年]]に[[結核菌]]を発見し、[[ヒト]]においても細菌が病原体であることを証明した。[[1883年]]、[[インド]]において[[コレラ菌]]を発見した。[[1890年]]、コッホは結核菌の培養上清から[[ツベルクリン]](結核菌ワクチン)を創製した。[[1905年]]、コッホは[[ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。コッホは[[ルイ・パスツール]]とともに近代細菌学の開祖とされる。
[[ロベルト・コッホ]]は[[1876年]]、[[炭疽菌]]の純粋培養に成功し、[[炭疽]]の[[病原体]]であることを証明し、[[細菌]]が[[動物]]の病原体であることを証明した([[コッホの原則]])。[[1882年]]に[[結核菌]]を発見し、[[ヒト]]においても細菌が病原体であることを証明した。[[1883年]]、[[インド]]において[[コレラ菌]]を発見した。[[1890年]]、コッホは結核菌の培養上清から[[ツベルクリン]](結核菌ワクチン)を創製した。[[1905年]]、コッホは[[ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。コッホは[[ルイ・パスツール]]とともに近代細菌学の開祖とされる。


コッホは[[ベルリン大学]]で弟子を育て、[[腸チフス]]菌を発見した[[ゲオルク・ガフキー]]、[[ジフテリア]]菌の分離に成功し、[[口蹄疫ウイルス]]を発見した[[フリードリヒ・レフラー]]、[[抗血清|血清療法]]を研究した[[エミール・ベーリング]]、[[化学療法 (細菌)|化学療法]]を研究した[[パウル・エールリヒ]]、[[破傷風菌]]を純粋培養し、[[ペスト菌]]を発見した[[北里柴三郎]]などを輩出した。
コッホは[[ベルリン大学]]で弟子を育て、[[腸チフス]]菌を発見した[[ゲオルク・ガフキー]]、[[ジフテリア]]菌の分離に成功し、[[口蹄疫ウイルス]]を発見した[[フリードリヒ・レフラー]]、[[抗血清|血清療法]]を研究した[[エミール・ベーリング]]、[[化学療法 (細菌)|化学療法]]を研究した[[パウル・エールリヒ]]、[[破傷風菌]]を純粋培養し、[[ペスト菌]]を発見した[[北里柴三郎]]などを輩出した。


20世紀初頭、[[ロナルド・ロス]]、{{仮リンク|Janet Lane-Claypon|en|Janet Lane-Claypon|label=ジャネット・レーン=クレイポン}}、{{仮リンク|Anderson Gray McKendrick|en|Anderson Gray McKendrick|label=アンダーソン・グレイ・マッケンドリック}}らによって、疫学に数学的手法が導入された<ref>[https://books.google.com/books?id=6DD1FKq6fFoC&q=mathematical+methods+were+introduced+into+epidemiology+20th+century+ross&pg=PA323 Statisticians of the centuries] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20220630015959/https://books.google.com/books?id=6DD1FKq6fFoC&pg=PA323#v=onepage&q=mathematical%20methods%20were%20introduced%20into%20epidemiology%2020th%20century%20ross|date=30 June 2022}}. By C. C. Heyde, Eugene Senet</ref><ref>[http://statprob.com/encyclopedia/AndersonGrayMcKENDRICK.html Anderson Gray McKendrick] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20110822114404/http://statprob.com/encyclopedia/AndersonGrayMcKENDRICK.html|date=22 August 2011}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://oneweb.soton.ac.uk/node/201970 |title=Homepage |publisher=Tel: +4423 8059 5000 Fax: +4423 8059 3131 University of Southampton University Road Southampton SO17 1BJ United Kingdom |website=University of Southampton |access-date=2024-03-10}}{{リンク切れ|date=May 2023|bot=InternetArchiveBot|fix-attempted=yes}}</ref><ref>{{Cite web |url=http://www.epidemiology.ch/history/papers/SPM%2047(6)%20359-65%20Paneth%20et%20al.%20_%20Part%202.pdf |title=Origins and early development of the case-control study |access-date=31 August 2013 |archive-url=https://web.archive.org/web/20170118055648/http://www.epidemiology.ch/history/papers/SPM%2047(6)%20359-65%20Paneth%20et%20al.%20_%20Part%202.pdf |archive-date=18 January 2017 |url-status=dead |df=dmy-all}}</ref>。1920年代の並行した発展の中で、ドイツ系スイス人の病理学者{{仮リンク|Max Askanazy|en|Max Askanazy|label=マックス・アスカナジー}}らは、異なる地域の集団における癌やその他の非感染性疾患の地理的病理学を体系的に調査するために、国際地理病理学会を設立した。第二次世界大戦後、{{仮リンク|Richard Doll|en|Richard Doll|label=リチャード・ドール}}らの非病理学者がこの分野に参加し、感染症の流行のために開発された方法では適切に研究できないパターンと発生様式を持つ疾患である癌を研究する方法を進歩させた。地理病理学は最終的に感染症疫学と結合し、今日の疫学の分野を形成した<ref name="cancer">{{Cite journal|author=Mueller LM|year=2019|title=Cancer in the tropics: geographical pathology and the formation of cancer epidemiology|journal=BioSocieties|volume=14|issue=4|pages=512–528|doi=10.1057/s41292-019-00152-w|hdl=1721.1/128433|s2cid=181518236|hdl-access=free}}</ref>。
===日本の疫学===
日本の疫学の祖と言われている[[高木兼寛]]は、[[日本海軍]]に多発した[[脚気]]を白米を中心とする食事にありとする栄養学説を唱えて、それを実験疫学的に証明したことで有名である。航海実験の結果に基づき海軍食に麦飯を導入、結果、1885年には海軍の脚気は激減した<ref name="matsuda">松田 誠 著 「脚気をなくした男 高木兼寛伝」 講談社 ISBN 4-06-204487-0</ref>。これらの功績により1905年(明治38年)に[[男爵]]の爵位を授けられ、後に「麦飯男爵」とも呼ばれたという<ref name="kurasko">倉迫 一朝 著 「病気を診ずして病人を診よ 麦飯男爵 -高木 兼寛の生涯-」 鉱脈社 ISBN 4-906008-31-3</ref>。


もう一つの画期的な出来事は、{{仮リンク|Richard Doll|en|Richard Doll|label=リチャード・ドール}}と{{仮リンク|Austin Bradford Hill|en|Austin Bradford Hill|label=オースティン・ブラッドフォード・ヒル}}が主導した{{仮リンク|British Doctors Study|en|British Doctors Study|label=英国医師研究}}の結果が1954年に発表されたことである。これは、[[喫煙]]と[[肺癌]]の関連性に非常に強力な統計的支持を与えた{{要出典|date=November 2023}}。
これは[[1912年]]に[[鈴木梅太郎]]が[[オリザニン]]([[ビタミンB1]])を発見する実に27年も前のことである。

20世紀後半、生物医学の進歩に伴い、血液、その他の生体試料、環境中の多数の分子マーカーが、ある疾患の発症または危険性の予測因子として同定された。分子レベルで分析されたこれらの{{仮リンク|biomarker|en|biomarker|label=バイオマーカー}}と疾患の関係を調べる疫学研究は、広く「{{仮リンク|molecular epidemiology|en|molecular epidemiology|label=分子疫学}}」と名付けられた。具体的には、生殖細胞系列の遺伝的変異と疾患の疫学に「{{仮リンク|genetic epidemiology|en|genetic epidemiology|label=遺伝疫学}}」という用語が使用されてきた。遺伝的変異は、通常、末梢血白血球のDNAを用いて決定される{{要出典|date=June 2022}}。

=== 21世紀 ===
2000年代以降、多くの疾患や健康状態の遺伝的リスク因子を特定するために、[[ゲノムワイド関連解析]](GWAS)が一般的に行われるようになった{{要出典|date=March 2023}}。

大多数の分子疫学研究では、従来の疾患{{仮リンク|diagnosis|en|diagnosis|label=診断}}と分類システムがいまだに使用されているが、疾患の進行は本質的に個人ごとに異なる不均一なプロセスであることがますます認識されている。概念的には、各個人は他の個人とは異なる独自の疾患プロセスを持っている(「独特の疾患原則」)<ref>{{Cite journal|year=2012|title=How many molecular subtypes? Implications of the unique tumor principle in personalized medicine|journal=Expert Rev Mol Diagn|volume=12|issue=6|pages=621–28|doi=10.1586/erm.12.46|pmc=3492839|pmid=22845482|vauthors=Ogino S, Fuchs CS, Giovannucci E}}</ref><ref>{{Cite journal|year=2013|title=Molecular pathological epidemiology of epigenetics: Emerging integrative science to analyze environment, host, and disease|journal=Mod Pathol|volume=26|issue=4|pages=465–84|doi=10.1038/modpathol.2012.214|pmc=3637979|pmid=23307060|vauthors=Ogino S, Lochhead P, Chan AT, Nishihara R, Cho E, Wolpin BM, Meyerhardt JA, Meissner A, Schernhammer ES, Fuchs CS, Giovannucci E}}</ref>。これは、{{仮リンク|exposome|en|exposome|label=エクスポーゾーム}}(内因性および外因性/環境曝露の総体)の独自性と、各個人における分子病理学的プロセスへのその固有の影響を考慮したものである。曝露と疾患(特に[[悪性腫瘍|癌]])の分子病理学的特徴との関係を調べる研究は、2000年代を通じてますます一般的になった。しかし、疫学における[[分子病理学]]の使用には、研究ガイドラインと標準化された[[統計学|統計]]方法論の欠如、学際的専門家と教育プログラムの不足など、独特の課題があった<ref>{{Cite journal|year=2012|title=Interdisciplinary education to integrate pathology and epidemiology: Towards molecular and population-level health science|journal=Am J Epidemiol|volume=176|issue=8|pages=659–67|doi=10.1093/aje/kws226|pmc=3571252|pmid=22935517|vauthors=Ogino S, King EE, Beck AH, Sherman ME, Milner DA, Giovannucci E}}</ref>。さらに、疾患の不均一性の概念は、同じ疾患名を持つ個人は同様の病因と疾患プロセスを持っているという疫学における長年の前提と矛盾するように見える。これらの問題を解決し、分子[[オーダメイド医療|精密医療]]の時代における集団の健康科学を進歩させるために、「分子病理学」と「疫学」が統合され、「{{仮リンク|molecular pathological epidemiology|en|molecular pathological epidemiology|label=分子病理疫学}}」(MPE)という新しい学際的分野が作られた<ref>{{Cite journal|year=2010|title=Lifestyle factors and microsatellite instability in colorectal cancer: the evolving field of molecular pathological epidemiology|journal=J Natl Cancer Inst|volume=102|issue=6|pages=365–67|doi=10.1093/jnci/djq031|pmc=2841039|pmid=20208016|vauthors=Ogino S, Stampfer M}}</ref><ref>{{Cite journal|year=2011|title=Molecular pathological epidemiology of colorectal neoplasia: an emerging transdisciplinary and interdisciplinary field|journal=Gut|volume=60|issue=3|pages=397–411|doi=10.1136/gut.2010.217182|pmc=3040598|pmid=21036793|vauthors=Ogino S, Chan AT, Fuchs CS, Giovannucci E}}</ref>。これは、「分子病理学と疾患の不均一性の疫学」と定義される。MPEでは、研究者は、(A)環境、食事、ライフスタイル、遺伝的要因、(B)細胞内または細胞外分子の変化、および(C)疾患の進化と進行との関係を分析する。疾患{{仮リンク|pathogenesis|en|pathogenesis|label=発症機序}}の不均一性をより理解することは、疾患の[[エティオロジー]]を解明するのにさらに貢献するだろう。MPEアプローチは、腫瘍性疾患だけでなく、非腫瘍性疾患にも適用できる<ref>{{Cite journal|year=2013|title=The merits of subtyping obesity: one size does not fit all|journal=JAMA|volume=310|issue=20|pages=2147–48|doi=10.1001/jama.2013.281501|pmid=24189835|vauthors=Field AE, Camargo CA, Ogino S}}</ref>。MPEの概念とパラダイムは、2010年代に広まった<ref>{{Cite journal|year=2011|title=CpG island methylation in colorectal cancer: past, present and future|journal=Pathology Research International|volume=2011|page=902674|doi=10.4061/2011/902674|pmc=3090226|pmid=21559209|vauthors=Curtin K, Slattery ML, Samowitz WS|doi-access=free}}</ref><ref>{{Cite journal|year=2012|title=The CpG island methylator phenotype in colorectal cancer: Progress and problems|url=https://cris.maastrichtuniversity.nl/en/publications/64ca3af6-de2b-4150-b52e-0507ac49e51c|journal=Biochim Biophys Acta|volume=1825|issue=1|pages=77–85|doi=10.1016/j.bbcan.2011.10.005|pmid=22056543|vauthors=Hughes LA, Khalid-de Bakker CA, Smits KM, den Brandt PA, Jonkers D, Ahuja N, Herman JG, Weijenberg MP, van Engeland M|author-link6=Nita Ahuja|author-link7=James G. Herman}}</ref><ref>{{Cite journal|year=2012|title=Gene discovery in familial cancer syndromes by exome sequencing: prospects for the elucidation of familial colorectal cancer type X.|journal=Mod Pathol|volume=25|issue=8|pages=1055–68|doi=10.1038/modpathol.2012.62|pmid=22522846|vauthors=Ku CS, Cooper DN, Wu M, Roukos DH, Pawitan Y, Soong R, Iacopetta B|doi-access=free}}</ref><ref>{{Cite journal|year=2012|title=Aspirin as adjuvant therapy for colorectal cancer-reinterpreting paradigms|journal=Nat Rev Clin Oncol|volume=9|issue=10|pages=561–70|doi=10.1038/nrclinonc.2012.137|pmid=22910681|vauthors=Chia WK, Ali R, Toh HC|s2cid=7425809}}</ref><ref>{{Cite journal|year=2012|title=Integrative cancer epidemiology – the next generation|journal=Cancer Discov|volume=2|issue=12|pages=1087–90|doi=10.1158/2159-8290.cd-12-0424|pmc=3531829|pmid=23230187|vauthors=Spitz MR, Caporaso NE, Sellers TA}}</ref><ref>{{Cite journal|year=2013|title=Lipogenesis and lipolysis: The pathways exploited by the cancer cells to acquire fatty acids|journal=Prog Lipid Res|volume=52|issue=4|pages=585–89|doi=10.1016/j.plipres.2013.08.005|pmc=4002264|pmid=24001676|vauthors=Zaidi N, Lupien L, Kuemmerle NB, Kinlaw WB, Swinnen JV, Smans K}}</ref><ref>{{Cite journal|year=2013|title=New Insights on Bariatric Surgery Outcomes|journal=JAMA|volume=310|issue=22|pages=2401–02|doi=10.1001/jama.2013.280927|pmid=24189645|vauthors=Ikramuddin S, Livingston EH}}</ref>。

2012年までに、多くの病原体の[[進化]]は疫学と非常に関連するほど速いこと、したがって疫学と[[分子進化]]を統合した感染症へ学際的アプローチを取ることで、「制御戦略や患者治療に情報を与える」ことができることが認識された<ref>{{Cite journal|year=2012|title=Harnessing evolutionary biology to combat infectious disease|journal=Nature Medicine|volume=18|issue=2|pages=217–20|doi=10.1038/nm.2572|pmc=3712261|pmid=22310693|vauthors=Little TJ, Allen JE, Babayan SA, Matthews KR, Colegrave N}}</ref><ref>{{Cite journal|year=2013|title=Evolutionary epidemiology: preparing for an age of genomic plenty|journal=Phil Trans R Soc B|volume=368|issue=1614|pages=20120193|doi=10.1098/rstb.2012.0193|pmc=3678320|pmid=23382418|vauthors=Pybus OG, Fraser C, Rambaut A}}</ref>。現代の疫学研究では、高度な統計と[[機械学習]]を使用して、{{仮リンク|Predictive modelling|en|Predictive modelling|label=予測モデル}}を作成し、治療効果を定義することができる<ref>{{Cite journal|last1=Wiemken|first1=Timothy L.|last2=Kelley|first2=Robert R.|year=2020|title=Machine Learning in Epidemiology and Health Outcomes Research|journal=Annual Review of Public Health|volume=41|pages=21–36|doi=10.1146/annurev-publhealth-040119-094437|pmid=31577910|doi-access=free}}</ref><ref>{{Cite journal|last1=Bi|first1=Qifang|last2=Goodman|first2=Katherine E.|last3=Kaminsky|first3=Joshua|last4=Lessler|first4=Justin|year=2019|title=What is Machine Learning? A Primer for the Epidemiologist|journal=American Journal of Epidemiology|volume=188|issue=12|pages=2222–2239|doi=10.1093/aje/kwz189|pmid=31509183}}</ref>。多くはヘルスケアや疫学に由来しない幅広い現代のデータソースが、疫学研究に使用できることがますます認識されている<ref>{{Cite book |last=Walker |first=Mark |title=Digital Epidemiology |publisher=Sicklebrook publishing |year=2023 |isbn=9781470920364 |edition=1 |location=Sheffield, U.K.}}</ref>。このようなデジタル疫学には、インターネット検索、携帯電話の記録、医薬品の小売売上などのデータを含めることができる{{要出典|date=November 2023}}。

===日本の疫学===
日本の疫学の祖と言われている[[高木兼寛]]は、[[日本海軍]]に多発した[[脚気]]を白米を中心とする食事にありとする栄養学説を唱えて、それを実験疫学的に証明したことで有名である。航海実験の結果に基づき海軍食に麦飯を導入、結果、1885年には海軍の脚気は激減した<ref name="matsuda">松田 誠 著 「脚気をなくした男 高木兼寛伝」 講談社 ISBN 4-06-204487-0</ref>。これらの功績により1905年(明治38年)に[[男爵]]の爵位を授けられ、後に「麦飯男爵」とも呼ばれたという<ref name="kurasko">倉迫 一朝 著 「病気を診ずして病人を診よ 麦飯男爵 -高木 兼寛の生涯-」 鉱脈社 ISBN 4-906008-31-3</ref>。これは[[1912年]]に[[鈴木梅太郎]]が[[オリザニン]]([[ビタミンB1]])を発見する実に27年も前のことである。


[[北里柴三郎]]は[[破傷風菌]]を純粋培養し、血清療法を確立し[[ペスト菌]]を発見した。
[[北里柴三郎]]は[[破傷風菌]]を純粋培養し、血清療法を確立し[[ペスト菌]]を発見した。


== 手法類 ==
== 研究類 ==
{{Main|研究デザイン}}疫学者は、観察研究から実験的研究まで、幅広い研究デザインを用いており、一般的に記述的研究(時間、場所、人に関するデータの評価を含む)、分析的研究(既知の関連性や仮説化された関係をさらに検討することを目的とする)、実験的研究(治療やその他の介入の臨床試験やコミュニティ試験と同義語としてよく使用される用語)に分類される。観察研究では、疫学者がサイドラインから観察しながら、自然の「成り行き」に任せる。逆に、実験的研究では、疫学者が特定の症例研究に入るすべての要因を制御する<ref name="Epidemiology 2009">"Principles of Epidemiology." Key Concepts in Public Health. London: Sage UK, 2009. Credo Reference. 1 August 2011. Web. 30 September 2012.</ref>。疫学研究は、可能な限り、アルコールや喫煙、[[感染|生物学的因子]]、[[ストレス (生体)|ストレス]]、[[化合物|化学物質]]などの{{仮リンク|Exposure Assessment#Exposure|en|Exposure Assessment#Exposure|label=曝露}}と[[死|死亡率]]や[[病気|罹患率]]との間の偏りのない関係を明らかにすることを目的としている。これらの曝露と転帰との因果関係の特定は、疫学の重要な側面である。現代の疫学者は、[[健康情報学|情報学]]や{{仮リンク|infodemiology|en|infodemiology|label=インフォデミオロジー}}<ref>{{Cite journal|last=Eysenbach|first=Gunther|date=May 2011|title=Infodemiology and Infoveillance|url=https://doi.org/10.1016/j.amepre.2011.02.006|journal=American Journal of Preventive Medicine|volume=40|issue=5|pages=S154–S158|doi=10.1016/j.amepre.2011.02.006|issn=0749-3797|pmid=21521589}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Eysenbach|first=Gunther|date=2009-03-27|title=Infodemiology and Infoveillance: Framework for an Emerging Set of Public Health Informatics Methods to Analyze Search, Communication and Publication Behavior on the Internet|journal=Journal of Medical Internet Research|volume=11|issue=1|pages=e11|language=en|doi=10.2196/jmir.1157|issn=1438-8871|pmc=2762766|pmid=19329408|doi-access=free}}</ref>をツールとして使用している{{要出典|date=June 2022}}<ref>{{Cite journal|last=Wyatt|first=J C|date=2002-11-01|title=Basic concepts in medical informatics|journal=Journal of Epidemiology & Community Health|volume=56|issue=11|pages=808–812|doi=10.1136/jech.56.11.808|pmc=1732047|pmid=12388565}}</ref><ref>{{Cite journal|last1=Mackey|first1=Tim|last2=Baur|first2=Cynthia|last3=Eysenbach|first3=Gunther|date=2022-02-14|title=Advancing Infodemiology in a Digital Intensive Era|journal=JMIR Infodemiology|volume=2|issue=1|pages=e37115|language=EN|doi=10.2196/37115|pmc=9987192|pmid=37113802|doi-access=free}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Mavragani|first=Amaryllis|date=2020-04-28|title=Infodemiology and Infoveillance: Scoping Review|url=https://www.jmir.org/2020/4/e16206|journal=Journal of Medical Internet Research|volume=22|issue=4|pages=e16206|language=EN|doi=10.2196/16206|pmc=7189791|pmid=32310818|doi-access=free}}</ref>。
研究手法には以下のような分類がある。
*[[観察]]型研究として、'''記述疫学'''と'''分析疫学'''がある。症状のある人だけを調査対象とするのが記述疫学であり、症状の有無にかかわらず全ての個体を調査対象して比較するのが分析疫学ということができる<ref name=jijinagomedi>[https://medical.jiji.com/topics/1184 子宮頸がんと副反応、埋もれた調査「名古屋スタディ」監修教授に聞く]時事メディカル2019/06/11 16:45</ref>。


観察研究には、記述的研究と分析的研究の2つの要素がある。記述的観察は、「健康関連状態の発生における誰が、何を、どこで、いつを」に関するものである。一方、分析的観察は、健康関連事象の「いかに」をより扱う<ref name="Epidemiology 2009" />。[[実験疫学]]には、無作為化対照試験(新薬やドラッグテストによく使用される)、フィールド試験(病気にかかる高リスク者を対象に実施)、コミュニティ試験(社会的な病気の研究)の3つのケースタイプがある<ref name="Epidemiology 2009" />。
*[[実験]]型研究として、'''介入研究'''、'''フィールド試験'''、'''地域介入型研究'''がある。


「疫学の三角形」という用語は、アウトブレイクを分析する際の''宿主''、''病原体''、''環境''の交差を表すために使用される{{要出典|date=June 2022}}。
これらの研究分野の関係としては以下のようになる。
:[[記述疫学]];仮説を記述する
::↓
:[[分析疫学]];仮説を分析・検証する
::↓
:[[介入研究]];仮説を(介入実験して)確かめる


=== 記述疫学 ===
=== 症例集積 ===
症例集積とは、単一の患者または同様の診断を受けた少数の患者グループの経験の質的研究、または曝露されていない期間がある病気を引き起こす可能性のある統計的要因を指す場合がある<ref>{{Cite journal|last1=Song|first1=Jae W.|last2=Chung|first2=Kevin C.|date=December 2010|title=Observational Studies: Cohort and Case-Control Studies|url=http://journals.lww.com/00006534-201012000-00058|journal=Plastic and Reconstructive Surgery|volume=126|issue=6|pages=2234–2242|language=en|doi=10.1097/PRS.0b013e3181f44abc|issn=0032-1052|pmc=2998589|pmid=20697313}}</ref>。
記述疫学(descriptive epidemiology)では、結果の頻度や分布を調べることによって、原因と結果に関する特性を調べたり原因の仮説を立てたりする。「○○の原因は××である」と言う仮説を記述することから記述疫学と呼ぶ。因果関係の妥当性を調べるのが疫学であり、この判定のために[[測定学]]を適用する。


前者のタイプの研究は純粋に記述的であり、その疾患の患者の一般集団について推論することはできない。このタイプの研究では、鋭い臨床医が疾患または患者の病歴の異常な特徴を特定し、新しい仮説の定式化につながる可能性がある。この集積のデータを使用して、可能性のある原因因子を調査するための分析的研究を行うことができる。これには、症例対照研究または前向き研究が含まれる。症例対照研究では、その集積の症例と比較可能な疾患のない対照をマッチングさせる。前向き研究では、疾患の自然史を評価するために、症例集積を長期間にわたって追跡調査する<ref>{{Cite book |last1=Hennekens |first1=Charles H. |author2=Julie E. Buring |year=1987 |title=Epidemiology in Medicine |editor=Mayrent, Sherry L. |publisher=Lippincott, Williams and Wilkins |isbn=978-0-316-35636-7 |url-access=registration |url=https://archive.org/details/epidemiologyinme00henn}}</ref>。
*利点
**原因と結果に関する特性のみが分かればよいので、原因が不明であっても対処策を練ることができ、個人の調査だけで成立されることができる。
*欠点
**記述だけでは単なる仮説に過ぎず、信頼性が低い。記述疫学で仮説を立てたら、'''因果関係の妥当性'''を確認する必要がある。
***例: 1981年にアメリカの疾病予防センター(CDC)に原因不明の症状を呈する患者5人が報告された。そこでこの未知の病気について調べてみた所、患者が全員男性同性愛者だったので、「男性同性愛がエイズを起こす」と言う仮説を立てた。しかし実際には異性間性交でも伝染する事が分かり、疾病予防対策は大きく後れを取る事になった。


後者のタイプは、より正式には[[自己対照症例集積研究]]と呼ばれ、個々の患者の追跡期間を曝露期間と非曝露期間に分割し、固定効果ポアソン回帰プロセスを使用して、曝露期間と非曝露期間の特定の転帰の発生率を比較する。この手法は、ワクチン接種による有害反応の研究で広く使用されており、状況によってはコホート研究で得られるのと同等の統計的検出力を提供することが示されている{{要出典|date=June 2022}}。
==== 因果関係の妥当性 ====
{{see also|相関関係と因果関係}}
記述疫学で立てた仮説を分析疫学で分析する前に、その仮説が仮説として妥当であるかを確認する必要がある。妥当性を検証する基準は諸説あり、[[コッホの原則|Kochの4原則]](感染症の病原体を特定する際の指針のひとつ)、Evansの8条件、Hill の基準([[:en:Bradford Hill criteria]])などがある<ref>[http://www.metamedica.com/papers/sansuijin.html]</ref>。ここではSurgeon General(米国公衆衛生局長諮問委員会)の5基準を以下に示す。


=== 症例対照研究 ===
*関連の一致性(consistency)
[[症例対照研究]]は、病気の状態に基づいて対象者を選択する。これは後ろ向き研究である。病気に罹患している個人のグループ(「症例」群)と、病気に罹患していない個人のグループ(「対照」群)が比較される。対照群は、理想的には、症例を生み出したのと同じ集団から来るべきである。症例対照研究では、両群(症例と対照)が遭遇した可能性のある潜在的な曝露を過去に遡って調べる。2×2表が作成され、曝露症例(A)、曝露対照(B)、非曝露症例(C)、非曝露対照(D)が表示される。関連性を測定するために生成される統計量は[[オッズ比]](OR)であり、これは症例の曝露オッズ(A/C)の対照の曝露オッズ(B/D)に対する比、すなわちOR =(AD/BC)である{{要出典|date=March 2023}}。
*:違う国、違う時代でも同じ事が起こるか(人、場所、時間の関連に普遍性があるか)
{| class="wikitable"
*関連の強固性(strength)
!
*:効果が定量的か(量-反応関係が成立するか)
!症例
*関連の特異性(specificity)
!対照
*:原因のある所に結果があり、結果のある所に原因があるか
|-
*関連の時間性(temporality)
|曝露
*:原因→結果の順になっているか
|A
*関連の整合性(coherence)
|B
*:既知の知識体系と矛盾しないか
|-
|非曝露
|C
|D
|}
ORが1より有意に大きい場合、「病気の人は曝露された可能性が高い」という結論になるが、1に近い場合は、曝露と病気は関連している可能性が低い。ORが1よりはるかに小さい場合、曝露は病気の原因における防御因子であることが示唆される。


症例対照研究は通常、[[コホート研究]]よりも迅速かつ費用対効果が高いが、バイアス([[想起バイアス]]や{{仮リンク|selection bias|en|selection bias|label=選択バイアス}}など)の影響を受けやすい。主な課題は、適切な対照群を特定することである。対照群における曝露の分布は、症例を生み出した集団における分布を代表するものでなければならない。これは、元のリスク集団からランダムサンプルを抽出することで達成できる。この結果、対照群には、病気が集団で高い罹患率を示す場合、研究対象の病気の人が含まれる可能性がある{{要出典|date=March 2023}}。
記述疫学で立てた仮説が因果関係の妥当性を満たしていたら、次に分析疫学で解析する。


症例対照研究の大きな欠点は、統計的に有意であるとみなされるためには、95%信頼区間で必要な最小症例数がオッズ比と次の式で関連していることである。
===分析疫学===
{{EBM}}
分析疫学(analytic epidemiology)は、記述疫学で立てた仮説を検証する研究。幾つかの分類方法がある。


: <math>\text{total cases} = A+C = 1.96^2 (1+N) \left(\frac{1}{\ln(OR)}\right)^2 \left(\frac{OR+2\sqrt{OR}+1}{\sqrt{OR}}\right) \approx 15.5 (1+N) \left(\frac{1}{\ln(OR)}\right)^2</math>
*解析の手法による分類
**[[結果対照研究]]:結果が出たか否かで分ける
**[[要因対照研究]]([[コホート研究]]):要因があったか否かで分ける


ここで、Nは症例と対照の比率である。
*結果の調べ方による分類
**前向き研究:これから結果が出るか否かを調べる
**後向き研究:すでに結果が出ているか否かを調べる


オッズ比が1に近づくにつれ、統計的有意性に必要な症例数は無限大に向かって増加し、症例対照研究を低オッズ比ではほとんど役に立たなくする。例えば、オッズ比が1.5で症例=対照の場合、上記の表は次のようになる。
どの方法でも[[交絡]]や[[誤差#系統誤差|系統誤差]]<!--系統誤差には交絡バイアスの他にも沢山ありますが、今ある記事の中で最も充実した記事へパイプしました-->、[[誤差#偶然誤差|偶然誤差]]に注意する。
{| class="wikitable"
!
!症例
!対照
|-
|曝露
|103
|84
|-
|非曝露
|84
|103
|}
オッズ比が1.1の場合:
{| class="wikitable"
!
!症例
!対照
|-
|曝露
|1732
|1652
|-
|非曝露
|1652
|1732
|}


==== 結果対照研究 ====
=== コホート研究 ===
[[コホート研究]]は、曝露状態に基づいて対象者を選択する。研究対象者は、コホート研究の開始時に、調査対象の転帰のリスクがあるはずである。これは通常、コホート研究開始時に疾患がないことを意味する。コホートは、その後の転帰状態を評価するために、時間とともに追跡される。コホート研究の例として、肺がんの発生率を推定するために、喫煙者と非喫煙者のコホートを長期間にわたって調査することが挙げられる。症例対照研究と同じ2×2表が作成される。しかし、生成される推定値は[[相対危険度]](RR)であり、これは曝露群の人の疾患確率''P''<sub>e</sub>=''A''/(''A''+''B'')の非曝露群の人の疾患確率''P<sub>u</sub>''=''C''/(''C''+''D'')に対する比、すなわち''RR''=''P''<sub>e</sub>/''P''<sub>u</sub>である。
結果対照研究(case control study)では、まず、「調べたい結果」が出た人の群と出なかった人の群に分ける。
{| class="wikitable"
!.....
!症例
!非症例
!合計
|-
|曝露
|''A''
|''B''
|(''A''+''B'')
|-
|非曝露
|''C''
|''D''
|(''C''+''D'')
|}
ORと同様に、RRが1より大きい場合は関連性を示しており、「曝露された人は病気になる可能性が高かった」と結論づけることができる。


前向き研究には、症例対照研究に比べて多くの利点がある。RRはORよりも強力な効果の指標である。ORは真の発生率を計算できない病気の状態に基づいて対象者を選択する症例対照研究での単なるRRの推定値だからである。前向き研究では、時間的関係を確立でき、交絡因子をより簡単に制御できる。しかし、コストがかかり、コホートが長期間追跡されるため、追跡調査中に対象者を失う可能性が高くなる。
結果が出なかった人の群は結果の出た人の群の基準となり、これを対照(control)という。「調べたい結果」の原因として考えられるものを'''曝露要因'''といい、曝露要因に影響を受けることを「'''曝露'''される」という。それぞれの群において、曝露されていた人の群と曝露されていなかった人の群に分ける。


コホート研究も、コホート研究と同じ症例数の方程式によって制限されるが、研究集団における基礎発生率が非常に低い場合、必要な症例数は{{分数|1|2}}に減少する。
結果対照研究は「調べたい結果」の出現の有無と、その結果の原因であると考えられる曝露原因への曝露の有無によって作られる四分表を用いて因果関係を調べる研究である。


== 因果推論 ==
*利点
{{Main|因果推論}}疫学は、曝露と健康転帰の関連性を解明するために使用される統計ツールの集合体とみなされることがあるが、この科学のより深い理解は、''因果''関係を発見することである。
**後向き研究が多いため、一般に低いコストで実施可能であり、個人での研究が可能である。
**[[誤差#系統誤差|情報系統誤差]]<!--系統誤差には情報バイアスの他にも沢山ありますが、今ある記事の中で最も充実した記事へパイプしました-->が入りにくい。
**稀な現象を扱える。


「[[相関関係と因果関係|相関は因果関係を意味しない]]」は、疫学文献の多くに共通するテーマである。疫学者にとって、重要なのは[[推論]]という用語である。2つの変数間の相関、または少なくとも関連は、一方の変数がもう一方の変数を引き起こすと推論するための必要条件であるが、十分条件ではない。疫学者は、収集されたデータと幅広い生物医学的および心理社会的理論を反復的な方法で使用して、理論を生成または拡張し、仮説を検証し、どの関係が因果関係にあるのか、そしてどのようにして因果関係にあるのかについて、教育を受け、情報に基づいた主張を行う。
*欠点
**[[誤差#系統誤差|選択系統誤差]]<!--系統誤差には選択バイアスの他にも沢山ありますが、今ある記事の中で最も充実した記事へパイプしました-->が入りやすい。したがって、観察対象は母集団の平均から偏りの無いように選ぶ必要がある。


疫学者は、「'''一つの原因 - 一つの結果'''」という理解は単純化された誤った信念であることを強調する<ref>{{Cite journal|last=Woodward|first=James|date=2010|title=Causation in biology: stability, specificity, and the choice of levels of explanation.|url=http://philsci-archive.pitt.edu/4813/1/09.doc|journal=Biology & Philosophy|volume=25|issue=3|pages=287–318|doi=10.1007/s10539-010-9200-z|s2cid=42625229|via=SpringerLink}}</ref>。ほとんどの転帰は、病気であれ死であれ、多くの構成要因からなる連鎖または網によって引き起こされる<ref>{{Cite book |title=Modern Epidemiology |last=Rothman |first=Kenneth J. |publisher=Little, Brown and Company |year=1986 |isbn=978-0-316-75776-8 |location=Boston/Toronto |url-access=registration |url=https://archive.org/details/modernepidemiolo0000roth}}</ref>。原因は、必要条件、十分条件、確率的条件として区別できる。必要条件を特定して制御できれば(例えば、病原体に対する抗体、外傷におけるエネルギー)、有害な結果を回避できる(Robertson, 2015)。病気に関連する多因子性を概念化するために定期的に使用されるツールの1つは、{{仮リンク|causal pie model|en|causal pie model|label=因果パイモデル}}である<ref>{{Cite book |last=Rothman |first=Kenneth J. |url=https://www.worldcat.org/oclc/750986180 |title=Epidemiology : An introduction |date=2012 |publisher=Oxford University Press |isbn=978-0-19-975455-7 |edition=2nd |location=New York, NY |pages=24 |oclc=750986180}}</ref>。
==== 要因対照研究 (コホート研究) ====
{{See|コホート研究|相対危険度|寄与危険度|寄与危険度百分率}}
要因対照研究(factor control study)は、要因があった人(曝露群に属する人)と要因が無かった人(非曝露群に属する人)を同じ数だけ集めてきて一定期間観察し、それぞれの中でいくつの個体に「調べたい結果」が出たかを調べる研究である。特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究である。


=== ブラッドフォード・ヒル基準 ===
*利点
{{Main|ブラッドフォード・ヒル基準}}1965年、{{仮リンク|Austin Bradford Hill|en|Austin Bradford Hill|label=オースティン・ブラッドフォード・ヒル}}は、因果関係の証拠を評価するのに役立つ一連の考慮事項を提案した<ref name="bh65">{{Cite journal|last=Hill|first=Austin Bradford|year=1965|title=The Environment and Disease: Association or Causation?|url=http://www.edwardtufte.com/tufte/hill|journal={{仮リンク|Proceedings of the Royal Society of Medicine|en|Proceedings of the Royal Society of Medicine|label=王立医学協会会報}}|volume=58|issue=5|pages=295–300|doi=10.1177/003591576505800503|pmc=1898525|pmid=14283879}}</ref>。これは、一般に「{{仮リンク|Bradford Hill criteria|en|Bradford Hill criteria|label=ブラッドフォード・ヒル基準}}」として知られるようになった。著者の明確な意図とは対照的に、ヒルの考慮事項は現在、因果関係を評価するために実施すべきチェックリストとして教えられることがある<ref>{{Cite journal|last1=Phillips|first1=Carl V.|date=October 2004|title=The missed lessons of Sir Austin Bradford Hill|journal=Epidemiologic Perspectives and Innovations|volume=1|issue=3|pages=3|doi=10.1186/1742-5573-1-3|pmc=524370|pmid=15507128|author2=Karen J. Goodman|doi-access=free}}</ref>。ヒル自身は、「私の9つの観点のどれも、因果関係の仮説に対する議論の余地のない証拠を提供することはできないし、どれも''不可欠''とは言えない」と述べている<ref name="bh65" />。
**[[誤差#系統誤差|選択系統誤差]]<!--系統誤差には選択バイアスの他にも沢山ありますが、今ある記事の中で最も充実した記事へパイプしました-->が入りにくい。


# '''関連の強さ''': 小さな関連では因果効果がないとは限らないが、関連が大きいほど、因果関係である可能性が高い<ref name="bh65" />
*欠点
# '''データの一貫性''': 異なる場所で、異なるサンプルを使って、異なる人が一貫した結果を観察することは、効果の可能性を強める<ref name="bh65" />
**[[誤差#系統誤差|情報系統誤差]]<!--系統誤差には情報バイアスの他にも沢山ありますが、今ある記事の中で最も充実した記事へパイプしました-->が入りやすい。人年法を用いたり、結果情報に誤りが無いかをしっかりとチェックしなくてはならない。
# '''特異性''': 非常に特定の集団が、特定の部位で、他に考えられる説明のない特定の病気を発症した場合、因果関係の可能性が高い。ある因子とある効果の関連が特異的であるほど、因果関係の確率は大きくなる<ref name="bh65" />
**コストがかかる。
# '''時間性''': 原因の後に結果が起こらなければならない(そして、原因と予想される結果の間に予想される遅れがある場合、その遅れの後に結果が起こらなければならない)<ref name="bh65" />
**稀な現象は扱えない。稀な現象に関しては[[#結果対照研究|結果対照研究]]を行うしかない。
# '''生物学的勾配''': 一般に、曝露量が多いほど、効果の発生率が高くなるはずである。ただし、場合によっては、因子の存在だけで効果が引き起こされることがある。他の場合では、逆の比例が観察される。すなわち、曝露量が多いほど、発生率が低くなる<ref name="bh65" />
# '''妥当性''': 原因と結果の間に妥当なメカニズムがあることは有益である(ただし、ヒルはメカニズムの知識は現在の知識によって制限されると指摘した)<ref name="bh65" />
# '''整合性''': 疫学的所見と実験的所見の整合性は、効果の可能性を高める。ただし、ヒルは「そのような[実験的]証拠の欠如は、関連性における疫学的効果を無効にすることはできない」と指摘した<ref name="bh65" />
# '''実験''': 「時折、実験的証拠に訴えることが可能である」<ref name="bh65" />
# '''類推''': 類似した因子の効果を考慮することができる<ref name="bh65" />


=== 法的解釈 ===
要因対照研究はさらに以下の二つに分けられる。
[[疫学|疫学研究]]は、ある因子が特定の場合に効果を引き起こした可能性を証明することはできるが、実際に引き起こしたことを証明することはできない。
{{Quote|疫学は、集団における疾病の{{仮リンク|Incidence (epidemiology)|en|Incidence (epidemiology)|label=発生率}}に関心があり、個人の疾病の原因という問題には対処しない。この問題は、時に特異的因果関係と呼ばれ、疫学の科学の領域を超えている。疫学は、ある因子と疾病の関係が因果関係である(一般的因果関係)と推論され、その因子に起因する超過リスクの大きさが決定された時点で限界に達する。つまり、疫学は、ある因子が疾病を引き起こす可能性があるかどうかを扱うのであって、ある因子が特定の原告の疾病を引き起こしたかどうかを扱うのではない<ref name="green">{{Cite book |last1= Green |first1= Michael D. |author2= D. Michal Freedman, and Leon Gordis |title= Reference Guide on Epidemiology |publisher= Federal Judicial Centre |url= http://www.fjc.gov/public/pdf.nsf/lookup/sciman06.pdf/$file/sciman06.pdf |access-date= 3 February 2008 |url-status= dead |archive-url= https://web.archive.org/web/20080227143925/http://www.fjc.gov/public/pdf.nsf/lookup/sciman06.pdf/$file/sciman06.pdf |archive-date= 27 February 2008 |df= dmy-all }}</ref>。}}
アメリカ合衆国の法律では、疫学だけでは、因果関係が一般に存在しないことを証明することはできない。逆に、個々のケースにおいて、[[確率]]のバランスに基づいて、因果関係が存在するという推論を正当化するために、米国の裁判所によって(状況によっては)考慮される可能性がある。


法医学疫学の細分野は、因果関係が争われている、または不明確な個人または個人のグループにおける疾病または傷害の特定の因果関係の調査を目的としており、法的環境での提示を目的としている。
*前向き要因対照研究(prospective factor control study)


== 集団ベースの健康管理 ==
*後向き要因対照研究(retro-spective factor control study)
疫学的実践と疫学的分析の結果は、新たに登場している集団ベースの健康管理の枠組みに重要な貢献をしている。
*:カルテなどの過去のデータを元に要因があったグループ(曝露群)となかったグループ(非曝露群)に分けて行う要因対照研究である。過去から現在へ向かって「前向き」に分析していることから、「後向き」という語句による誤解を避ける目的で、英語ではretro-spectiveの代わりにhistoricalやnonconcurrentという語句を用いることが多い。
**利点
***要因対照研究だが、コストも時間もかからない。
**欠点
***データとして残っていない要因については研究できない。


集団ベースの健康管理には、以下の能力が含まれる。
=== 介入研究 ===
介入研究(intervention study)は、観察集団に対して、原因だと考えられるものを人為的に加減して、結果の発生率を調べる研究である。
*利点
**結果の説得性が高い
*欠点
**時間・労力がかかる
{{see also|臨床研究#介入研究}}


* 対象集団の健康状態と健康ニーズを評価すること。
== 医学への応用 ==
* その集団の健康を改善するために設計された介入を実施し、評価すること。
医学に応用される場合は、明確に規定された人間集団の中で出現する医学上の事象を、その頻度、影響、[[分布]]を明らかにして、それに対する有効な対策を研究する。疫学では直接の病因を明らかにしない。
* その集団のメンバーに、コミュニティの文化的、政策的、健康資源的価値観と一致する方法で、効率的かつ効果的にケアを提供すること。


現代の集団ベースの健康管理は複雑であり、疫学的実践と分析を中核とする多様なスキル(医学、政治、技術、数学など)が必要であり、それらが管理科学と統合されることで、集団に効率的かつ効果的な医療と健康指導が提供される。このタスクには、健康リスク要因、発生率、有病率、死亡率の統計(疫学分析から導かれる)を、健康システムが現在の集団の健康問題にどのように対応するかだけでなく、将来起こりうる集団の健康問題により良く対応できるようにするための管理指標に変換する、現代のリスク管理アプローチの先見性ある能力が必要である<ref>{{Cite web |title=Measuring Health and Disease I: Introduction to Epidemiology |url=http://open.umich.edu/education/med/oernetwork/public-health/epidemiology/intro-epidemiology/2010 |access-date=16 December 2011 |author1=Neil Myburgh |author2=Debra Jackson |url-status=dead |archive-url=https://web.archive.org/web/20110801204104/https://open.umich.edu/education/med/oernetwork/public-health/epidemiology/intro-epidemiology/2010 |archive-date=1 August 2011}}</ref>。
* 頻度に関しては、主に有病割合と発生率、死亡率を調査する。
** ある一定時点で[[母集団]]の中で疾病している人の割合を[[有病割合]]という。疾病の静的な頻度を表す。
** 有病割合は発生率と[[平均有病期間]]の積で表される。{{要出典|date=2010年2月}}
** 新たに罹患する人の割合を'''発生率'''といい、単位は"person/year"。疾病の動的な頻度をあらわす。
** '''死亡率'''には、死亡数を人口で除した[[粗死亡率]]ではなく[[年齢調整死亡率]]を用いる。


疫学的実践の成果を活用した集団ベースの健康管理を利用している組織の例としては、カナダ癌管理戦略、カナダ保健省タバコ規制プログラム、リック・ハンセン財団、カナダタバコ規制研究イニシアチブなどがある<ref>{{Cite conference|last1=Smetanin|first1=P.|author2=P. Kobak|title=Interdisciplinary Cancer Risk Management: Canadian Life and Economic Impacts|url=http://www.riskanalytica.com/sites/riskanalytica.com/files/Canadian%20Cancer%20Abstract%2010%20June%202005.pdf|conference=1st International Cancer Control Congress|date=October 2005|access-date=2 August 2013|archive-date=2 February 2014|archive-url=https://web.archive.org/web/20140202111313/http://www.riskanalytica.com/sites/riskanalytica.com/files/Canadian%20Cancer%20Abstract%2010%20June%202005.pdf|url-status=dead}}</ref><ref>{{Cite conference|last1=Smetanin|first1=P.|author2=P. Kobak|title=A Population-Based Risk Management Framework for Cancer Control|conference=The International Union Against Cancer Conference|date=July 2006|conference-url=http://2006.confex.com/uicc/uicc/techprogram/P7935.HTM|url=http://www.riskanalytica.com/?q=node/73|format=PDF|url-status=dead|archive-url=https://web.archive.org/web/20140202111153/http://www.riskanalytica.com/?q=node%2F73|archive-date=2 February 2014|df=dmy-all}}</ref><ref>{{Cite conference|last1=Smetanin|first1=P.|author2=P. Kobak|title=Selected Canadian Life and Economic Forecast Impacts of Lung Cancer|conference=11th World Conference on Lung Cancer|date=July 2005|url=http://www.riskanalytica.com/?q=node/70|format=PDF|url-status=dead|archive-url=https://web.archive.org/web/20140202111300/http://www.riskanalytica.com/?q=node%2F70|archive-date=2 February 2014|df=dmy-all}}</ref>。
=== 記述疫学 ===
病気の頻度や分布を調べる事により、病因と病気に関する特性を調べたり、病因の仮説を立てたりする。


これらの組織は、それぞれ「Life at Risk」と呼ばれる集団ベースの健康管理の枠組みを使用しており、疫学的な定量分析を人口統計、保健機関の運営研究、経済学と組み合わせることで、以下のことを行っている。
==== 因果関係の妥当性 ====
*関連の一致性(consistency)
**例1:水道水を飲みさえすればAさんでもBさんでもコレラにかかるか
**例2:男性同性愛者でありさえすればAさんでもBさんでもエイズにかかるか
*関連の強固性(strength)
**例1:水道水を飲めば飲むほどコレラの[[罹患率]]が上がるか
**例2:同性愛行為をすればするほどエイズの[[罹患率]]が上がるか
*関連の特異性(specificity)
**例1:水道水を飲んだ人がコレラにかかり、かつ、コレラ患者は水道水を飲んでいるか
**例2:男性同性愛者はエイズにかかり、かつ、エイズに罹った人は男性同性愛者か
*関連の時間性(temporality)
**例1:水道水→コレラの順になっているか
**:コレラにかかった後に水道水を飲んだだけではないのか
**例2:男性同性愛→エイズの順になっているか
**:エイズにかかってから男性同性愛者になっただけではないのか
*関連の整合性(coherence)
**例1:水道水やコレラに関するこれまでの研究と本仮説との間に整合性はあるか
**例2:男性同性愛やエイズに関するこれまでの研究と本仮説との間に整合性はあるか


* 集団生命影響シミュレーション: 新規疾病症例、有病率、早死、障害や死亡による潜在的な生命年数の損失に関して、疾病が集団に及ぼす将来の潜在的影響を測定する。
=== 分析疫学 ===
* 労働力生命影響シミュレーション: 新規疾病症例、有病率、早死、障害や死亡による潜在的な生命年数の損失に関して、疾病が労働力に及ぼす将来の潜在的影響を測定する。
==== 患者対照研究(症例対照研究) ====
* 疾病の経済的影響シミュレーション: 民間部門の可処分所得(賃金、企業利益、民間医療費)と公共部門の可処分所得(個人所得税、法人所得税、消費税、[[公費負担医療|公的資金による医療費]])に対する疾病の将来の潜在的影響を測定する。
{{Main|症例対照研究}}
医学における結果対照研究を'''患者対照研究'''という。'''[[症例対照研究]]''' (case-control study、ケースコントロール研究)や結果対照研究ともいう。
まず、一つの病気について、患者と患者ではない人を集めてきて2つの群を作る。
さらにそれぞれの群を曝露されたか否かで2つに分け、四分表を用いて病因と病気の因果関係を調べる。


== 応用疫学 ==
{| class="wikitable" style="margin: 0 auto"
応用疫学とは、疫学的手法を用いて集団の健康を保護または改善する実践のことである。応用疫学には、伝染性疾患および非伝染性疾患のアウトブレイク、死亡率および罹患率、栄養状態などの健康指標の調査が含まれ、その目的は、適切な政策や疾病対策を実施できる人々に結果を伝達することである。
|-
|||患者||対照
|-
|△△に曝露された||style="text-align: right;"| 人||style="text-align: right;"| 人
|-
|△△に曝露されていない||style="text-align: right;"| 人||style="text-align: right;"| 人
|-
|}


==== 要因対照研究 ====
=== 人道的な状況 ===
人道的危機の状況下では、疾病やその他の健康因子の監視と報告がますます困難になるにつれて、データを報告するために使用される方法論が損なわれる。ある研究では、人道的な状況から抽出された栄養調査の半数以下(42.4%)が栄養不良の有病率を正しく計算し、調査の3分の1(35.3%)のみが質の基準を満たしていた。死亡率調査では、質の基準を満たしたのはわずか3.2%であった。栄養状態と死亡率は危機の深刻度を示す指標となるため、これらの健康因子の追跡と報告は非常に重要である。
病因があった人達(曝露群)と病因が無かった人達(非曝露群)を同数だけ集めてきて、それぞれの中で何人が病気であるか、もしくは、将来病気になるかを調べる研究。将来に渡って、追跡調査をする前向き研究(prospective study)の場合を、特に[[コホート研究]](cohort study)と言う。医学におけるコホート研究では、大勢の人を長年追跡調査するため、国家プロジェクトとなる。


重要な登録簿は通常、データを収集する最も効果的な方法であるが、人道的な状況下では、これらの登録簿が存在しなかったり、信頼できなかったり、アクセスできなかったりする可能性がある。そのため、死亡率は、前向きな人口動態監視または後ろ向きな死亡率調査のいずれかを使用して不正確に測定されることが多い。前向きな人口動態監視には多くの人力が必要であり、広範囲に広がった集団に実施するのが難しい。後ろ向きの死亡率調査は、選択バイアスと報告バイアスの影響を受けやすい。他の方法も開発されているが、まだ一般的な慣行ではない<ref>WHO, [https://www.who.int/topics/epidemiology/en "Health topics: Epidemiology."] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20200509180559/http://www9.who.int/topics/epidemiology/en/|date=9 May 2020}} Accessed: 30 October 2017.</ref><ref>Miquel Porta. A Dictionary of Epidemiology. http://global.oup.com/academic/product/a-dictionary-of-epidemiology-9780199976737?cc=us&lang=en {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20170711233713/https://global.oup.com/academic/product/a-dictionary-of-epidemiology-9780199976737?cc=us&lang=en|date=11 July 2017}} 6th edition, New York, 2014 Oxford University Press {{ISBN2|978-0-19-997673-7}} Accessed: 30 October 2017.</ref><ref>Prudhon, C & Spiegel, P. "A review of methodology and analysis of nutrition and mortality surveys conducted in humanitarian emergencies from October 1993 to April 2004" Emerging Themes in Epidemiology 2007, 4:10. http://www.ete-online.com/content/4/1/10 {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20151023194726/http://www.ete-online.com/content/4/1/10|date=23 October 2015}} Accessed: 30 October 2017.</ref><ref>Roberts, B et al. "A new method to estimate mortality in crisis-affected and resource-poor settings: validation study." ''International Journal of Epidemiology'' 2010; 39:1584–96. Accessed: 30 October 2017.</ref>。
*利点
**[[相対危険度]]を計算できる
**[[寄与危険度]]を計算できる
**[[寄与危険度百分率]]を計算できる
**[[誤差#系統誤差|選択系統誤差]]<!--系統誤差には選択バイアスの他にも沢山ありますが、今ある記事の中で最も充実した記事へパイプしました-->が入りにくい


== 特徴・妥当性・バイアス ==
*欠点
**[[誤差#系統誤差|情報系統誤差]]<!--系統誤差には情報バイアスの他にも沢山ありますが、今ある記事の中で最も充実した記事へパイプしました-->が入りやすい
**コストがかかる(国家的プロジェクトなどとして行われる)
**稀な疾患は扱えない(稀な疾患に対しては[[#患者対照研究|患者対照研究]]を行う)


=== 臨床試験 ===
=== 流行の波 ===
流行における波の概念は、特に[[感染|伝染性疾患]]に影響を与える。「流行の波」という用語の実用的な定義は、次の2つの重要な特徴に基づいている。1)上昇または下降のトレンドの期間を含むこと、2)これらの増加または減少は、軽微な変動や報告エラーと区別するために、かなりの大きさで長期間持続する必要がある<ref name="Zhang">{{Cite journal|author=Zhang Stephen X|date=2021|title=When is an epidemic an epidemic?|journal=Risk Management and Healthcare Policy|volume=14|pages=3775–3782|doi=10.2147/RMHP.S326051|pmc=8448159|pmid=34548826|author2=Marioli Francisco Arroyo|author3=Gao Renfei|author4=Wang Senhu|doi-access=free}}</ref>。一貫した科学的定義を使用する目的は、COVID-19パンデミックの進行について伝達したり理解したりするために使用できる一貫した言語を提供することであり、これは医療機関や政策立案者が資源の計画と配分に役立つであろう。
{{See also|治験}}
医学における介入研究を'''臨床試験'''という。臨床試験の中でも、新薬の承認、あるいは既存薬の新たな適用の申請のために、製薬企業が行う臨床試験を[[治験]]と言う。企業においては[[臨床開発部門]]がこれを執り行う。日本においては[[医師]]主導型臨床試験の実施が少なく、[[臨床研究]]の不足を指摘されていたが、2002年改正[[医薬品医療機器等法|薬事法]]が翌年7月30日より[[施行]]さると、医師や医療機関が主体となって治験を行うことができるようになった。なお、臨床試験は全て[[人体実験|人間を対象とする実験]]である。動物による実験を臨床試験以前の基礎研究という。


=== 妥当性 ===
*第I相試験:健常者を対象に薬の安全性と[[薬物動態]]を検討する。[[抗癌剤]]など、明らかに有害な薬では例外的に患者を対象とする。
疫学の異なる分野では、妥当性のレベルが異なる。結果の妥当性を評価する一つの方法は、偽陽性(正しくない主張効果)と偽陰性(真の効果を支持しない研究)の比率である。{{仮リンク|genetic epidemiology|en|genetic epidemiology|label=遺伝疫学}}では、候補遺伝子研究は、偽陰性1件につき100件を超える偽陽性結果を生み出す可能性がある。対照的に、ゲノムワイド関連解析では、100件以上の偽陰性に対して偽陽性はわずか1件程度と、ほぼ逆の結果が得られている<ref name="Ioannides2011">{{Cite journal|last1=Ioannidis|first1=J. P. A.|last2=Tarone|first2=R.|last3=McLaughlin|first3=J. K.|year=2011|title=The False-positive to False-negative Ratio in Epidemiologic Studies|journal=Epidemiology|volume=22|issue=4|pages=450–56|doi=10.1097/EDE.0b013e31821b506e|pmid=21490505|s2cid=42756884|doi-access=free}}</ref>。遺伝疫学では、厳格な基準が採用されるようになったため、この比率は時間とともに改善されている。対照的に、他の疫学分野では、このような厳格な報告が要求されておらず、その結果、信頼性がはるかに低くなっている<ref name="Ioannides2011" />。
*第II相試験:患者を対象とし、薬物に効果があるかということを評価する。
*第III相試験:従来の薬より効果があるかどうかを調べる。この段階で[[無作為化]]と[[盲検法]]が必要となる。
*第IV相試験:新薬発売後、一般臨床医から有効性、安全性に関する情報を収集する。


=== 臨床疫学 ===
=== ランダム誤差 ===
ランダム誤差は、サンプリングの変動により真の値の周りで変動することによって生じる。ランダム誤差はまさにランダムである。データの収集、コーディング、転送、分析の過程で発生する可能性がある。ランダム誤差の例としては、質問の言い回しが悪い、特定の回答者の個々の回答の解釈に誤解がある、コーディング中のタイプミスなどがある。ランダム誤差は、一時的で一貫性のない方法で測定に影響を与え、ランダム誤差を修正することは不可能である。すべてのサンプリング手順にはランダム誤差、つまり{{仮リンク|sampling error|en|sampling error|label=サンプリング誤差}}がある{{要出典|date=July 2023}}。
臨床医学で遭遇する問題に対して疫学を適用することを臨床疫学という。個々の患者に対して臨床的な予測を行う目的で、臨床的なパラメータを調べる学問である。[[古典物理学]]の運動方程式のような確定的な予測ではなく、確率による評価が利用される。


疫学的変数の精度は、ランダム誤差の指標である。精度はランダム誤差と逆の関係にあるため、ランダム誤差を減らすことは精度を上げることになる。相対リスク推定値の精度を示すために、信頼区間が計算される。信頼区間が狭いほど、相対リスク推定値の精度が高くなる。
* [[根拠に基づく医療]](EBM)
* スクリーニング検査
* [[臨床検査]]
* [[決断分析]]


[[疫学|疫学研究]]におけるランダム誤差を減らすには、基本的に2つの方法がある。1つ目は、研究のサンプルサイズを増やすことである。つまり、研究対象者を増やすことである。2つ目は、研究における測定の変動を減らすことである。これは、より精度の高い測定機器を使用するか、測定回数を増やすことで達成できるかもしれない。
== 交通事故の疫学 ==
交通事故の発生原因を分析し、発生防止に役立てる学問{{要出典|date=2023年7月}} 。


ただし、サンプルサイズや測定回数を増やしたり、より精度の高い測定機器を購入したりすると、通常、研究のコストが増加することに注意が必要である。十分な精度の必要性と研究コストの実際的な問題との間には、通常、不安定なバランスがある。
== ビジネスの疫学 ==
商品の販売事由を分析し、販売促進に役立てる学問{{要出典|date=2023年7月}} 。しかし、この分野において根本的な意味で疫学はほとんど用をなさない。疫学は自然科学であるため[[再現性]]のある現象を対象とするが、商品の販売という社会現象において[[再現性]]を見いだすことは極めて困難だからである {{要出典|date=2023年7月}} 。


== 脚注 ==
=== 系統誤差 ===
系統誤差またはバイアスは、サンプリングの変動以外の原因により、(集団における)真の値と(研究における)観測値に差がある場合に発生する。系統誤差の例としては、使用している{{仮リンク|pulse oximeter|en|pulse oximeter|label=パルスオキシメーター}}が正しく設定されていないことに気づかず、測定のたびに真の値に2ポイント追加されるような場合である。測定機器は[[正確度と精度|精密かもしれないが正確ではない]]可能性がある。誤差はすべての事例で発生するため、系統的である。その データに基づいて引き出された結論は、やはり間違っているだろう。しかし、その誤差は将来再現可能である(例えば、同じ誤設定の機器を使用することで)。
{{脚注ヘルプ}}
<references />


特定の質問に対する''すべての''回答に影響を与えるコーディングの誤りは、系統誤差の別の例である。
== 関連書籍 ==

研究の妥当性は、系統誤差の程度に依存する。妥当性は通常、2つの要素に分けられる。

* {{仮リンク|Internal validity|en|Internal validity|label=内的妥当性}}は、曝露、疾病、およびこれらの変数間の関連性を含む測定の誤差量に依存する。内的妥当性が高いということは、測定の誤差が少ないことを意味し、少なくとも研究対象者に関する限り、推論を導き出すことができることを示唆している。
* {{仮リンク|External validity|en|External validity|label=外的妥当性}}は、研究結果をサンプルが抽出された集団(またはその集団を超えてより普遍的な記述)に一般化するプロセスに関係する。これには、一般化に関連する(または無関係な)条件を理解する必要がある。内的妥当性は明らかに外的妥当性の前提条件である。

==== 選択バイアス ====
{{仮リンク|Selection bias|en|Selection bias|label=選択バイアス}}は、曝露と関心のある転帰の両方に関連する第3の測定されない変数の結果として、研究対象が選択されるか、研究の一部になる場合に発生する<ref name="Hernán2004">{{Cite journal|last1=Hernán|first1=M. A.|last2=Hernández-Díaz|first2=S.|last3=Robins|first3=J. M.|year=2004|title=A structural approach to selection bias|journal=Epidemiology|volume=15|issue=5|pages=615–25|doi=10.1097/01.ede.0000135174.63482.43|pmid=15308962|s2cid=1373077|doi-access=free}}</ref>。例えば、喫煙者と非喫煙者では、研究参加率が異なる傾向があることが繰り返し指摘されている。(サケットDは、非喫煙者の85%と喫煙者の67%が郵送された質問票を返送したセルツァーらの例を引用している)<ref name="Sackett D. Bias in analytic research. J Chron Dis 1979; vol. 32:51–63.">[http://www.epidemiology.ch/history/PDF%20bg/Sackett%20DL%201979%20bias%20in%20analytic%20research.pdf] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20170829193522/http://epidemiology.ch/history/PDF%20bg/Sackett%20DL%201979%20bias%20in%20analytic%20research.pdf|date=29 August 2017}} 24</ref>。応答におけるこのような違いが、2つの応答グループ間の転帰の系統的な差とも関連していない場合、バイアスにはつながらないことに注意することが重要である。

==== 情報バイアス ====
{{仮リンク|Information bias (epidemiology)|en|Information bias (epidemiology)|label=情報バイアス}}は、変数の評価における系統的誤差から生じるバイアスである<ref name="Rothman2002">{{Cite book |last1=Rothman |first1=K. |title=Epidemiology: An Introduction |url=https://archive.org/details/epidemiology00kenn |url-access=registration |date=2002 |publisher=[[オックスフォード大学出版局|Oxford University Press]] |location=Oxford |isbn=978-0195135541}}</ref>。この例として、思い出しバイアスがある。典型的な例は、胎児の健康に対する特定の曝露の影響を調べた研究についてのサケットの議論で再び示されている。「最近の妊娠が胎児死亡または奇形(症例)に終わった母親と、妊娠が正常に終わった一致した母親のグループ(対照)に質問したところ、前者の28%、後者の20%のみが、以前の前向きインタビューや他の健康記録でも裏付けられない薬物への曝露を報告した」<ref name="Sackett D. Bias in analytic research. J Chron Dis 1979; vol. 32:51–63." />。この例では、流産を経験した女性は、以前の曝露をより良く思い出し、報告する傾向があるように見えたため、おそらく思い出しバイアスが発生したのだろう。

交絡因子 [[交絡]]は伝統的に、交絡因子と呼ばれる無関係な要因の効果の共発生や混合から生じるバイアスと定義されてきた<ref name="Rothman2002" /><ref name="Greenland">{{Cite journal|year=2001|title=Confounding in Health Research|journal=Annu. Rev. Public Health|volume=22|pages=189–212|doi=10.1146/annurev.publhealth.22.1.189|pmid=11274518|vauthors=Greenland S, Morgenstern H|s2cid=4647751|doi-access=}}</ref>。より最近の交絡の定義では、''反事実的''効果の概念を導入している<ref name="Greenland" />。この見方によれば、関心のある転帰、例えばY=1(Y=0とは対照的に)が、完全に曝露された(つまり、集団のすべての単位について曝露''X''=1)特定の集団Aで観察された場合、このイベントのリスクは''R''<sub>A1</sub>になる。反事実的または観察されないリスク''R''<sub>A0</sub>は、同じ個人が曝露されていなかった場合(つまり、集団のすべての単位について''X''&nbsp;=&nbsp;0)に観察されたであろうリスクに対応する。したがって、曝露の真の効果は、''R''<sub>A1</sub>−''R''<sub>A0</sub>(リスク差に興味がある場合)または''R''<sub>A1</sub>/''R''<sub>A0</sub>(相対リスクに興味がある場合)である。反事実的リスク''R''<sub>A0</sub>は観察不可能であるため、第2の集団Bを使用して近似し、実際に次の関係を測定する。''R''<sub>A1</sub>−''R''<sub>B0</sub>または''R''<sub>A1</sub>/''R''<sub>B0</sub>。この状況では、''R''<sub>A0</sub>≠''R''<sub>B0</sub>のとき、交絡が発生する<ref name="Greenland" />(注:例では二値の転帰変数と曝露変数を想定している)。

一部の疫学者は、選択バイアスや情報バイアスとは異なり、交絡が実際の因果効果から生じるため、交絡をバイアスの一般的な分類とは別に考えることを好む<ref name="Hernán2004" />。

== 職業 ==
学部レベルでは、疫学を学習コースとして提供している[[大学]]は少ない。注目すべき学部プログラムは[[ジョンズ・ホプキンズ大学]]にある。ここでは、公衆衛生を専攻する学生は、4年次に[[ブルームバーグ公衆衛生大学院]]で疫学を含む大学院レベルのコースを受講できる<ref>{{Cite web |title=Public Health Studies |url=http://krieger.jhu.edu/publichealth/ |website=Public Health Studies at Johns Hopkins |date=6 June 2013 |access-date=13 April 2017}}</ref>。

疫学研究は、医師などの臨床訓練を受けた専門家を含む様々な分野の個人によって行われているが、[[Master of Public Health|公衆衛生修士]](MPH)、[[修士(理学)|疫学修士]](MSc)、{{仮リンク|Doctor of Public Health|en|Doctor of Public Health|label=公衆衛生博士}}(DrPH)、[[Pharm.D.|薬学博士]](PharmD)、[[Doctor of Philosophy|哲学博士]](PhD)、[[博士(理学)|理学博士]](ScD)などの修士課程または博士課程を通じて正式な訓練を受けることができる。他の多くの大学院プログラム、例えば、{{仮リンク|Doctor of Social Work|en|Doctor of Social Work|label=ソーシャルワーク博士}}(DSW)、臨床実践博士(DClinP)、{{仮リンク|Doctor of Podiatric Medicine|en|Doctor of Podiatric Medicine|label=足病医学博士}}(DPM)、[[獣医師|獣医学博士]](DVM)、{{仮リンク|Doctor of Nursing Practice|en|Doctor of Nursing Practice|label=看護実践博士}}(DNP)、{{仮リンク|Doctor of Physical Therapy|en|Doctor of Physical Therapy|label=理学療法博士}}(DPT)、または臨床訓練を受けた医師の場合、{{仮リンク|Doctor of Medicine|en|Doctor of Medicine|label=医学博士}}(MD)または{{仮リンク|Bachelor of Medicine and Surgery|en|Bachelor of Medicine and Surgery|label=医学士}}(MBBSまたはMBChB)および{{仮リンク|Doctor of Osteopathic Medicine|en|Doctor of Osteopathic Medicine|label=オステオパシー医学博士}}(DO)には、疫学研究または関連トピックのある程度の訓練が含まれているが、この訓練は一般に、疫学または公衆衛生に特化した訓練プログラムで提供されるものよりもかなり少ない。疫学と医学の強い歴史的関係を反映して、正式な訓練プログラムは、公衆衛生学部または医学部のいずれかに設置される場合がある。

公衆衛生/健康保護の実務者として、疫学者は様々な環境で働いている。一部の疫学者は「現場」で働いている。つまり、コミュニティ、一般的には公衆衛生/健康保護サービスで働き、疾病の発生を調査し、撲滅する最前線にいることが多い。他には、非営利団体、大学、病院、州や地方の保健局などの大きな政府機関、各種保健省、[[国境なき医師団]]、[[アメリカ疾病予防管理センター|疾病対策予防センター]](CDC)、{{仮リンク|Health Protection Agency|en|Health Protection Agency|label=保健保護庁}}、[[世界保健機関]](WHO)、{{仮リンク|Public Health Agency of Canada|en|Public Health Agency of Canada|label=カナダ公衆衛生局}}などで働いている。疫学者は、製薬会社や医療機器会社のマーケティングリサーチや臨床開発などのグループで、営利団体で働くこともできる。

=== COVID-19 ===
2020年4月の[[南カリフォルニア大学]]の記事では、「[[新型コロナウイルス感染症の世界的流行 (2019年-)|コロナウイルス感染症の流行]]は、疫学(集団における疾病の発生率、分布、管理の研究)を世界中の科学分野の最前線に押し出し、その実践者の一部を一時的に有名人にさえした」と指摘した<ref>{{Cite web |last1=Hiro |first1=Brian |title=Ask the Expert: The Epidemiology of COVID-19 |url=https://news.csusm.edu/ask-the-expert-deborah-morton/ |publisher=SCUSM |access-date=11 June 2020}}</ref>。

== 参考文献 ==

=== 出典 ===
{{Reflist|2}}

=== 文献 ===
* {{仮リンク|David Clayton|en|David Clayton|label=Clayton, David}} and Michael Hills (1993) ''Statistical Models in Epidemiology'' Oxford University Press. {{ISBN2|0-19-852221-5}}<!-- A thorough introduction to the statistical analysis of epidemiological data, focussing on survival rates - their estimation, analysis and comparison.-->
* {{仮リンク|Miquel Porta|en|Miquel Porta|label=Miquel Porta}}, editor (2014) "A dictionary of epidemiology", 6th edn, New York: Oxford University Press. [http://global.oup.com/academic/product/a-dictionary-of-epidemiology-9780199976737?cc=us&lang=en A Dictionary of Epidemiology] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20170711233713/https://global.oup.com/academic/product/a-dictionary-of-epidemiology-9780199976737?cc=us&lang=en|date=11 July 2017}}
* Morabia, Alfredo, editor. (2004) A History of Epidemiologic Methods and Concepts. Basel, Birkhauser Verlag. Part I. [https://books.google.com/books?id=Hgnnhu1ym-8C A History of Epidemiologic Methods and Concepts] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20220630015958/https://books.google.com/books?id=Hgnnhu1ym-8C&printsec=frontcover|date=30 June 2022}} [https://www.springer.com/public+health/book/978-3-7643-6818-0 A History of Epidemiologic Methods and Concepts] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20110703131648/http://www.springer.com/public+health/book/978-3-7643-6818-0|date=3 July 2011}}
* Smetanin P, Kobak P, Moyer C, Maley O (2005). "The Risk Management of Tobacco Control Research Policy Programs" The World Conference on Tobacco OR Health Conference, 12–15 July 2006, Washington DC.
* Szklo M, Nieto FJ (2002). "Epidemiology: beyond the basics", Aspen Publishers.
* Robertson LS (2015). Injury Epidemiology: Fourth Edition. Free online at <code>nanlee.net</code>
* Rothman K., {{仮リンク|Sander Greenland|en|Sander Greenland|label=Sander Greenland}}, Lash T., editors (2008). "Modern Epidemiology", 3rd Edition, Lippincott Williams & Wilkins. {{ISBN2|0-7817-5564-6|978-0-7817-5564-1}}
* [https://web.archive.org/web/20130518044530/https://skydrive.live.com/?cid=ec4d1867f6389ec0&id=EC4D1867F6389EC0%21183 Olsen J, Christensen K, Murray J, Ekbom A. An Introduction to Epidemiology for Health Professionals. New York: Springer Science+Business Media; 2010] {{ISBN2|978-1-4419-1497-2}}
* Anders Ahlbom,Staffan Norell,''Introduction to modern epidemiology'' 2nd ed,America:Epidemiology Resources ,1990/07/01,p.1,ISBN 0-917-22706-9
* Anders Ahlbom,Staffan Norell,''Introduction to modern epidemiology'' 2nd ed,America:Epidemiology Resources ,1990/07/01,p.1,ISBN 0-917-22706-9
* Kenneth J.Rothman,Sander Greenland,''Modern epidemiology'' 2nd ed,America:Lippincott Williams & Wilkins,1998/01/15,ISBN 0-316-75780-2
* Kenneth J.Rothman,Sander Greenland,''Modern epidemiology'' 2nd ed,America:Lippincott Williams & Wilkins,1998/01/15,ISBN 0-316-75780-2
237行目: 263行目:
* [[高橋茂樹]]編集『公衆衛生対策講座』[[株式会社MEC]]、2004
* [[高橋茂樹]]編集『公衆衛生対策講座』[[株式会社MEC]]、2004
* 高橋茂樹他『STEP公衆衛生第5版』[[海馬書房]]、2002-10-22、ISBN 4-907704-20-8
* 高橋茂樹他『STEP公衆衛生第5版』[[海馬書房]]、2002-10-22、ISBN 4-907704-20-8

== 関連作品 ==
疫学をテーマとした小説
* エピデミック 川端 裕人 ISBN 978-4043748044
疫学がモチーフの映画
* [http://wwws.warnerbros.co.jp/contagion/index.html#/home コンテイジョン]


==関連項目==
==関連項目==
{{Div col}}
*[[公衆衛生]]
*[[公衆衛生]]
*[[社会調査]]
*[[社会調査]]
255行目: 276行目:
* [[治験審査委員会]]
* [[治験審査委員会]]
* [[人体実験|ヒトを対象とした研究]]
* [[人体実験|ヒトを対象とした研究]]

* {{Annotated link|年齢調整}}

* {{Annotated link|カーフィリー心臓病研究}}

* {{Annotated link|災害疫学研究センター|abbreviation=CRED}}

* {{Annotated link|GISED研究センター}}

* {{Annotated link|循環計画}}

* {{Annotated link|接触者追跡}}

* {{Annotated link|重要なコミュニティサイズ}}

* {{Annotated link|疾病クラスター}}

* {{Annotated link|疾病拡散マッピング}}

* {{Annotated link|疫学におけるコンパートメントモデル}}

* {{Annotated link|疫学的方法}}

* {{Annotated link|疫学的転換}}

* {{Annotated link|欧州疾病予防管理センター}}

* {{Annotated link|ヒスパニックパラドックス}}

* {{Annotated link|国際薬剤疫学会}}

* {{Annotated link|ジョブ・エクスポージャー・マトリックス}}

* {{Annotated link|感染症の数理モデリング}}

* {{Annotated link|メンデルのランダム化}}

* {{Annotated link|職業疫学}}

* {{Annotated link|予測分析}}

* {{Annotated link|産業保健心理学会|''Society for Occupational Health Psychology''}}

* {{Annotated link|人種と健康|生物医学における人口集団}}

* {{Annotated link|空間疫学}}

* {{Annotated link|ポメラニア健康研究}}

* {{Annotated link|標的を絞った予防接種戦略}}

* {{Annotated link|都市計画}}

* {{Annotated link|ホワイトホール研究}}

* {{Annotated link|人獣共通感染症}}

{{Div col end}}


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
{{Commonscat|Epidemiology}}{{Wiktionary|epidemiology}}{{Library resources box|by=no|onlinebooks=no|others=no|about=yes|label=epidemiology}}
* {{コトバンク}}
* [http://www.hpa.org.uk The Health Protection Agency] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20070129123642/http://www.hpa.org.uk/|date=29 January 2007}}
* [https://biostats.bepress.com/ The Collection of Biostatistics Research Archive] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20211024171703/https://biostats.bepress.com/|date=24 October 2021}}
* [https://web.archive.org/web/20110726171127/http://www.iea-europe.org/index.htm European Epidemiological Federation]
* [http://www.bmj.com/about-bmj/resources-readers/publications/epidemiology-uninitiated 'Epidemiology for the Uninitiated'] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20190321191234/https://www.bmj.com/about-bmj/resources-readers/publications/epidemiology-uninitiated|date=21 March 2019}} by D. Coggon, G. Rose, D.J.P. Barker, ''[[ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル|British Medical Journal]]''
* [http://www.epidem.com Epidem.com] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20010924091113/http://epidem.com/|date=24 September 2001}} – ''{{仮リンク|Epidemiology (journal)|en|Epidemiology (journal)|label=Epidemiology}}'' (peer reviewed scientific journal that publishes original research on epidemiologic topics)
* [https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK7993/ 'Epidemiology'] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20210429152443/https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK7993/|date=29 April 2021}} – In: Philip S. Brachman, ''{{仮リンク|Medical Microbiology|en|Medical Microbiology|label=Medical Microbiology}}'' (fourth edition), US [[アメリカ国立生物工学情報センター|National Center for Biotechnology Information]]
* [https://web.archive.org/web/20071104183725/http://vlab.infotech.monash.edu.au/simulations/cellular-automata/epidemic/ Monash Virtual Laboratory] – Simulations of epidemic spread across a landscape
* [http://dceg.cancer.gov/ Division of Cancer Epidemiology and Genetics, National Cancer Institute, National Institutes of Health] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20090812223649/http://dceg.cancer.gov/|date=12 August 2009}}
* [http://www.cred.be Centre for Research on the Epidemiology of Disasters] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20100315094506/http://www.cred.be/|date=15 March 2010}}{{Spaced en dash}}A [[世界保健機関|WHO]] collaborating centre
* [https://web.archive.org/web/20180405101243/http://www.epidemiology.ch/history/PeopleEpidemiologyLibrary.html People's Epidemiology Library]
* [https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32113704 Epidemiology of COVID-19 outbreak] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20200328061221/https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32113704|date=28 March 2020}}
*[http://www.ph.ucla.edu/epi/snow.html 疫学の歴史(ジョン・スノー)] - [[カリフォルニア大学ロサンゼルス校]]
*[http://www.ph.ucla.edu/epi/snow.html 疫学の歴史(ジョン・スノー)] - [[カリフォルニア大学ロサンゼルス校]]
* [http://jeaweb.jp/newsletters/pdf/no10.pdf 日本疫学会 ニュースレター] 日本の疫学者の現在までの疫学への取り組みや現状報告
* [http://jeaweb.jp/newsletters/pdf/no10.pdf 日本疫学会 ニュースレター] 日本の疫学者の現在までの疫学への取り組みや現状報告
263行目: 355行目:
* Kawachi「[http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2004dir/n2566dir/n2566_05.htm 「社会疫学(Social_Epidemiology)」とは何か?-週刊医学界新聞バックナンバー第2566号]」[[医学書院]]2004年1月5日
* Kawachi「[http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2004dir/n2566dir/n2566_05.htm 「社会疫学(Social_Epidemiology)」とは何か?-週刊医学界新聞バックナンバー第2566号]」[[医学書院]]2004年1月5日


{{Medical-stub}}
{{生物学}}
{{生物学}}
{{公衆衛生}}
{{公衆衛生}}
274行目: 365行目:
[[Category:測定学]]
[[Category:測定学]]
[[Category:生物学の分野]]
[[Category:生物学の分野]]
[[Category:環境社会科学]]

2024年3月10日 (日) 11:10時点における版

疫学のさまざまな側面:上から下へ:CDCの資料に基づく接触者追跡の図、フランスの連合軍各収容所で医師が作成した1918年のインフルエンザ流行の症状を示す統計表、研究デザインとエビデンスの図、新型コロナの集団感染の発生リスクが高まる条件を示した3つの密の図

疫学(えきがく、: Epidemiology)とは、定義された集団における健康と疾病の状態の分布(誰が、いつ、どこで)、パターン、決定因子英語版の研究と分析をする学問である。

また、疫学は公衆衛生の基礎であり、リスク因子英語版を特定し、予防医学の対象を特定することで、政策決定や根拠に基づく実践を形作るものである。疫学者は、研究デザイン、データの収集、統計分析、結果の解釈と普及(査読と時折のシステマティック・レビューを含む)の修正を支援する。そして、疫学は臨床研究公衆衛生研究、より限定的には生物科学における基礎研究で使用される方法論の開発に貢献してきた[1]

疫学研究の主要分野には、病因、感染経路アウトブレイク調査、疾病サーベイランス英語版環境疫学英語版法医学的疫学英語版職業疫学英語版スクリーニング (医学)バイオモニタリング英語版治験などの治療効果の比較が含まれる。疫学者は、病気のプロセスをより理解するために生物学、データを有効に活用し適切な結論を導き出すために統計学、近接原因と遠因をより理解するために社会科学ばく露評価英語版のために工学などの他の科学分野に依存している。

疫学は疫の字にやまいだれ(疒)が付くため医学であると誤解されやすいが、英語ではEpidemiologyepi- (upon、広範な) + -demos(people、人間の) + -logos(study 学問)と綴り、人間集団に対するあらゆる因果関係の確認に用いられる学問である[2]。しかし、この用語は動物集団の研究(獣医学的疫学)でも広く使用されており、「獣疫学英語版(epizoology)」という用語も用いられることがあり、植物集団の研究(植物学的または植物病理疫学英語版)にも適用されている[3]

「流行」と「風土病」の区別はヒポクラテスによって初めてなされた[4]。これは、集団に「訪れる」病気(流行)と集団内に「住む」病気(風土病)を区別するためである[5]。「epidemiology」という用語は、1802年にスペインの医師ホアキン・デ・ビジャルバによって、『Epidemiología Española』の中で初めて流行病の研究を記述するために使用されたと思われる[5]。疫学者はまた、シンデミック英語版として知られる、集団における疾患の相互作用も研究している。

疫学という用語は現在、流行性の感染症だけでなく、一般的な疾患の記述と因果関係を網羅するために広く適用されている。疫学を通して検討されるトピックの例には、高血圧、精神疾患、肥満などがある。したがって、この疫学は、疾患のパターンが人間の機能をどのように変化させるかに基づいている。

歴史

医学の父と呼ばれたデモクリトスに教えを受けたギリシャの医師ヒポクラテス[6][7]、病気に論理を求め、疾患の発生と環境の影響との関係を調べた最初の人物として知られている[8]。ヒポクラテスは、人体の病気は四体液(黒胆汁、黄胆汁、血液、粘液)のアンバランスによって引き起こされると考えた。病気の治療法は、問題の体液を取り除くか、体のバランスを取るために加えることであった。この信念は、医学における瀉血と食事療法の適用につながった[9]。彼は、(通常は特定の場所で見られるが、他の場所では見られない病気のために)風土病と、(ある時は見られるが、他の時は見られない病気のために)流行病という用語を作り出した[10]

近代

16世紀半ばに、ヴェローナ出身の医師ジローラモ・フラカストロが、病気を引き起こす非常に小さな、目に見えない粒子が生きていると提唱した最初の人物である。これらの粒子は空気によって広がり、自分で増殖し、火によって破壊されると考えられていた。このようにして、彼はガレノス瘴気説(病人の中にある毒ガス)を否定した。1543年、彼は『De contagione et contagiosis morbis』という本を書き、その中で病気を予防するために個人的および環境的な衛生を推進した最初の人物となった。1675年にアントニ・ファン・レーウェンフックによって十分に強力な顕微鏡が開発されたことで、病気の病原体説と一致する生きた粒子の視覚的証拠が提供された[要出典]

の時代、ウー・ヨウケ(1582-1652)は、1641年から1644年の間に様々な流行病が猛威を振るうのを目撃した際に、Li Qi(戾気または悪因子)と呼ばれる伝染性の物質によって引き起こされる病気があるという考えを発展させた[11]。彼の著書『Wen Yi Lun(瘟疫論、疫病論)』は、この概念を提唱した主要な病因学的著作と見なすことができる[12]。彼の概念は、2004年のWHOによるSARS流行の分析において、伝統的中国医学の文脈でいまだに考慮されていた[13]

もう一人の先駆者であるトマス・シデナム(1624-1689)は、1600年代後半のロンドン市民の熱を最初に区別した人物である。熱の治療法に関する彼の理論は、当時の伝統的な医師から多くの抵抗を受けた。彼は、自身が研究し治療した天然痘の熱の初期原因を見つけることができなかった[9]

ジョン・グラント英語版は、装身具商英語版であり、アマチュアの統計学者で、1662年に『Natural and Political Observations ... upon the Bills of Mortality』を出版した。その中で、ロンドン大疫病以前の死亡者記録を分析し、最初の生命表の1つを提示し、新旧の多くの病気の時間的な傾向を報告した。彼は、多くの病気の理論に統計的証拠を提供し、それらに関する一部の広く普及していた考えを否定した[要出典]

1854年のロンドン流行英語版におけるコレラ症例のクラスターを示すジョン・スノウによる元の地図

ジョン・スノウは、19世紀のコレラの流行の原因を調査したことで有名であり、(現代の)疫学の父としても知られている[14][15]。彼は、サウスワーク社が供給する2つの地域で死亡率が著しく高いことに気づいたことから始めた。ソーホー地区の流行の原因としてブロード通り英語版の水道ポンプを特定したことは、疫学の典型的な例と考えられている。スノウは、水を浄化するために塩素を使用し、ハンドルを取り外した。これにより流行は終息した。これは、公衆衛生の歴史における重大な出来事と見なされ、世界中の公衆衛生政策の形成に役立った疫学の科学の創設事業と見なされている[16][17]。しかし、スノウの研究と更なる流行を避けるための予防策は、当時の瘴気説が優勢だったため、彼の死後まで完全には受け入れられず、実践されなかった。瘴気説とは、空気の質の悪さが病気の原因であるとする病気のモデルであり、貧困地域の高い感染率を合理化するために使用されたが、その背後にある栄養不良や衛生面の問題に取り組むことはなく、彼の研究によって誤りであることが証明された[18]

他の先駆者には、1849年にアイスランドヴェストマン諸島における新生児破傷風英語版の流行の予防に関する自身の研究を関連付けたデンマークの医師ピーター・アントン・シュライスナーがいる[19][20]。もう一人の重要な先駆者は、ハンガリーの医師センメルヴェイス・イグナーツで、1847年にウィーンの病院で消毒手順を導入することにより乳児死亡率を下げた。彼の発見は1850年に発表されたが、彼の研究は同僚に歓迎されず、手順は中止された。英国の外科医ジョゼフ・リスタールイ・パスツールの研究に照らして1865年に消毒薬を「発見」するまで、消毒は広く実践されるようにはならなかった[要出典]

ロベルト・コッホ1876年炭疽菌の純粋培養に成功し、炭疽病原体であることを証明し、細菌動物の病原体であることを証明した(コッホの原則)。1882年結核菌を発見し、ヒトにおいても細菌が病原体であることを証明した。1883年インドにおいてコレラ菌を発見した。1890年、コッホは結核菌の培養上清からツベルクリン(結核菌ワクチン)を創製した。1905年、コッホはノーベル生理学・医学賞を受賞した。コッホはルイ・パスツールとともに近代細菌学の開祖とされる。

コッホはベルリン大学で弟子を育て、腸チフス菌を発見したゲオルク・ガフキージフテリア菌の分離に成功し、口蹄疫ウイルスを発見したフリードリヒ・レフラー血清療法を研究したエミール・ベーリング化学療法を研究したパウル・エールリヒ破傷風菌を純粋培養し、ペスト菌を発見した北里柴三郎などを輩出した。

20世紀初頭、ロナルド・ロスジャネット・レーン=クレイポン英語版アンダーソン・グレイ・マッケンドリック英語版らによって、疫学に数学的手法が導入された[21][22][23][24]。1920年代の並行した発展の中で、ドイツ系スイス人の病理学者マックス・アスカナジー英語版らは、異なる地域の集団における癌やその他の非感染性疾患の地理的病理学を体系的に調査するために、国際地理病理学会を設立した。第二次世界大戦後、リチャード・ドール英語版らの非病理学者がこの分野に参加し、感染症の流行のために開発された方法では適切に研究できないパターンと発生様式を持つ疾患である癌を研究する方法を進歩させた。地理病理学は最終的に感染症疫学と結合し、今日の疫学の分野を形成した[25]

もう一つの画期的な出来事は、リチャード・ドール英語版オースティン・ブラッドフォード・ヒル英語版が主導した英国医師研究英語版の結果が1954年に発表されたことである。これは、喫煙肺癌の関連性に非常に強力な統計的支持を与えた[要出典]

20世紀後半、生物医学の進歩に伴い、血液、その他の生体試料、環境中の多数の分子マーカーが、ある疾患の発症または危険性の予測因子として同定された。分子レベルで分析されたこれらのバイオマーカー英語版と疾患の関係を調べる疫学研究は、広く「分子疫学英語版」と名付けられた。具体的には、生殖細胞系列の遺伝的変異と疾患の疫学に「遺伝疫学英語版」という用語が使用されてきた。遺伝的変異は、通常、末梢血白血球のDNAを用いて決定される[要出典]

21世紀

2000年代以降、多くの疾患や健康状態の遺伝的リスク因子を特定するために、ゲノムワイド関連解析(GWAS)が一般的に行われるようになった[要出典]

大多数の分子疫学研究では、従来の疾患診断英語版と分類システムがいまだに使用されているが、疾患の進行は本質的に個人ごとに異なる不均一なプロセスであることがますます認識されている。概念的には、各個人は他の個人とは異なる独自の疾患プロセスを持っている(「独特の疾患原則」)[26][27]。これは、エクスポーゾーム英語版(内因性および外因性/環境曝露の総体)の独自性と、各個人における分子病理学的プロセスへのその固有の影響を考慮したものである。曝露と疾患(特に)の分子病理学的特徴との関係を調べる研究は、2000年代を通じてますます一般的になった。しかし、疫学における分子病理学の使用には、研究ガイドラインと標準化された統計方法論の欠如、学際的専門家と教育プログラムの不足など、独特の課題があった[28]。さらに、疾患の不均一性の概念は、同じ疾患名を持つ個人は同様の病因と疾患プロセスを持っているという疫学における長年の前提と矛盾するように見える。これらの問題を解決し、分子精密医療の時代における集団の健康科学を進歩させるために、「分子病理学」と「疫学」が統合され、「分子病理疫学英語版」(MPE)という新しい学際的分野が作られた[29][30]。これは、「分子病理学と疾患の不均一性の疫学」と定義される。MPEでは、研究者は、(A)環境、食事、ライフスタイル、遺伝的要因、(B)細胞内または細胞外分子の変化、および(C)疾患の進化と進行との関係を分析する。疾患発症機序英語版の不均一性をより理解することは、疾患のエティオロジーを解明するのにさらに貢献するだろう。MPEアプローチは、腫瘍性疾患だけでなく、非腫瘍性疾患にも適用できる[31]。MPEの概念とパラダイムは、2010年代に広まった[32][33][34][35][36][37][38]

2012年までに、多くの病原体の進化は疫学と非常に関連するほど速いこと、したがって疫学と分子進化を統合した感染症へ学際的アプローチを取ることで、「制御戦略や患者治療に情報を与える」ことができることが認識された[39][40]。現代の疫学研究では、高度な統計と機械学習を使用して、予測モデル英語版を作成し、治療効果を定義することができる[41][42]。多くはヘルスケアや疫学に由来しない幅広い現代のデータソースが、疫学研究に使用できることがますます認識されている[43]。このようなデジタル疫学には、インターネット検索、携帯電話の記録、医薬品の小売売上などのデータを含めることができる[要出典]

日本の疫学

日本の疫学の祖と言われている高木兼寛は、日本海軍に多発した脚気を白米を中心とする食事にありとする栄養学説を唱えて、それを実験疫学的に証明したことで有名である。航海実験の結果に基づき海軍食に麦飯を導入、結果、1885年には海軍の脚気は激減した[44]。これらの功績により1905年(明治38年)に男爵の爵位を授けられ、後に「麦飯男爵」とも呼ばれたという[45]。これは1912年鈴木梅太郎オリザニン(ビタミンB1)を発見する実に27年も前のことである。

北里柴三郎破傷風菌を純粋培養し、血清療法を確立しペスト菌を発見した。

研究の種類

疫学者は、観察研究から実験的研究まで、幅広い研究デザインを用いており、一般的に記述的研究(時間、場所、人に関するデータの評価を含む)、分析的研究(既知の関連性や仮説化された関係をさらに検討することを目的とする)、実験的研究(治療やその他の介入の臨床試験やコミュニティ試験と同義語としてよく使用される用語)に分類される。観察研究では、疫学者がサイドラインから観察しながら、自然の「成り行き」に任せる。逆に、実験的研究では、疫学者が特定の症例研究に入るすべての要因を制御する[46]。疫学研究は、可能な限り、アルコールや喫煙、生物学的因子ストレス化学物質などの曝露英語版死亡率罹患率との間の偏りのない関係を明らかにすることを目的としている。これらの曝露と転帰との因果関係の特定は、疫学の重要な側面である。現代の疫学者は、情報学インフォデミオロジー英語版[47][48]をツールとして使用している[要出典][49][50][51]

観察研究には、記述的研究と分析的研究の2つの要素がある。記述的観察は、「健康関連状態の発生における誰が、何を、どこで、いつを」に関するものである。一方、分析的観察は、健康関連事象の「いかに」をより扱う[46]実験疫学には、無作為化対照試験(新薬やドラッグテストによく使用される)、フィールド試験(病気にかかる高リスク者を対象に実施)、コミュニティ試験(社会的な病気の研究)の3つのケースタイプがある[46]

「疫学の三角形」という用語は、アウトブレイクを分析する際の宿主病原体環境の交差を表すために使用される[要出典]

症例集積

症例集積とは、単一の患者または同様の診断を受けた少数の患者グループの経験の質的研究、または曝露されていない期間がある病気を引き起こす可能性のある統計的要因を指す場合がある[52]

前者のタイプの研究は純粋に記述的であり、その疾患の患者の一般集団について推論することはできない。このタイプの研究では、鋭い臨床医が疾患または患者の病歴の異常な特徴を特定し、新しい仮説の定式化につながる可能性がある。この集積のデータを使用して、可能性のある原因因子を調査するための分析的研究を行うことができる。これには、症例対照研究または前向き研究が含まれる。症例対照研究では、その集積の症例と比較可能な疾患のない対照をマッチングさせる。前向き研究では、疾患の自然史を評価するために、症例集積を長期間にわたって追跡調査する[53]

後者のタイプは、より正式には自己対照症例集積研究と呼ばれ、個々の患者の追跡期間を曝露期間と非曝露期間に分割し、固定効果ポアソン回帰プロセスを使用して、曝露期間と非曝露期間の特定の転帰の発生率を比較する。この手法は、ワクチン接種による有害反応の研究で広く使用されており、状況によってはコホート研究で得られるのと同等の統計的検出力を提供することが示されている[要出典]

症例対照研究

症例対照研究は、病気の状態に基づいて対象者を選択する。これは後ろ向き研究である。病気に罹患している個人のグループ(「症例」群)と、病気に罹患していない個人のグループ(「対照」群)が比較される。対照群は、理想的には、症例を生み出したのと同じ集団から来るべきである。症例対照研究では、両群(症例と対照)が遭遇した可能性のある潜在的な曝露を過去に遡って調べる。2×2表が作成され、曝露症例(A)、曝露対照(B)、非曝露症例(C)、非曝露対照(D)が表示される。関連性を測定するために生成される統計量はオッズ比(OR)であり、これは症例の曝露オッズ(A/C)の対照の曝露オッズ(B/D)に対する比、すなわちOR =(AD/BC)である[要出典]

症例 対照
曝露 A B
非曝露 C D

ORが1より有意に大きい場合、「病気の人は曝露された可能性が高い」という結論になるが、1に近い場合は、曝露と病気は関連している可能性が低い。ORが1よりはるかに小さい場合、曝露は病気の原因における防御因子であることが示唆される。

症例対照研究は通常、コホート研究よりも迅速かつ費用対効果が高いが、バイアス(想起バイアス選択バイアス英語版など)の影響を受けやすい。主な課題は、適切な対照群を特定することである。対照群における曝露の分布は、症例を生み出した集団における分布を代表するものでなければならない。これは、元のリスク集団からランダムサンプルを抽出することで達成できる。この結果、対照群には、病気が集団で高い罹患率を示す場合、研究対象の病気の人が含まれる可能性がある[要出典]

症例対照研究の大きな欠点は、統計的に有意であるとみなされるためには、95%信頼区間で必要な最小症例数がオッズ比と次の式で関連していることである。

ここで、Nは症例と対照の比率である。

オッズ比が1に近づくにつれ、統計的有意性に必要な症例数は無限大に向かって増加し、症例対照研究を低オッズ比ではほとんど役に立たなくする。例えば、オッズ比が1.5で症例=対照の場合、上記の表は次のようになる。

症例 対照
曝露 103 84
非曝露 84 103

オッズ比が1.1の場合:

症例 対照
曝露 1732 1652
非曝露 1652 1732

コホート研究

コホート研究は、曝露状態に基づいて対象者を選択する。研究対象者は、コホート研究の開始時に、調査対象の転帰のリスクがあるはずである。これは通常、コホート研究開始時に疾患がないことを意味する。コホートは、その後の転帰状態を評価するために、時間とともに追跡される。コホート研究の例として、肺がんの発生率を推定するために、喫煙者と非喫煙者のコホートを長期間にわたって調査することが挙げられる。症例対照研究と同じ2×2表が作成される。しかし、生成される推定値は相対危険度(RR)であり、これは曝露群の人の疾患確率Pe=A/(A+B)の非曝露群の人の疾患確率Pu=C/(C+D)に対する比、すなわちRR=Pe/Puである。

..... 症例 非症例 合計
曝露 A B (A+B)
非曝露 C D (C+D)

ORと同様に、RRが1より大きい場合は関連性を示しており、「曝露された人は病気になる可能性が高かった」と結論づけることができる。

前向き研究には、症例対照研究に比べて多くの利点がある。RRはORよりも強力な効果の指標である。ORは真の発生率を計算できない病気の状態に基づいて対象者を選択する症例対照研究での単なるRRの推定値だからである。前向き研究では、時間的関係を確立でき、交絡因子をより簡単に制御できる。しかし、コストがかかり、コホートが長期間追跡されるため、追跡調査中に対象者を失う可能性が高くなる。

コホート研究も、コホート研究と同じ症例数の方程式によって制限されるが、研究集団における基礎発生率が非常に低い場合、必要な症例数は12に減少する。

因果推論

疫学は、曝露と健康転帰の関連性を解明するために使用される統計ツールの集合体とみなされることがあるが、この科学のより深い理解は、因果関係を発見することである。

相関は因果関係を意味しない」は、疫学文献の多くに共通するテーマである。疫学者にとって、重要なのは推論という用語である。2つの変数間の相関、または少なくとも関連は、一方の変数がもう一方の変数を引き起こすと推論するための必要条件であるが、十分条件ではない。疫学者は、収集されたデータと幅広い生物医学的および心理社会的理論を反復的な方法で使用して、理論を生成または拡張し、仮説を検証し、どの関係が因果関係にあるのか、そしてどのようにして因果関係にあるのかについて、教育を受け、情報に基づいた主張を行う。

疫学者は、「一つの原因 - 一つの結果」という理解は単純化された誤った信念であることを強調する[54]。ほとんどの転帰は、病気であれ死であれ、多くの構成要因からなる連鎖または網によって引き起こされる[55]。原因は、必要条件、十分条件、確率的条件として区別できる。必要条件を特定して制御できれば(例えば、病原体に対する抗体、外傷におけるエネルギー)、有害な結果を回避できる(Robertson, 2015)。病気に関連する多因子性を概念化するために定期的に使用されるツールの1つは、因果パイモデル英語版である[56]

ブラッドフォード・ヒル基準

1965年、オースティン・ブラッドフォード・ヒル英語版は、因果関係の証拠を評価するのに役立つ一連の考慮事項を提案した[57]。これは、一般に「ブラッドフォード・ヒル基準英語版」として知られるようになった。著者の明確な意図とは対照的に、ヒルの考慮事項は現在、因果関係を評価するために実施すべきチェックリストとして教えられることがある[58]。ヒル自身は、「私の9つの観点のどれも、因果関係の仮説に対する議論の余地のない証拠を提供することはできないし、どれも不可欠とは言えない」と述べている[57]

  1. 関連の強さ: 小さな関連では因果効果がないとは限らないが、関連が大きいほど、因果関係である可能性が高い[57]
  2. データの一貫性: 異なる場所で、異なるサンプルを使って、異なる人が一貫した結果を観察することは、効果の可能性を強める[57]
  3. 特異性: 非常に特定の集団が、特定の部位で、他に考えられる説明のない特定の病気を発症した場合、因果関係の可能性が高い。ある因子とある効果の関連が特異的であるほど、因果関係の確率は大きくなる[57]
  4. 時間性: 原因の後に結果が起こらなければならない(そして、原因と予想される結果の間に予想される遅れがある場合、その遅れの後に結果が起こらなければならない)[57]
  5. 生物学的勾配: 一般に、曝露量が多いほど、効果の発生率が高くなるはずである。ただし、場合によっては、因子の存在だけで効果が引き起こされることがある。他の場合では、逆の比例が観察される。すなわち、曝露量が多いほど、発生率が低くなる[57]
  6. 妥当性: 原因と結果の間に妥当なメカニズムがあることは有益である(ただし、ヒルはメカニズムの知識は現在の知識によって制限されると指摘した)[57]
  7. 整合性: 疫学的所見と実験的所見の整合性は、効果の可能性を高める。ただし、ヒルは「そのような[実験的]証拠の欠如は、関連性における疫学的効果を無効にすることはできない」と指摘した[57]
  8. 実験: 「時折、実験的証拠に訴えることが可能である」[57]
  9. 類推: 類似した因子の効果を考慮することができる[57]

法的解釈

疫学研究は、ある因子が特定の場合に効果を引き起こした可能性を証明することはできるが、実際に引き起こしたことを証明することはできない。

疫学は、集団における疾病の発生率英語版に関心があり、個人の疾病の原因という問題には対処しない。この問題は、時に特異的因果関係と呼ばれ、疫学の科学の領域を超えている。疫学は、ある因子と疾病の関係が因果関係である(一般的因果関係)と推論され、その因子に起因する超過リスクの大きさが決定された時点で限界に達する。つまり、疫学は、ある因子が疾病を引き起こす可能性があるかどうかを扱うのであって、ある因子が特定の原告の疾病を引き起こしたかどうかを扱うのではない[59]

アメリカ合衆国の法律では、疫学だけでは、因果関係が一般に存在しないことを証明することはできない。逆に、個々のケースにおいて、確率のバランスに基づいて、因果関係が存在するという推論を正当化するために、米国の裁判所によって(状況によっては)考慮される可能性がある。

法医学疫学の細分野は、因果関係が争われている、または不明確な個人または個人のグループにおける疾病または傷害の特定の因果関係の調査を目的としており、法的環境での提示を目的としている。

集団ベースの健康管理

疫学的実践と疫学的分析の結果は、新たに登場している集団ベースの健康管理の枠組みに重要な貢献をしている。

集団ベースの健康管理には、以下の能力が含まれる。

  • 対象集団の健康状態と健康ニーズを評価すること。
  • その集団の健康を改善するために設計された介入を実施し、評価すること。
  • その集団のメンバーに、コミュニティの文化的、政策的、健康資源的価値観と一致する方法で、効率的かつ効果的にケアを提供すること。

現代の集団ベースの健康管理は複雑であり、疫学的実践と分析を中核とする多様なスキル(医学、政治、技術、数学など)が必要であり、それらが管理科学と統合されることで、集団に効率的かつ効果的な医療と健康指導が提供される。このタスクには、健康リスク要因、発生率、有病率、死亡率の統計(疫学分析から導かれる)を、健康システムが現在の集団の健康問題にどのように対応するかだけでなく、将来起こりうる集団の健康問題により良く対応できるようにするための管理指標に変換する、現代のリスク管理アプローチの先見性ある能力が必要である[60]

疫学的実践の成果を活用した集団ベースの健康管理を利用している組織の例としては、カナダ癌管理戦略、カナダ保健省タバコ規制プログラム、リック・ハンセン財団、カナダタバコ規制研究イニシアチブなどがある[61][62][63]

これらの組織は、それぞれ「Life at Risk」と呼ばれる集団ベースの健康管理の枠組みを使用しており、疫学的な定量分析を人口統計、保健機関の運営研究、経済学と組み合わせることで、以下のことを行っている。

  • 集団生命影響シミュレーション: 新規疾病症例、有病率、早死、障害や死亡による潜在的な生命年数の損失に関して、疾病が集団に及ぼす将来の潜在的影響を測定する。
  • 労働力生命影響シミュレーション: 新規疾病症例、有病率、早死、障害や死亡による潜在的な生命年数の損失に関して、疾病が労働力に及ぼす将来の潜在的影響を測定する。
  • 疾病の経済的影響シミュレーション: 民間部門の可処分所得(賃金、企業利益、民間医療費)と公共部門の可処分所得(個人所得税、法人所得税、消費税、公的資金による医療費)に対する疾病の将来の潜在的影響を測定する。

応用疫学

応用疫学とは、疫学的手法を用いて集団の健康を保護または改善する実践のことである。応用疫学には、伝染性疾患および非伝染性疾患のアウトブレイク、死亡率および罹患率、栄養状態などの健康指標の調査が含まれ、その目的は、適切な政策や疾病対策を実施できる人々に結果を伝達することである。

人道的な状況

人道的危機の状況下では、疾病やその他の健康因子の監視と報告がますます困難になるにつれて、データを報告するために使用される方法論が損なわれる。ある研究では、人道的な状況から抽出された栄養調査の半数以下(42.4%)が栄養不良の有病率を正しく計算し、調査の3分の1(35.3%)のみが質の基準を満たしていた。死亡率調査では、質の基準を満たしたのはわずか3.2%であった。栄養状態と死亡率は危機の深刻度を示す指標となるため、これらの健康因子の追跡と報告は非常に重要である。

重要な登録簿は通常、データを収集する最も効果的な方法であるが、人道的な状況下では、これらの登録簿が存在しなかったり、信頼できなかったり、アクセスできなかったりする可能性がある。そのため、死亡率は、前向きな人口動態監視または後ろ向きな死亡率調査のいずれかを使用して不正確に測定されることが多い。前向きな人口動態監視には多くの人力が必要であり、広範囲に広がった集団に実施するのが難しい。後ろ向きの死亡率調査は、選択バイアスと報告バイアスの影響を受けやすい。他の方法も開発されているが、まだ一般的な慣行ではない[64][65][66][67]

特徴・妥当性・バイアス

流行の波

流行における波の概念は、特に伝染性疾患に影響を与える。「流行の波」という用語の実用的な定義は、次の2つの重要な特徴に基づいている。1)上昇または下降のトレンドの期間を含むこと、2)これらの増加または減少は、軽微な変動や報告エラーと区別するために、かなりの大きさで長期間持続する必要がある[68]。一貫した科学的定義を使用する目的は、COVID-19パンデミックの進行について伝達したり理解したりするために使用できる一貫した言語を提供することであり、これは医療機関や政策立案者が資源の計画と配分に役立つであろう。

妥当性

疫学の異なる分野では、妥当性のレベルが異なる。結果の妥当性を評価する一つの方法は、偽陽性(正しくない主張効果)と偽陰性(真の効果を支持しない研究)の比率である。遺伝疫学英語版では、候補遺伝子研究は、偽陰性1件につき100件を超える偽陽性結果を生み出す可能性がある。対照的に、ゲノムワイド関連解析では、100件以上の偽陰性に対して偽陽性はわずか1件程度と、ほぼ逆の結果が得られている[69]。遺伝疫学では、厳格な基準が採用されるようになったため、この比率は時間とともに改善されている。対照的に、他の疫学分野では、このような厳格な報告が要求されておらず、その結果、信頼性がはるかに低くなっている[69]

ランダム誤差

ランダム誤差は、サンプリングの変動により真の値の周りで変動することによって生じる。ランダム誤差はまさにランダムである。データの収集、コーディング、転送、分析の過程で発生する可能性がある。ランダム誤差の例としては、質問の言い回しが悪い、特定の回答者の個々の回答の解釈に誤解がある、コーディング中のタイプミスなどがある。ランダム誤差は、一時的で一貫性のない方法で測定に影響を与え、ランダム誤差を修正することは不可能である。すべてのサンプリング手順にはランダム誤差、つまりサンプリング誤差英語版がある[要出典]

疫学的変数の精度は、ランダム誤差の指標である。精度はランダム誤差と逆の関係にあるため、ランダム誤差を減らすことは精度を上げることになる。相対リスク推定値の精度を示すために、信頼区間が計算される。信頼区間が狭いほど、相対リスク推定値の精度が高くなる。

疫学研究におけるランダム誤差を減らすには、基本的に2つの方法がある。1つ目は、研究のサンプルサイズを増やすことである。つまり、研究対象者を増やすことである。2つ目は、研究における測定の変動を減らすことである。これは、より精度の高い測定機器を使用するか、測定回数を増やすことで達成できるかもしれない。

ただし、サンプルサイズや測定回数を増やしたり、より精度の高い測定機器を購入したりすると、通常、研究のコストが増加することに注意が必要である。十分な精度の必要性と研究コストの実際的な問題との間には、通常、不安定なバランスがある。

系統誤差

系統誤差またはバイアスは、サンプリングの変動以外の原因により、(集団における)真の値と(研究における)観測値に差がある場合に発生する。系統誤差の例としては、使用しているパルスオキシメーター英語版が正しく設定されていないことに気づかず、測定のたびに真の値に2ポイント追加されるような場合である。測定機器は精密かもしれないが正確ではない可能性がある。誤差はすべての事例で発生するため、系統的である。その データに基づいて引き出された結論は、やはり間違っているだろう。しかし、その誤差は将来再現可能である(例えば、同じ誤設定の機器を使用することで)。

特定の質問に対するすべての回答に影響を与えるコーディングの誤りは、系統誤差の別の例である。

研究の妥当性は、系統誤差の程度に依存する。妥当性は通常、2つの要素に分けられる。

  • 内的妥当性英語版は、曝露、疾病、およびこれらの変数間の関連性を含む測定の誤差量に依存する。内的妥当性が高いということは、測定の誤差が少ないことを意味し、少なくとも研究対象者に関する限り、推論を導き出すことができることを示唆している。
  • 外的妥当性英語版は、研究結果をサンプルが抽出された集団(またはその集団を超えてより普遍的な記述)に一般化するプロセスに関係する。これには、一般化に関連する(または無関係な)条件を理解する必要がある。内的妥当性は明らかに外的妥当性の前提条件である。

選択バイアス

選択バイアス英語版は、曝露と関心のある転帰の両方に関連する第3の測定されない変数の結果として、研究対象が選択されるか、研究の一部になる場合に発生する[70]。例えば、喫煙者と非喫煙者では、研究参加率が異なる傾向があることが繰り返し指摘されている。(サケットDは、非喫煙者の85%と喫煙者の67%が郵送された質問票を返送したセルツァーらの例を引用している)[71]。応答におけるこのような違いが、2つの応答グループ間の転帰の系統的な差とも関連していない場合、バイアスにはつながらないことに注意することが重要である。

情報バイアス

情報バイアス英語版は、変数の評価における系統的誤差から生じるバイアスである[72]。この例として、思い出しバイアスがある。典型的な例は、胎児の健康に対する特定の曝露の影響を調べた研究についてのサケットの議論で再び示されている。「最近の妊娠が胎児死亡または奇形(症例)に終わった母親と、妊娠が正常に終わった一致した母親のグループ(対照)に質問したところ、前者の28%、後者の20%のみが、以前の前向きインタビューや他の健康記録でも裏付けられない薬物への曝露を報告した」[71]。この例では、流産を経験した女性は、以前の曝露をより良く思い出し、報告する傾向があるように見えたため、おそらく思い出しバイアスが発生したのだろう。

交絡因子 交絡は伝統的に、交絡因子と呼ばれる無関係な要因の効果の共発生や混合から生じるバイアスと定義されてきた[72][73]。より最近の交絡の定義では、反事実的効果の概念を導入している[73]。この見方によれば、関心のある転帰、例えばY=1(Y=0とは対照的に)が、完全に曝露された(つまり、集団のすべての単位について曝露X=1)特定の集団Aで観察された場合、このイベントのリスクはRA1になる。反事実的または観察されないリスクRA0は、同じ個人が曝露されていなかった場合(つまり、集団のすべての単位についてX = 0)に観察されたであろうリスクに対応する。したがって、曝露の真の効果は、RA1RA0(リスク差に興味がある場合)またはRA1/RA0(相対リスクに興味がある場合)である。反事実的リスクRA0は観察不可能であるため、第2の集団Bを使用して近似し、実際に次の関係を測定する。RA1RB0またはRA1/RB0。この状況では、RA0RB0のとき、交絡が発生する[73](注:例では二値の転帰変数と曝露変数を想定している)。

一部の疫学者は、選択バイアスや情報バイアスとは異なり、交絡が実際の因果効果から生じるため、交絡をバイアスの一般的な分類とは別に考えることを好む[70]

職業

学部レベルでは、疫学を学習コースとして提供している大学は少ない。注目すべき学部プログラムはジョンズ・ホプキンズ大学にある。ここでは、公衆衛生を専攻する学生は、4年次にブルームバーグ公衆衛生大学院で疫学を含む大学院レベルのコースを受講できる[74]

疫学研究は、医師などの臨床訓練を受けた専門家を含む様々な分野の個人によって行われているが、公衆衛生修士(MPH)、疫学修士(MSc)、公衆衛生博士英語版(DrPH)、薬学博士(PharmD)、哲学博士(PhD)、理学博士(ScD)などの修士課程または博士課程を通じて正式な訓練を受けることができる。他の多くの大学院プログラム、例えば、ソーシャルワーク博士英語版(DSW)、臨床実践博士(DClinP)、足病医学博士英語版(DPM)、獣医学博士(DVM)、看護実践博士英語版(DNP)、理学療法博士英語版(DPT)、または臨床訓練を受けた医師の場合、医学博士英語版(MD)または医学士英語版(MBBSまたはMBChB)およびオステオパシー医学博士英語版(DO)には、疫学研究または関連トピックのある程度の訓練が含まれているが、この訓練は一般に、疫学または公衆衛生に特化した訓練プログラムで提供されるものよりもかなり少ない。疫学と医学の強い歴史的関係を反映して、正式な訓練プログラムは、公衆衛生学部または医学部のいずれかに設置される場合がある。

公衆衛生/健康保護の実務者として、疫学者は様々な環境で働いている。一部の疫学者は「現場」で働いている。つまり、コミュニティ、一般的には公衆衛生/健康保護サービスで働き、疾病の発生を調査し、撲滅する最前線にいることが多い。他には、非営利団体、大学、病院、州や地方の保健局などの大きな政府機関、各種保健省、国境なき医師団疾病対策予防センター(CDC)、保健保護庁英語版世界保健機関(WHO)、カナダ公衆衛生局英語版などで働いている。疫学者は、製薬会社や医療機器会社のマーケティングリサーチや臨床開発などのグループで、営利団体で働くこともできる。

COVID-19

2020年4月の南カリフォルニア大学の記事では、「コロナウイルス感染症の流行は、疫学(集団における疾病の発生率、分布、管理の研究)を世界中の科学分野の最前線に押し出し、その実践者の一部を一時的に有名人にさえした」と指摘した[75]

参考文献

出典

  1. ^ Porta, Miquel (2014). A Dictionary of Epidemiology (6th ed.). New York: Oxford University Press. ISBN 978-0-19-997673-7. http://global.oup.com/academic/product/a-dictionary-of-epidemiology-9780199976737?cc=us&lang=en 2014年7月16日閲覧。 
  2. ^ 日本疫学会監修『はじめて学ぶやさしい疫学-疫学への招待』南江堂、2002-10-10、ISBN 4-524-22468-8
  3. ^ Nutter, F.W. Jr. (1999). “Understanding the interrelationships between botanical, human, and veterinary epidemiology: the Ys and Rs of it all”. Ecosystem Health 5 (3): 131–40. doi:10.1046/j.1526-0992.1999.09922.x. 
  4. ^ Hippocrates (~200 BC). Airs, Waters, Places.
  5. ^ a b Carol Buck, Alvaro Llopis; Enrique Nájera; Milton Terris (1998) The Challenge of Epidemiology: Issues and Selected Readings. Scientific Publication No. 505. Pan American Health Organization. Washington, DC. p. 3.
  6. ^ Alfredo Morabia (2004). A history of epidemiologic methods and concepts. Birkhäuser. p. 93. ISBN 978-3-7643-6818-0. https://books.google.com/books?id=E-OZbEmPSTkC&pg=PA93 
  7. ^ Historical Developments in Epidemiology Archived 19 February 2018 at the Wayback Machine.. Chapter 2. Jones & Bartlett Learning LLC.
  8. ^ Ray M. Merrill (2010). Introduction to Epidemiology. Jones & Bartlett Learning. p. 24. ISBN 978-0-7637-6622-1. https://books.google.com/books?id=RMDBh6gw1_UC&pg=PA24 
  9. ^ a b Merril, Ray M., PhD, MPH. (2010): An Introduction to Epidemiology, Fifth Edition. Chapter 2: "Historic Developments in Epidemiology". Jones and Bartlett Publishing
  10. ^ Changing Concepts: Background to Epidemiology”. Duncan & Associates. 2011年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年2月3日閲覧。
  11. ^ Joseph, P Byre (2012). Encyclopedia of the Black Death. ABC-CLIO. p. 76. ISBN 978-1598842548. https://books.google.com/books?id=AppsDAKOW3QC&pg=PA76 2019年2月24日閲覧。 
  12. ^ Guobin, Xu; Yanhui, Chen; Lianhua, Xu (2018). Introduction to Chinese Culture: Cultural History, Arts, Festivals and Rituals. Springer. p. 70. ISBN 978-9811081569. https://books.google.com/books?id=-KFTDwAAQBAJ&pg=PA70 2019年2月24日閲覧。 
  13. ^ SARS: Clinical Trials on Treatment Using a Combination of Traditional Chinese Medicine and Western Medicine”. World Health Organization. 2018年6月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月24日閲覧。
  14. ^ Doctor John Snow Blames Water Pollution for Cholera Epidemic, by David Vachon Archived 28 December 2011 at the Wayback Machine. UCLA Department of Epidemiology, School of Public Health May & June 2005
  15. ^ John Snow, Father of Epidemiology Archived 20 June 2017 at the Wayback Machine. NPR Talk of the Nation. 24 September 2004
  16. ^ Importance of Snow”. www.ph.ucla.edu. 2024年3月10日閲覧。
  17. ^ Dr. John Snow. Archived 16 June 2014 at the Wayback Machine. John Snow, Inc. and JSI Research & Training Institute, Inc.
  18. ^ Johnson, Steven, The ghost map : [the story of London's most terrifying epidemic – and how it changed science, cities, and the modern world], OCLC 1062993385, http://worldcat.org/oclc/1062993385 2020年9月16日閲覧。 
  19. ^ Krishna (2019年5月). “Education Consultancy”. Krishna. 2024年3月10日閲覧。
  20. ^ Ólöf Garðarsdóttir; Loftur Guttormsson (25 August 2009). “Public health measures against neonatal tetanus on the island of Vestmannaeyjar (Iceland) during the 19th century”. The History of the Family 14 (3): 266–79. doi:10.1016/j.hisfam.2009.08.004. [要検証]
  21. ^ Statisticians of the centuries Archived 30 June 2022 at the Wayback Machine.. By C. C. Heyde, Eugene Senet
  22. ^ Anderson Gray McKendrick Archived 22 August 2011 at the Wayback Machine.
  23. ^ Homepage”. University of Southampton. Tel: +4423 8059 5000 Fax: +4423 8059 3131 University of Southampton University Road Southampton SO17 1BJ United Kingdom. 2024年3月10日閲覧。[リンク切れ]
  24. ^ Origins and early development of the case-control study”. 2017年1月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年8月31日閲覧。
  25. ^ Mueller LM (2019). “Cancer in the tropics: geographical pathology and the formation of cancer epidemiology”. BioSocieties 14 (4): 512–528. doi:10.1057/s41292-019-00152-w. hdl:1721.1/128433. 
  26. ^ “How many molecular subtypes? Implications of the unique tumor principle in personalized medicine”. Expert Rev Mol Diagn 12 (6): 621–28. (2012). doi:10.1586/erm.12.46. PMC 3492839. PMID 22845482. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3492839/. 
  27. ^ “Molecular pathological epidemiology of epigenetics: Emerging integrative science to analyze environment, host, and disease”. Mod Pathol 26 (4): 465–84. (2013). doi:10.1038/modpathol.2012.214. PMC 3637979. PMID 23307060. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3637979/. 
  28. ^ “Interdisciplinary education to integrate pathology and epidemiology: Towards molecular and population-level health science”. Am J Epidemiol 176 (8): 659–67. (2012). doi:10.1093/aje/kws226. PMC 3571252. PMID 22935517. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3571252/. 
  29. ^ “Lifestyle factors and microsatellite instability in colorectal cancer: the evolving field of molecular pathological epidemiology”. J Natl Cancer Inst 102 (6): 365–67. (2010). doi:10.1093/jnci/djq031. PMC 2841039. PMID 20208016. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2841039/. 
  30. ^ “Molecular pathological epidemiology of colorectal neoplasia: an emerging transdisciplinary and interdisciplinary field”. Gut 60 (3): 397–411. (2011). doi:10.1136/gut.2010.217182. PMC 3040598. PMID 21036793. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3040598/. 
  31. ^ “The merits of subtyping obesity: one size does not fit all”. JAMA 310 (20): 2147–48. (2013). doi:10.1001/jama.2013.281501. PMID 24189835. 
  32. ^ “CpG island methylation in colorectal cancer: past, present and future”. Pathology Research International 2011: 902674. (2011). doi:10.4061/2011/902674. PMC 3090226. PMID 21559209. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3090226/. 
  33. ^ “The CpG island methylator phenotype in colorectal cancer: Progress and problems”. Biochim Biophys Acta 1825 (1): 77–85. (2012). doi:10.1016/j.bbcan.2011.10.005. PMID 22056543. https://cris.maastrichtuniversity.nl/en/publications/64ca3af6-de2b-4150-b52e-0507ac49e51c. 
  34. ^ “Gene discovery in familial cancer syndromes by exome sequencing: prospects for the elucidation of familial colorectal cancer type X.”. Mod Pathol 25 (8): 1055–68. (2012). doi:10.1038/modpathol.2012.62. PMID 22522846. 
  35. ^ “Aspirin as adjuvant therapy for colorectal cancer-reinterpreting paradigms”. Nat Rev Clin Oncol 9 (10): 561–70. (2012). doi:10.1038/nrclinonc.2012.137. PMID 22910681. 
  36. ^ “Integrative cancer epidemiology – the next generation”. Cancer Discov 2 (12): 1087–90. (2012). doi:10.1158/2159-8290.cd-12-0424. PMC 3531829. PMID 23230187. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3531829/. 
  37. ^ “Lipogenesis and lipolysis: The pathways exploited by the cancer cells to acquire fatty acids”. Prog Lipid Res 52 (4): 585–89. (2013). doi:10.1016/j.plipres.2013.08.005. PMC 4002264. PMID 24001676. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4002264/. 
  38. ^ “New Insights on Bariatric Surgery Outcomes”. JAMA 310 (22): 2401–02. (2013). doi:10.1001/jama.2013.280927. PMID 24189645. 
  39. ^ “Harnessing evolutionary biology to combat infectious disease”. Nature Medicine 18 (2): 217–20. (2012). doi:10.1038/nm.2572. PMC 3712261. PMID 22310693. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3712261/. 
  40. ^ “Evolutionary epidemiology: preparing for an age of genomic plenty”. Phil Trans R Soc B 368 (1614): 20120193. (2013). doi:10.1098/rstb.2012.0193. PMC 3678320. PMID 23382418. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3678320/. 
  41. ^ Wiemken, Timothy L.; Kelley, Robert R. (2020). “Machine Learning in Epidemiology and Health Outcomes Research”. Annual Review of Public Health 41: 21–36. doi:10.1146/annurev-publhealth-040119-094437. PMID 31577910. 
  42. ^ Bi, Qifang; Goodman, Katherine E.; Kaminsky, Joshua; Lessler, Justin (2019). “What is Machine Learning? A Primer for the Epidemiologist”. American Journal of Epidemiology 188 (12): 2222–2239. doi:10.1093/aje/kwz189. PMID 31509183. 
  43. ^ Walker, Mark (2023). Digital Epidemiology (1 ed.). Sheffield, U.K.: Sicklebrook publishing. ISBN 9781470920364 
  44. ^ 松田 誠 著 「脚気をなくした男 高木兼寛伝」 講談社 ISBN 4-06-204487-0
  45. ^ 倉迫 一朝 著 「病気を診ずして病人を診よ 麦飯男爵 -高木 兼寛の生涯-」 鉱脈社 ISBN 4-906008-31-3
  46. ^ a b c "Principles of Epidemiology." Key Concepts in Public Health. London: Sage UK, 2009. Credo Reference. 1 August 2011. Web. 30 September 2012.
  47. ^ Eysenbach, Gunther (May 2011). “Infodemiology and Infoveillance”. American Journal of Preventive Medicine 40 (5): S154–S158. doi:10.1016/j.amepre.2011.02.006. ISSN 0749-3797. PMID 21521589. https://doi.org/10.1016/j.amepre.2011.02.006. 
  48. ^ Eysenbach, Gunther (2009-03-27). “Infodemiology and Infoveillance: Framework for an Emerging Set of Public Health Informatics Methods to Analyze Search, Communication and Publication Behavior on the Internet” (英語). Journal of Medical Internet Research 11 (1): e11. doi:10.2196/jmir.1157. ISSN 1438-8871. PMC 2762766. PMID 19329408. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2762766/. 
  49. ^ Wyatt, J C (2002-11-01). “Basic concepts in medical informatics”. Journal of Epidemiology & Community Health 56 (11): 808–812. doi:10.1136/jech.56.11.808. PMC 1732047. PMID 12388565. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1732047/. 
  50. ^ Mackey, Tim; Baur, Cynthia; Eysenbach, Gunther (2022-02-14). “Advancing Infodemiology in a Digital Intensive Era” (英語). JMIR Infodemiology 2 (1): e37115. doi:10.2196/37115. PMC 9987192. PMID 37113802. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9987192/. 
  51. ^ Mavragani, Amaryllis (2020-04-28). “Infodemiology and Infoveillance: Scoping Review” (英語). Journal of Medical Internet Research 22 (4): e16206. doi:10.2196/16206. PMC 7189791. PMID 32310818. https://www.jmir.org/2020/4/e16206. 
  52. ^ Song, Jae W.; Chung, Kevin C. (December 2010). “Observational Studies: Cohort and Case-Control Studies” (英語). Plastic and Reconstructive Surgery 126 (6): 2234–2242. doi:10.1097/PRS.0b013e3181f44abc. ISSN 0032-1052. PMC 2998589. PMID 20697313. http://journals.lww.com/00006534-201012000-00058. 
  53. ^ Hennekens, Charles H.; Julie E. Buring (1987). Mayrent, Sherry L.. ed. Epidemiology in Medicine. Lippincott, Williams and Wilkins. ISBN 978-0-316-35636-7. https://archive.org/details/epidemiologyinme00henn 
  54. ^ Woodward, James (2010). “Causation in biology: stability, specificity, and the choice of levels of explanation.”. Biology & Philosophy 25 (3): 287–318. doi:10.1007/s10539-010-9200-z. http://philsci-archive.pitt.edu/4813/1/09.doc. 
  55. ^ Rothman, Kenneth J. (1986). Modern Epidemiology. Boston/Toronto: Little, Brown and Company. ISBN 978-0-316-75776-8. https://archive.org/details/modernepidemiolo0000roth 
  56. ^ Rothman, Kenneth J. (2012). Epidemiology : An introduction (2nd ed.). New York, NY: Oxford University Press. pp. 24. ISBN 978-0-19-975455-7. OCLC 750986180. https://www.worldcat.org/oclc/750986180 
  57. ^ a b c d e f g h i j k Hill, Austin Bradford (1965). “The Environment and Disease: Association or Causation?”. 王立医学協会会報英語版 58 (5): 295–300. doi:10.1177/003591576505800503. PMC 1898525. PMID 14283879. http://www.edwardtufte.com/tufte/hill. 
  58. ^ Phillips, Carl V.; Karen J. Goodman (October 2004). “The missed lessons of Sir Austin Bradford Hill”. Epidemiologic Perspectives and Innovations 1 (3): 3. doi:10.1186/1742-5573-1-3. PMC 524370. PMID 15507128. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC524370/. 
  59. ^ Green, Michael D.; D. Michal Freedman, and Leon Gordis. Reference Guide on Epidemiology. Federal Judicial Centre. オリジナルの27 February 2008時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080227143925/http://www.fjc.gov/public/pdf.nsf/lookup/sciman06.pdf/$file/sciman06.pdf 2008年2月3日閲覧。 
  60. ^ Measuring Health and Disease I: Introduction to Epidemiology”. 2011年8月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年12月16日閲覧。
  61. ^ Smetanin, P.; P. Kobak (October 2005). Interdisciplinary Cancer Risk Management: Canadian Life and Economic Impacts (PDF). 1st International Cancer Control Congress. 2014年2月2日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2013年8月2日閲覧
  62. ^ Smetanin, P.; P. Kobak (July 2006). A Population-Based Risk Management Framework for Cancer Control. The International Union Against Cancer Conference. 2014年2月2日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。
  63. ^ Smetanin, P.; P. Kobak (July 2005). Selected Canadian Life and Economic Forecast Impacts of Lung Cancer. 11th World Conference on Lung Cancer. 2014年2月2日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。
  64. ^ WHO, "Health topics: Epidemiology." Archived 9 May 2020 at the Wayback Machine. Accessed: 30 October 2017.
  65. ^ Miquel Porta. A Dictionary of Epidemiology. http://global.oup.com/academic/product/a-dictionary-of-epidemiology-9780199976737?cc=us&lang=en Archived 11 July 2017 at the Wayback Machine. 6th edition, New York, 2014 Oxford University Press ISBN 978-0-19-997673-7 Accessed: 30 October 2017.
  66. ^ Prudhon, C & Spiegel, P. "A review of methodology and analysis of nutrition and mortality surveys conducted in humanitarian emergencies from October 1993 to April 2004" Emerging Themes in Epidemiology 2007, 4:10. http://www.ete-online.com/content/4/1/10 Archived 23 October 2015 at the Wayback Machine. Accessed: 30 October 2017.
  67. ^ Roberts, B et al. "A new method to estimate mortality in crisis-affected and resource-poor settings: validation study." International Journal of Epidemiology 2010; 39:1584–96. Accessed: 30 October 2017.
  68. ^ Zhang Stephen X; Marioli Francisco Arroyo; Gao Renfei; Wang Senhu (2021). “When is an epidemic an epidemic?”. Risk Management and Healthcare Policy 14: 3775–3782. doi:10.2147/RMHP.S326051. PMC 8448159. PMID 34548826. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8448159/. 
  69. ^ a b Ioannidis, J. P. A.; Tarone, R.; McLaughlin, J. K. (2011). “The False-positive to False-negative Ratio in Epidemiologic Studies”. Epidemiology 22 (4): 450–56. doi:10.1097/EDE.0b013e31821b506e. PMID 21490505. 
  70. ^ a b Hernán, M. A.; Hernández-Díaz, S.; Robins, J. M. (2004). “A structural approach to selection bias”. Epidemiology 15 (5): 615–25. doi:10.1097/01.ede.0000135174.63482.43. PMID 15308962. 
  71. ^ a b [1] Archived 29 August 2017 at the Wayback Machine. 24
  72. ^ a b Rothman, K. (2002). Epidemiology: An Introduction. Oxford: Oxford University Press. ISBN 978-0195135541. https://archive.org/details/epidemiology00kenn 
  73. ^ a b c “Confounding in Health Research”. Annu. Rev. Public Health 22: 189–212. (2001). doi:10.1146/annurev.publhealth.22.1.189. PMID 11274518. 
  74. ^ Public Health Studies”. Public Health Studies at Johns Hopkins (2013年6月6日). 2017年4月13日閲覧。
  75. ^ Ask the Expert: The Epidemiology of COVID-19”. SCUSM. 2020年6月11日閲覧。

文献

関連項目

外部リンク