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「オオカブト属」の版間の差分

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'''ヘラクレスオオカブト属'''(ヘラクレスオオカブトぞく)は、[[昆虫綱]][[甲虫目]][[カブトムシ亜科]]に属する代表的な分類群。'''オオツノカブト属'''とも呼ばれる{{Sfn|清水輝彦|2015|p=98}}。[[アメリ合衆国]]東部から[[ラジル]]南部にかけて8種12亜種が分布し一部の種は[[海]]諸国にも分布する{{Sfn|清水輝彦|2015|p=98}}。[[中南米]]を中心に分布する。大型の甲虫で胸角がよく発達し、内側にビロードの毛を有す。この属には'''[[シロカブト]]'''と呼ばれる複数の種が含まれる。属名は[[ギリシャ神話]]の英雄[[ヘーラクレース]]と[[エラト (曖昧さ回避)|エラト]]の子デュナステスにちなむ
'''ヘラクレスオオカブト属'''(ヘラクレスオオカブトぞく)は、[[昆虫綱]][[甲虫目]][[カブトムシ亜科]]に属する代表的な分類群。'''オオカブト属'''{{Sfn|小林一秀|2022|p=6}}、'''オオカブトムシ属'''{{Sfn|海野和男|2006|p=205}}{{Sfn|永井信二|2006|p=8}}'''オオツノカブト属'''{{Sfn|清水輝彦|2015|p=98}}{{Sfn|BE・KUWA|2016|p=15}}、'''ディナステス属'''{{Sfn|水沼哲郎|1999|p=110}}呼ばれる。


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学名から'''ディナステス属'''と呼ぶこともある。


== 分類 ==
== 分類 ==
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: ヘルクレスオオカブトともいう。
: ヘルクレスオオカブトともいう。
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: オスの成虫は頭角と胸角が共に長く、内側には毛が生える。前翅は黄褐色だが、稀に水色の個体もあらわれ珍重される。
: オスの成虫は頭角と胸角が共に長く、内側には毛が生える。前翅は黄褐色だが、稀に水色の個体もあらわれ珍重される。
: 多くの亜種に分かれ、その生息地域によって、同じ種とは思えないほど、大きさと個体変異の差が顕著に出てくるのも本種の特徴である。
: 多くの亜種に分かれ、その生息地域によって、同じ種とは思えないほど、大きさと個体変異の差が顕著に出てくるのも本種の特徴である。
: 世界最大のカブトムシだけにペット人気は非常に高く、本属では最も輸入量が多く、それ故に飼育人口も個体数も多いのが本種である。
: 世界最大のカブトムシだけにペット人気は非常に高く、本属では最も輸入量が多く、それ故に飼育人口も個体数も多いのが本種である。
; [[ネプチューンオオカブト]] ''Dynastes neptunus'' [[:en:Neptune beetle|Neptune beetle]]
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: ヘラクレスオオカブトに次2番目に大きいカブトムシとされる。
: ヘラクレスオオカブトに次いで2番目に全長が長いカブトムシとされる{{Sfn|坪井源幸|2002|p=155}}。オスの最長個体は、人工繁殖下では全長157.3&nbsp;mmが記録されている<ref name="bekuwa2023"/>
: ヘラクレスオオカブトとは別に黒い前翅の他に、1対の突起が胸角の代わりに胸部両側に付くことから区別できる。脚の跗節の形状からサタンオオカブトとの近縁関係が指摘されている。
: ヘラクレスオオカブトとは別に黒い前翅の他に、1対の突起が胸角の代わりに胸部両側に付くことから区別できる。脚の跗節の形状からサタンオオカブトとの近縁関係が指摘されている。
: 種小名の由来は[[ローマ神話]]の[[海神]][[ネプトゥヌス]](ネプチューン)。[[ベネズエラ]]に生息する亜種''D. neptunus rouchei'' は若干小型で、頭角の最大の突起が基部寄りである。
: 種小名の由来は[[ローマ神話]]の[[海神]][[ネプトゥヌス]](ネプチューン)。[[ベネズエラ]]に生息する亜種''D. neptunus rouchei'' は若干小型で、頭角の最大の突起が基部寄りである。
; [[サタンオオカブト]] ''Dynastes satanas'' [[:en:Satanas beetle|Satanas beetle]]
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: [[ボリビア]]の限られた地域に生息する。以前は生息地がはっきりせず、幻とも呼ばれ珍重されてきた。
: [[ボリビア]]の限られた地域に生息する。以前は生息地がはっきりせず、幻とも呼ばれ珍重されてきた。オスの最長個体は、人工繁殖下では全長114.3&nbsp;mmが記録されている<ref name="bekuwa2023"/>
: ビロード状の毛が胸角の裏のほか翅などに覆われていない柔らかい部分にもびっしり生えている。
: ビロード状の毛が胸角の裏のほか翅などに覆われていない柔らかい部分にもびっしり生えている。
; [[グラントシロカブト]] ''Dynastes grantii''
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: [[アメリカ合衆国]][[アリゾナ州]]などの[[砂漠]]地帯に生息する。カブトムシ類には珍しく、全身が白である。現地での採集は禁止されている。
: [[アメリカ合衆国]][[アリゾナ州]]などの[[砂漠]]地帯に生息する。カブトムシ類には珍しく、全身が白である。現地での採集は禁止されている。オスの最長個体は、人工繁殖下では全長89.1&nbsp;mmが記録されている<ref name="bekuwa2023"/>
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: 名は[[南北戦争]]の北軍最高司令官で[[アメリカ合衆国]]第18代[[大統領]]となった[[ユリシーズ・S・グラント]]に由来するという説とアリゾナ州の旧陸軍基地[[フォート・グラント]]([[:en:Fort Grant, Arizona|Fort Grant]])に由来するという説がある。
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: 白に濃い黄色の混じった色合いをしており、時に黄金と形容される。[[サンタマルタ山脈]]には[[ミゲル・アンヘル・モロン=リオス]](Miguel Ángel Moron-Ríos)に献名された亜種[[モロンオオカブト]](''D. hyllus moroni'' Nagai)が生息する。同亜種のオスの最長個体は、人工繁殖下では全長105.1&nbsp;mmが記録されている<ref name="bekuwa2023"/>
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: [[アメリカ合衆国]]東部に分布する。色はヒルスシロカブトに近い。オスの最長個体は、人工繁殖下では全長69.5&nbsp;mmが記録されている<ref name="bekuwa2023"/>
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; [[マヤシロカブト]] ''Dynastes maya''
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: メキシコ南部[[プエブラ州]][[テフアカン]]にのみ棲息する。
: メキシコ南部[[プエブラ州]][[テフアカン]]にのみ棲息する。
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
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* {{Cite book|和書 |title=テナガコガネ・カブトムシ (Giant Beetles Euchirinae・Dynastinae) |publisher=ESI |date=1999-04-24 |ref={{SfnRef|水沼哲郎|1999}} |author=水沼哲郎 |series=コレクションシリーズ (Endless Collection Series) |volume=3}}
* {{Cite book|和書 |title=カブト・クワガタ・ハナムグリ300種図鑑 |publisher=ピーシーズ |date=2002-07-10 |page= |pages= |ref={{SfnRef|坪井源幸|2002}} |author=坪井源幸 |isbn=978-4938780685 |author2=[[内山りゅう]]、ピーシーズ(写真) |id={{国立国会図書館書誌ID|000004072891}}・{{全国書誌番号|20385035}}}}
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* {{Cite book|和書 |title=世界のカブトムシ(上)南北アメリカ編 |publisher=むし社 |date=2015-09-20 |ref={{SfnRef|清水輝彦|2015}} |editor=藤田宏 |series=[[月刊むし]]・昆虫図説シリーズ |isbn=978-4943955467 |ncid=BB20668537 |issue=6 |id={{国立国会図書館書誌ID|026998686}}・{{全国書誌番号|22687832}}}}
* {{Cite journal|和書|journal=BE・KUWA|title=南米のカブトムシ大特集!! > 南米のカブトムシ大図鑑|editor=(編集者)土屋利行(編集スタッフ)藤田宏・小林信之・谷角素彦・矢崎克己・飯島和彦・中村裕之・坂本伸嘉|date=2016-01-26|issue=67|pages=6-21|publisher=むし社|ref={{SfnRef|BE・KUWA|2016}}|id={{ISSN|0388-418X}}・{{国立国会図書館書誌ID|000004340722}}・{{全国書誌番号|01004593}}}} - No.58(2016年冬号)。『月刊むし』2016年3月増刊号。
* {{Cite journal|和書|journal=BE・KUWA|author=小林一秀|title=ヘラクレスオオカブト大特集!! > ヘラクレスオオカブト大図鑑|editor=(編集者)土屋利行(編集スタッフ)藤田宏・小林信之・谷角素彦・矢崎克己・飯島和彦・中村裕之・坂本伸嘉・阪本優介|date=2022-07-13|issue=84|pages=6-39|publisher=むし社|ref={{SfnRef|小林一秀|2022}}|id={{ISSN|0388-418X}}・{{国立国会図書館書誌ID|000004340722}}・{{全国書誌番号|01004593}}}} - No.84(2022年夏号)。『月刊むし』2022年8月増刊号。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2024年1月14日 (日) 10:34時点における版

ヘラクレスオオカブト属 Dynastes
ヘラクレスオオカブト D. hercules
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: コウチュウ目(鞘翅目) Coleoptera
上科 : コガネムシ上科 Scarabaeoidea
: コガネムシ科 Scarabaeidae
亜科 : カブトムシ亜科 Dynastinae
: カブトムシ族 Dynastini
: ヘラクレスオオカブト属 Dynastes L., 1758

本文参照

ヘラクレスオオカブト属(ヘラクレスオオカブトぞく)は、昆虫綱甲虫目カブトムシ亜科に属する代表的な分類群。オオカブト属[1]オオカブトムシ属[2][3]オオツノカブト属[4][5]ディナステス属[6]とも呼ばれる。

アメリカ合衆国東部からブラジル南部にかけて8種12亜種が分布し、一部の種はカリブ海諸国にも分布する[4]中南米を中心に分布する。大型の甲虫で、胸角がよく発達し、内側にビロードの毛を有す。この属にはシロカブトと呼ばれる複数の種が含まれる。属名はギリシャ神話の英雄ヘーラクレースエラトの子デュナステスにちなむ。

分類

ネプチューンオオカブト(D. neptunus)とサタンオオカブト(D. satanus)については、前翅が常に黒いなどの違った特徴があり、雄の脚の跗節に明らかな差異が認められることから、カバイロオオカブト属Theogenes)または亜属とすることもある。この説はもともと1847年にドイツの昆虫学者ヘルマン・バーマイスターHermann Burmeister)によって唱えられたものだが、長い間広くは認められておらず、最近になって見直されている。

ただし、カバイロオオカブト亜属とヘラクレスオオカブトが交雑可能であることも実験によって確認されている。

種類

ヘラクレスオオカブト Dynastes hercules Hercules beetle
ヘルクレスオオカブトともいう。
全長が世界最大になるカブトムシとして著名で、オスの最大個体は野生下では全長172.7 mm[7]、人工繁殖下で全長182.8 mmがそれぞれ記録されている[8][9]。原名亜種はssp. hercules hercules
オスの成虫は頭角と胸角が共に長く、内側には毛が生える。前翅は黄褐色だが、稀に水色の個体もあらわれ珍重される。
多くの亜種に分かれ、その生息地域によって、同じ種とは思えないほど、大きさと個体変異の差が顕著に出てくるのも本種の特徴である。
世界最大のカブトムシだけにペット人気は非常に高く、本属では最も輸入量が多く、それ故に飼育人口も個体数も多いのが本種である。
ネプチューンオオカブト Dynastes neptunus Neptune beetle
ヘラクレスオオカブトに次いで2番目に全長が長いカブトムシとされる[10]。オスの最長個体は、人工繁殖下では全長157.3 mmが記録されている[8]
ヘラクレスオオカブトとは別に黒い前翅の他に、1対の突起が胸角の代わりに胸部両側に付くことから区別できる。脚の跗節の形状からサタンオオカブトとの近縁関係が指摘されている。
種小名の由来はローマ神話海神ネプトゥヌス(ネプチューン)。ベネズエラに生息する亜種D. neptunus rouchei は若干小型で、頭角の最大の突起が基部寄りである。
サタンオオカブト Dynastes satanas Satanas beetle
ボリビアの限られた地域に生息する。以前は生息地がはっきりせず、幻とも呼ばれ珍重されてきた。オスの最長個体は、人工繁殖下では全長114.3 mmが記録されている[8]
ビロード状の毛が胸角の裏のほか翅などに覆われていない柔らかい部分にもびっしり生えている。
グラントシロカブト Dynastes grantii
アメリカ合衆国アリゾナ州などの砂漠地帯に生息する。カブトムシ類には珍しく、全身が白である。現地での採集は禁止されている。オスの最長個体は、人工繁殖下では全長89.1 mmが記録されている[8]
名は南北戦争の北軍最高司令官でアメリカ合衆国第18代大統領となったユリシーズ・S・グラントに由来するという説とアリゾナ州の旧陸軍基地フォート・グラントFort Grant)に由来するという説がある。
ヒルスシロカブト Dynastes hyllus Hyllus beetle
中央アメリカに分布する。オスの最長個体は、人工繁殖下では全長98.2 mmが記録されている[8]
白に濃い黄色の混じった色合いをしており、時に黄金と形容される。サンタマルタ山脈にはミゲル・アンヘル・モロン=リオス(Miguel Ángel Moron-Ríos)に献名された亜種モロンオオカブトD. hyllus moroni Nagai)が生息する。同亜種のオスの最長個体は、人工繁殖下では全長105.1 mmが記録されている[8]
ティティウスシロカブト Dynastes tityus Unicorn beetle
アメリカ合衆国東部に分布する。色はヒルスシロカブトに近い。オスの最長個体は、人工繁殖下では全長69.5 mmが記録されている[8]
マヤシロカブト Dynastes maya
メキシコチャパス州グアテマラホンジュラスに分布する。オスの最長個体は、人工繁殖下では全長104.2 mmが記録されている[8]
ミヤシタシロカブト Dynastes miyashitai Miyashitai beetle
メキシコ南部プエブラ州テフアカンにのみ棲息する。

脚注

  1. ^ 小林一秀 2022, p. 6.
  2. ^ 海野和男 2006, p. 205.
  3. ^ 永井信二 2006, p. 8.
  4. ^ a b 清水輝彦 2015, p. 98.
  5. ^ BE・KUWA 2016, p. 15.
  6. ^ 水沼哲郎 1999, p. 110.
  7. ^ 吉田賢治 著「第二章 大人の甲虫学 > 世界一のカブトムシ」、オフィスJ.B(編集協力) 編『クワガタムシ・カブトムシの知られざる世界 大人のための甲虫図鑑』(初版第一刷)KKベストセラーズ、2016年8月5日、56頁。ISBN 978-4584137352NCID BB2196296X国立国会図書館書誌ID:027483413全国書誌番号:22774677 
  8. ^ a b c d e f g h (編集者)藤田宏(編集スタッフ)藤田宏・小林信之・谷角素彦・矢崎克己・飯島和彦・中村裕之(編)「世界のフタマタクワガタ大特集!! > カブトレコード個体(2023年度版)」『BE・KUWA』第87号、むし社、2023年4月18日、113頁、ISSN 0388-418X国立国会図書館書誌ID:000004340722全国書誌番号:01004593  - No.87(2023年春号)。『月刊むし』2023年6月増刊号。
  9. ^ はると (2022年7月28日). “【2023年最新版】ヘラクレスオオカブトのギネス記録が更新!190mmも夢ではない!? - ヘラクレスオオカブト専門の飼育情報サイト【ヘラクレス本舗】”. ヘラクレス本舗. 2023年7月17日閲覧。
  10. ^ 坪井源幸 2002, p. 155.

参考文献

関連項目