オオキヌタソウ

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オオキヌタソウ
広島県庄原市 2023年5月中旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : シソ類 Lamiids
: リンドウ目 Boraginales
: アカネ科 Rubiaceae
亜科 : アカネ亜科 Rubioideae
: アカネ属 Rubia
: マンセンオオキヌタソウ
R. chinensis
品種 : オオキヌタソウ
R. chinensis f. mitis
学名
Rubia chinensis Regel et Maack f. mitis (Miq.) Kitag. (1979)[1]
シノニム
  • Rubia chinensis Regel et Maack var. pedicellata (Nakai) H.Hara (1952)[2]
  • Rubia chinensis Regel et Maack var. glabrescens (Nakai) Kitag. (1939)[3]
  • Rubia chinensis Regel et Maack f. glabrescens (Nakai) Kitag. (1979)[4]
和名
オオキヌタソウ(大砧草)[5]

オオキヌタソウ(大砧草、学名Rubia chinensis f. mitis)は、アカネ科アカネ亜科アカネ属多年草[5][6][7][8]

特徴[編集]

地下茎は細く、匍匐する。群生せず孤立して生えることが多い。は直立して、高さは30-60cmになり、4稜があり、稜に鉤状の刺はない。は4個が輪生するが、この葉は2個の本来の対生する葉と2個の葉状の托葉となる。葉身は紙質で、長さ6-10cm、幅2-5cm、卵形または広披針形で、先は鋭頭、基部は円形または浅い心形となって、長さ0.5-2cmになる葉柄がある。葉に5-7個の葉脈があり、ほぼ無毛かごくまばらに短毛が生える[5][6][7][8]

花期は5-7月。茎先および茎上部の葉腋に集散花序をつけ、多数のをまばらにつける。花柄は細く、長さ1-5mmになり、毛はない。筒は鐘形で、長さおよび径は0.8-1mmになり、無毛。花冠は杯状で、径3-4mmになり、緑白色で先は4-5裂し、裂片は三角形または卵形で、長さ1.5-2mmになる。花冠裂片はつぼみ時には敷石状にたたまれる。 雄蕊は5個ある。子房は2室に分かれ、各室に1個の胚珠がある。花柱は2裂する。果実は2個の分果からなり、各分果に1個の種子がある。分果は径4-6mmの球形の液果で、黒色に熟す。分果の片方は不熟に終わることが多い[5][6][7][8]

分布と生育環境[編集]

日本では北海道、本州、四国、九州に分布し、山地の林中に生育する[5][6][7][8]。世界では、朝鮮半島中国大陸東北部に分布する[6][7][8]

名前の由来[編集]

和名オオキヌタソウは「大砧草」[5]の意で、全体に同科ヤエムグラ属に属するキヌタソウ Galium kinuta に似るが、比べるとはるかに大型なのでこの名がついた[8]

種小名(種形容語)chinensis は、「中国の」の、品種名 mitis は、「柔和な、温和な」の意味[9]。シノニム群の変種名 pedicellata は、「小花柄のある」の[10]glabrescens は、「やや無毛の」の意味[11]

種の保全状況評価[編集]

国(環境省)のレッドデータブック、レッドリストの選定はない。 都道府県のレッドデータブック、レッドリストの選定は次の通り[12]

  • 岩手県-Bランク
  • 宮城県-準絶滅危惧(NT)
  • 秋田県-絶滅危惧IB類(EN)
  • 福島県-絶滅危惧IA類(CR)
  • 群馬県-絶滅危惧IA類(CR)
  • 埼玉県-絶滅危惧II類(VU)
  • 神奈川県-絶滅危惧IA類(CR)
  • 石川県-絶滅危惧II類(VU)
  • 福井県-要注目
  • 愛知県-絶滅危惧IB類(EN)
  • 三重県-絶滅危惧IA類(CR)
  • 滋賀県-分布上重要種
  • 京都府-絶滅危惧種
  • 大阪府-絶滅危惧II類
  • 兵庫県-Bランク
  • 奈良県-絶滅危惧種
  • 和歌山県-絶滅危惧II類(VU)
  • 鳥取県-準絶滅危惧(NT)
  • 山口県-絶滅危惧II類(VU)
  • 徳島県-絶滅危惧I類(CR)
  • 愛媛県-準絶滅危惧(NT)
  • 福岡県-絶滅危惧IA類(CR)
  • 長崎県-絶滅危惧I類(CR+EN)
  • 宮崎県-準絶滅危惧(NT-r,g)

ギャラリー[編集]

マンセンオオキヌタソウ[編集]

マンセンオオキヌタソウ Rubia chinensis Regel et Maack f. chinensis[13] - 本種の分類上の基本種で、茎や葉に曲がった毛がやや密に生える。日本では本州中部地方に分布し、世界では、朝鮮半島、中国大陸東北部・北部、アムール、ウスリーに分布する[6][7][8]

分類[編集]

日本に分布するアカネ属のうち、本種とアカネムグラ Rubia jesoensis は、茎がつる性にならず直立する。本種の茎には刺はなく、葉の基部に明瞭な葉柄があり、アカネムグラの茎には下向きの小さな刺があり、葉の基部がしだいに狭まって不明瞭な葉柄となる。その他のアカネ属のアカネ R. argyiオオアカネ R. hexaphyllaクルマバアカネ R. cordifolia var. lancifolia は、茎がつる性となって茎に下向きの鉤状の刺があり、葉に葉柄がある[14]

脚注[編集]

  1. ^ オオキヌタソウ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ オオキヌタソウ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ オオキヌタソウ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  4. ^ オオキヌタソウ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  5. ^ a b c d e f 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』pp.2388-389
  6. ^ a b c d e f 『原色日本植物図鑑 草本編I(改訂版)』p.108
  7. ^ a b c d e f 内貴章世 (2017)「アカネ科」『改訂新版 日本の野生植物 4』p.289
  8. ^ a b c d e f g 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.975
  9. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1487, p.1503
  10. ^ 『小学館ランダムハウス英和大辞典』p.2002
  11. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1494
  12. ^ オオキヌタソウ、日本のレッドデータ検索システム、2023年10月3日閲覧
  13. ^ マンセンオオキヌタソウ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  14. ^ 内貴章世 (2017)「アカネ科」『改訂新版 日本の野生植物 4』pp.289-290

参考文献[編集]

  • 北村四郎、村田源、堀勝著『原色日本植物図鑑 草本編I(改訂版)』、1983年、保育社
  • 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 4』、2017年、平凡社
  • 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
  • 小学館ランダムハウス英和大辞典第二版編集委員会編『小学館ランダムハウス英和大辞典』、1994年、小学館
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  • 日本のレッドデータ検索システム

外部リンク[編集]