シトルリン血症
シトルリン血症 | |
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L-シトルリン | |
概要 | |
診療科 | 内分泌学 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | E72.2 |
ICD-9-CM | 270.6 |
OMIM | 215700 605814 603471 |
DiseasesDB | 29676 34048 |
eMedicine | ped/406 |
シトルリン血症(英語: citrullinemia、CTLN)は、血中のシトルリンの濃度が上昇する疾病。
病態[編集]
高アンモニアと高シトルリン血症をきたす疾患。
種類[編集]
酵素の異常に種類によって以下に分類される。
類型 | 症状 |
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Ⅰ型シトルリン血症 (アルギニノコハク酸合成酵素:ASS欠損症) |
旧来より乳児に生じる古典的シトルリン血症として呼ばれたもの。アルギニノコハク酸合成酵素(ASS, 英)が遺伝子欠損など何らかの原因で十分に機能しないために、尿素回路が十分に機能せずシトルリン異常高値とアルギニン低値を示し、アンモニアが高値となる。尿素サイクル異常症の一つ。 |
Ⅱ型シトルリン血症 (シトリン欠損症) |
旧来より成人期に発症する「シトルリン血症」に対して呼ばれたもの。1999年に、鹿児島大学医学部の小林圭子・佐伯武頼らによって、染色体7q21.3に存在する「SLC25A13」の異常が原因と発見され分類された。遺伝子産物はシトリンと命名され、リンゴ酸-アスパラギン酸シャトルにおいてミトコンドリアと細胞質間でアスパラギン酸とグルタミン酸の交換をするトランスポーターを担っている。シトリンが欠損することで、アスパラギン酸が低下してシトルリンが蓄積し高アンモニア血症を引き起こす。臨床像の発症時期において、一般的には以下の2つに大別され扱われる。
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Ⅲ型シトルリン血症 (アルギニノコハク酸合成酵素:ASS欠損症) |
Ⅰ型シトルリン血症と同じもの。 |
臨床像[編集]
Ⅰ型シトルリン血症[編集]
尿素サイクル異常症の一つとしてアルギニノコハク酸尿症と共に新生児マススクリーニングで検索対応されている。対応が遅れると発達遅滞を生じうる。
詳細は「尿素サイクル異常症」を参照
Ⅱ型シトルリン血症[編集]
- NICCD
- 新生児マススクリーニングで異常とされ発見される場合や、その他に遷延性黄疸・体重増加不良を呈する場合での検査で発見されることがあるが、比較的無症状であることが多いとされている。1歳頃までに自然に改善してしまうことが多い。
- FTTDCD (Failure to thrive and dyslipidemia caused by citrin deficiency)
- NICCDとCTLN2の間の時期を指し、見かけ上は健常人と変わらない時期を言う。糖質を摂取することで体調不良を生じることが多く、炭水化物や甘いものといった糖質を嫌って、豆類や乳製品といった蛋白質と脂質を好むといった特徴的な偏食となることが知られている。
- CTLN2
- 高アンモニア血症での、肝性脳症を生じることによって、原因不明の意識障害・行動異常・痙攣を繰り返すことで発見される。アンモニア値は食事時期によって変動することが知られており、食後や昼~夕食後での血液検査では高値となり、絶食後や明朝時の血液検査では正常値であることも多く、アンモニア異常なしと誤認されることもある。また、急性膵炎を繰り返したり、肝癌の発症率が高いことも知られている。
検査[編集]
基本的に遺伝子診断による確定診断がなされる。
血液検査[編集]
- 新生児マススクリーニング
- 血中アミノ酸分析
- アンモニア高値
- 膵分泌性トリプシンインヒビター(pancreatic secretory trypsin inhibitor:PSTI)
遺伝子検査[編集]
- Ⅰ型・Ⅲ型シトルリン血症::9q34 ASS遺伝子異常
- Ⅱ型シトルリン血症::SLC25A13異常
治療[編集]
Ⅰ型シトルリン血症[編集]
尿素サイクル異常症と同じ対応となる。高糖質食低蛋白食対応を指示していく。
詳細は「尿素サイクル異常症」を参照
Ⅱ型シトルリン血症[編集]
- NICCD
- FTTDCD (Failure to thrive and dyslipidemia caused by citrin deficiency)
- 上記の特徴的な偏食を無理に是正させることなく、患者の希望通りの低糖質食高蛋白高脂質食を継続させる。
- CTLN2
- 肝硬変での肝性脳症における、高アンモニア血症に対しての治療としては、一般的に低蛋白高糖質食であるが、本症例では逆に症状増悪となるため、低糖質高蛋白高脂質食で対応される。またアルギン酸投与やピルビン酸ナトリウム投与による薬物治療も行われる。アンモニア高値時の意識障害時には、肝性脳症と同じく分岐鎖アミノ酸製剤やラクチトール投与等は施行される。なお、脳浮腫時にはグリセオールは逆に意識障害を助長することになるため行われない。基本的に食事対応にても意識障害を繰り返す症例に対しては、根本治療として肝移植を考慮していく。