ダラパティ 踊るゴッドファーザー

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ダラパティ
踊るゴッドファーザー
Thalapathi
監督 マニ・ラトナム英語版
脚本 マニ・ラトナム
製作 G・ヴェンカテーシュワラン英語版
出演者 ラジニカーント
マンムーティ英語版
ショーバナ英語版
音楽 イライヤラージャ英語版
撮影 サントーシュ・シヴァン英語版
編集 スレーシュ・ウルス英語版
製作会社 G・V・フィルム
配給 G・V・フィルム
公開 インドの旗 1991年11月5日
上映時間 167分[1]
製作国 インドの旗 インド
言語 タミル語
製作費 ₹30,000,000[2]
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ダラパティ 踊るゴッドファーザー』(ダラパティ おどるゴッドファーザー、原題:Thalapathi)は、1991年に公開されたインド犯罪映画マニ・ラトナム英語版が監督を務め、ラジニカーントマンムーティ英語版ショーバナ英語版が出演している。物語は『マハーバーラタ』のカルナドゥルヨーダナの友情を基にしている。ディワーリーの時期の11月5日に公開され[3][4][5]、映画は興行的な成功を収め、批評家からも高く評価されている[6][7]。2003年にリメイク作品の『Annavru』が公開された[8]

あらすじ[編集]

キャスト[編集]

ラジニカーント
マンムーティ
ショーバナ
アルヴィンド・スワーミ
アムリーシュ・プリー
マノージュ・K・ジャヤン

製作[編集]

企画[編集]

ラジニカーントは友人のG・ヴェンカテーシュワラン英語版マニ・ラトナム英語版の兄)と映画について語り合った。ラトナムはラジニカーントと仕事をすることに関心を持ち2度面会しているが、ラジニカーントは具体的な企画を持ち合わせていなかった[12]。彼はラジニカーントを主役にした映画の構想を持っていたが、彼を起用することを躊躇していた。彼はラジニカーントが言葉にしない何かと、ラトナム自身が本当にやりたいことの両方をやりたいと望んでいた。そして、ラトナムは「『マハーバーラタ』の最高のキャラクターの一つ」であるカルナの物語を考えついた[12]。ラトナムは現実的なラジニカーントを描きたいと望んでおり、『Mullum Malarum』で彼が演じた役にその要素が全て詰まっていると感じていた[13]。ラジニカーントは本作の撮影の際の苦労について、「マニ・ラトナムは映画製作の別の学校であり、戦闘シーンでも感情を感じるように依頼してきた」と語っている[14]。ラトナムとラジニカーントがタッグを組んだ作品は本作のみとなっている[15]

キャスティング[編集]

マンムーティ英語版が演じたデヴァラージは『マハーバーラタ』のドゥルヨーダナに相当し、ラジニカーントが演じるスーリヤはカルナに相当する。この他、ショーバナ英語版の演じるスバラクシュミはドラウパディーアルヴィンド・スワーミシュリーヴィディヤー英語版が演じたアルジュンとカルヤニはアルジュナクンティーに相当する[16]。スワーミは本作が俳優デビュー作となった[17]。当初、アルジュン役にはジャヤラーム英語版を予定していたが、彼はスケジュールの都合でオファーを辞退している。彼をアルジュン役に推薦したのはマンムーティだった[18]。青年期のスーリヤ役としてクリシュナ英語版が出演することになっていたが、映画の上映時間の都合で登場シーンがなくなったため、彼の出演も取り止めとなった[19]マラヤーラム語映画の俳優マノージュ・K・ジャヤン英語版は、『Perumthachan』での彼の演技を評価したラトナムが起用を決め、彼にとって本作がタミル語映画デビュー作となった[20]

撮影[編集]

撮影監督のサントーシュ・シヴァン英語版は、本作で初めてラトナム作品に参加した[21]。ラトナムは映画の導入部を白黒シーンにすることに決め、その理由を「白黒シーンは、プロローグであることを定義付ける必要がなく、これがプロローだということを明確にします」と語っている[22]。またスーリヤの父親について描写しないことに決め、その理由を「未成年の少女の最初の恋愛は意識的に避けています。それは子供、息子であるスーリヤの物語を形作りました」と語っている[23]。「Rakkamma」「Sundari」シーンはカルナータカ州メルコート英語版チェンナケーシャヴァ寺院英語版などで撮影された[24][25]

音楽[編集]

音楽はイライヤラージャ英語版が作曲しており[26]、ラトナム作品に参加するのは本作が最後となった[27]。シヴァンによると、イライヤラージャが作曲にかけた時間は「半日」だったという[28]ラハリ・ミュージック英語版は720万ルピーで販売権を取得し、4言語のレコードを1000万枚以上販売して歴代最大規模の売り上げを記録した[29]。アルバムはガーディアンの「死ぬ前に聴くべきアルバム1000」に選ばれている[30]。「Rakkamma Kaiya Thattu」はBBCの「ワールド・トップテン・ポピュラーソング・オールタイム」の第4位に選ばれている[31]。2012年にラハリ・ミュージックは。同曲が『エージェント・ヴィノッド 最強のスパイ』で無断使用されたとして「法的措置」をとっている[32][33]

評価[編集]

批評[編集]

マニ・ラトナム

ザ・ヒンドゥーは「彼の国際的名人芸で映画を巧みに動かすと、監督のホットなペースに整えられる」と批評している[10]。インディアン・エクスプレスは「『ダラパティ 踊るゴッドファーザー』が視覚的な壮大さにもかかわらず釘付けにならない理由は、強大な悪役が不在だからです」と批評している[34]。映画史家ランドール・ガイ英語版は「ラジニカーントが主役であるにもかかわらず、映画は完全に映画製作者の手の中にあります」と批評している[35]Upperstall.comは「『ダラパティ 踊るゴッドファーザー』は古い物語から新しい楽しさを引き出すジャンル映画の再開発におけるラトナムの能力を強調している。映画のプロットは綿密に練られており、長い上映時間でも時間を感じさせず、いくつかの歌の存在感やロマンティックなサブ・プロットだけではなく、ラジニカーントのファンを喜ばせるアクションシークエンスも存在している」と批評している[36]

受賞[編集]

第39回フィルムフェア賞 南インド映画部門英語版

反響[編集]

C・S・アムダン英語版は映画について「まさに時代に先駆けていた」と称賛し、「知的で面白い映画」と表現している。彼が2010年に製作した『Thamizh Padam』には本作のオマージュシーンが存在する[37]アトリー英語版は自身のキャリアに大きな影響を与えた作品として本作を挙げている[38]カールティク・スッバラージ英語版は幼少時代に映画を鑑賞し、彼が2015年に監督した『Jigarthanda』では本作について言及している。ラジニカーントの娘サウンダリヤー・ラジニカーントは「『ダラパティ 踊るゴッドファーザー』の公開初日の最初の上映を観に行き、そのことは今でも鮮明に覚えています」と語っている[39]。彼女が2014年に製作した『Kochadaiiyaan』では、主演を務めた父ラジニカーントに本作のスーリヤをイメージした髪形にセットさせている[40]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l Rangan 2012, p. 291.
  2. ^ Shetty, Kavitha; Kumar, Kalyan; Viswanathan, Anand (1991年11月15日). “Mani Rantam's multicrore film promises electrifying experience with southern superstar cast”. India Today. オリジナルの2019年9月17日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160628010308/http://indiatoday.intoday.in/story/mani-rantams-multicrore-film-promises-electrifying-experience-with-southern-superstar-cast/1/319072.html 2013年10月15日閲覧。 
  3. ^ “Thalapathi”. The Indian Express: p. 11. (1991年11月5日). https://news.google.com/newspapers?nid=P9oYG7HA76QC&dat=19911105&printsec=frontpage&hl=en 2018年10月13日閲覧。 
  4. ^ “When Deepavali Was Not About Big-Budget Releases, But About Feel-Good Films & Friendly Box-Office Fights” (英語). Silverscreen.in. (2017年10月18日). https://silverscreen.in/tamil/features/when-deepavali-was-not-about-big-budget-releases-but-about-feel-good-films-friendly-box-office-fights/ 2017年10月28日閲覧。 
  5. ^ Kamath, Sudhish; Manigandan, K. R. (2012年11月12日). “Blasts from the past” (英語). The Hindu. ISSN 0971-751X. http://www.thehindu.com/features/cinema/blasts-from-the-past/article4090657.ece 2017年10月28日閲覧。 
  6. ^ Happy Birthday Rajinikanth: How the superstar came to be”. Indian Express (2015年12月12日). 2016年5月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月13日閲覧。
  7. ^ Rajinikanth's 50 legendary posters”. Hindustan Times. 2013年12月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年2月29日閲覧。
  8. ^ Tamil film Raam to be remade in Kannada”. The Times of India (2013年3月26日). 2016年9月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月8日閲覧。
  9. ^ Rangarajan, Malathi (2012年8月23日). “Candour, Charuhasan style” (英語). The Hindu. ISSN 0971-751X. http://www.thehindu.com/features/cinema/candour-charuhasan-style/article3811342.ece 2018年4月5日閲覧。 
  10. ^ a b Rajinikanth 12.12.12: A Birthday Special. The Hindu. p. 73 
  11. ^ Ghosh, Devarsi (2017年11月10日). “Violins please in cover of Ilaiyaaraja’s ‘Rakkamma’ from ‘Thalapathi’”. Scroll.in. 2018年5月9日閲覧。
  12. ^ a b Rangan 2012, pp. 106–107.
  13. ^ Rangan 2012, p. 108.
  14. ^ Rajini talks about his Thalapathi experiences”. Behindwoods.com (2014年4月15日). 2015年4月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月17日閲覧。
  15. ^ Ramachandran 2014, p. 135.
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  20. ^ From across the border”. 2003年11月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月17日閲覧。
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  22. ^ Rangan 2012, pp. 104–105.
  23. ^ Rangan 2012, p. 05.
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  27. ^ Rangan 2012, p. 132.
  28. ^ Ramachandran 2014, p. 140.
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  33. ^ Saif pays the price for using old songs in Agent Vinod”. Hindustantimes.com (2012年4月2日). 2014年10月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月17日閲覧。
  34. ^ “Thalapathi”. The Indian Express. (1991年11月8日). https://news.google.com/newspapers?nid=P9oYG7HA76QC&dat=19911108&printsec=frontpage&hl=en 2017年7月25日閲覧。 
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  36. ^ Ramnath, Nandini. “Thalapathi”. Upperstall.com. 2017年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年7月25日閲覧。
  37. ^ Everything You Know about Tamil Films Is Probably Wrong” (英語). OPEN Magazine. 2017年9月23日閲覧。
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  40. ^ Mani Ratnam inspired to make Kochadaiyaan! - The Times of India”. Timesofindia.indiatimes.com (2012年4月4日). 2015年7月17日閲覧。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]