ノート:アイディア・表現二分論

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日本パートの検証にご協力下さい[編集]

当記事に密接に関連する「著作権法 (アメリカ合衆国)」では現在、秀逸な記事の選考を行っておりまして、講評者の@かんぴさんからアイディア・表現二分論に関し、的確なご指摘を頂いています。念のためこちらのノートページでも共有させて頂きます。本当に日本はキレイにアイディアと表現を横割りにできていないのかは、「Tシャツ事件」「博多人形事件」「木目化粧紙事件」の中身を精査しないと、なんとも具体的なことが言えないのですが、3本の判例検証に時間がとれない状況です。日本パートを加筆して下さるご協力者がおられると、嬉しいのですが。。。--ProfessorPine会話2019年8月27日 (火) 12:20 (UTC)[返信]

近い内に日本パートを補充してみますが、現行の記事は全体的に(山本隆司2008)に依拠し過ぎではないでしょうか。ファイル:Copyright IdeaExpDivide Ja.pngの図に「日本は実用的な産業財と文化的な芸術品で分ける縦割りの発想が強い」という説明で添えると、まるで芸術分野であれば抽象的アイデアまでも日本国著作権法が保護しているように読者に誤解させますよ。実際の(山本隆司2008,p.11)も
日本においては一部で、特許法と著作権法の違いは…(中略)…いわば縦割りの概念で理解されていた。(太文字は引用者)
というもう少し慎重な言い回しですし、本記事は「日本の著作権は縦割り」を強調・断定し過ぎのように思います。他の著作権法解説書でそのような説明されているのを私は読んだことがありません。ほとんどの日本国著作権法の解説書でも、アイデアは著作権保護しないのが原則という説明から始まると記憶しています。(山本隆司2008)ではプログラム権法を例に出していますが、正直、昔の話すぎるのではと思います。現行の日本国著作権法はプログラムの著作物を例示しています。本記事でも書かれているように、応用美術・商業デザインまわりで意匠権との所掌範囲問題が日本国著作権法には未だに残っており、応用美術・商業デザイン関係では創作性を厳しく見積もるべきかどうかで揺れているのは、よく解説される点ではあります。しかし、それ以外に日本の著作権はとくに縦割りであるといえるような事例は思い当たりませんが。
あと、アイディア・表現の分別に「公共性」という言葉を導入する(山本隆司2008)の説明は、あまりいいものじゃないと個人的には思いますけどね…… 「公共性」が高いか低いかを論点にすると、「社会にとって有益かどうか」が論点になってしまいます。そうすると、具体的な表現で書かれた書籍や論文は、社会にとってあまり有益でないから保護されるというおかしな結論が導かれることになると思います。こういった考え方は、著作物性判定で避けるべきとされる、例えば裁判官が美術品を美しいと感じるか醜い感じるかで判別することに繋がってしまいます。公共性が高い低いではなく、著作物性判定の肝は、あくまでも個性感得の可否・抽象度の高低だと思いますけどね。--Yapparina会話2019年8月29日 (木) 16:00 (UTC)[返信]
  • @Yapparinaさん: 詳細コメント頂きありがとうございます。まず米国について。図書館から借りた本の返却日が迫る中で突貫工事で書いた記憶があり、やや読み込みが甘かったと思います。9月中旬に山本氏の書籍と、Leaffer氏の書籍を再度借りる予定なので、著作権法 (アメリカ合衆国)の全体見直しの際に合わせてアイディア・表現二分論の方も修正をかけていこうと思います。
この記事を執筆した後、著作権法 (フランス) も手がけた結果、日米以外の差異も少しずつ見えてきました。その結果、アイディア・表現二分論については、概念的には各国共通に見えて、実運用では国ごとに随分違うという印象を持つようになりました。
図についてですが、「公共性」の概念は米国に関しては正しい軸だと思います。それは産業政策理論をとっているためです。つまり産業政策上、独占権を創作者に与えた方が良いのか、利用の自由を認めた方がいいのか、損得勘定で線引きしているところがあります。したがってロビイング圧力の強い産業のみ、独占権の保護が強まる傾向が米国にはあります。一方の大陸法系諸国は、自然権・所有権だという概念が強いので、公共性という軸より、所有権の軸の方が強いのかもしれません。となると、現在の図についてはアイディア・表現二分論全体の説明ではなく、米国パート限定で使用した方がいいのかもしれません (もちろん図は書籍再読の上で改良する前提で)。
日本に関して言うと、著作権法の和書のメジャーどころを読んでいると、アイディア・表現二分論の説明が途中から産業・芸術の分け方にすり替わっていることがあり、どうも米国ともフランスともズレがあるような感じがします。これは日本著作権法の第1条で「文化の発展に寄与することを目的とする」と書かれており、第2条の2で著作物の定義を「思想又は感情を創作的に表現したもの」としていることから、文化芸術ではない産業財の表現について、著作権で保護する法的根拠が弱いという特性があると思います。そして後からプログラム保護の条文を付け加えたので、学説・理論上の整合性が十分に取れていないというか。また、私が知る限り、実際にプログラムなどの産業財に関し、著作権侵害で大規模訴訟に発展したケースを見かけたことがなく、実態として産業財の保護に著作権法がそこまで活用されていないのではないかという印象を持っています。特許権と著作権両方で提訴しても、著作権では法廷で受理されていないケースもあって、埋没している可能性も。
もしYapparinaさんが日本パートを加筆頂けるならば、今挙がっているTシャツ事件など以外に、もう少し幅を広げてリサーチ頂けると大変助かります。「著作権判例百選」(『別冊ジュリスト』、有斐閣、2019年収録) を以前斜め読みしたのですが、以下の判例はもしかしたらアイディア・表現二分論の文脈でも使えるかもしれません。目次をメモっただけなので、各判決の中身まで見ていないのでハズレもあるかもしれませんが。
  • 旅nesPro事件 - 知財高判平成28・1・19 (判例集未登載)。争点は「データベースの類似性」
  • 激安ファストファッション事件 - 知財高判平成26・8・28 (判時2238号91頁)。争点は「応用美術の分離可能性説」。たぶん米国のメイザー判決に近い?
  • 武蔵事件 - 知財高判平成17・6・14 (判時1911号138頁)。争点は「アイディア・表現二分論」の散在するアイディア。
  • 会社パンフ事件 - 東京高判平成7・1・31 (判時1525号150頁)。争点は「アイディア・表現二分論」の選択と配列の相補性。たぶん米国のセルデン対ベーカー判決に近い?
フランスに関して言うと、応用美術にまで著作権保護を認めると条文で明文化しており、自動車のデザインなども保護対象になっていますし、流行で変動しやすいファッションデザインまで著作物として明文化しています (著作権法_(フランス)#著作物のジャンル参照)。米国では応用美術は保護外になるケースが多く、ファッションも認めるべきか最近も最高裁で争ったばかりなので、まだ揺れ動いています。このあたりの「産業と芸術の中間」は、日本ではどうなっているのかも気になるところです。--ProfessorPine会話2019年8月31日 (土) 05:22 (UTC)[返信]
ノート:アイディア・表現二分論/草案20190831 を作って変更案を作成中です。日本のケースをもう少し加筆する予定ですが、ひとまずこっちにお知らせしておきます。
参考情報ありがとうございます。「著作権判例百選」は使っておりますが、手持ちが第4版なのでそちらを使っております。機会があれば第6版も読んでみます。
「公共性」についてですが、二分論のバックグラウンドの説明としては理解できます。ただ、「公共性」という語を前面に立てて説明するのは他にあまり見ないなぁ、と思った次第です。私の理解としてはどっちかというと「抽象度が高い」→「公共性が高い可能性」→「著作権保護しない」の順なんですが、記事だと「公共性が高い」→「抽象度が高い」→「著作権保護しない」みたいな順になっているように読み取れたので気になりました。説明としてはあってもいいと思うのですが、草案では、普遍的説明と誤解させないように段落頭に一文を追加させてもらいました。
日本ケースを追加するだけでなく、気になったので他にも手を加えましたので、現在の草案について以下説明します。
  • 「日本の著作権は縦割りで二分論を破っている」云々の話ですが、やはりバッサリ消すべきだと思います。まず今のところ「日本の著作権は縦割り」的解説が見つかっているのは(山本隆司2008)だけです。その説明も米国著作権法の説明に入る前のつまみ程度に触れているだけです。そして、(山本隆司2008 p.11)を改めて確認すると、「日本においては一部で…(中略)…いわば縦割りの概念で理解されていた。」と過去形の文なんですよね。現在も「理解されている」とか記してません。また、二分論が日本も含めて国際的に受容されているものだとはっきり述べているものは、私が把握している範囲でも(髙部眞規子2012)や(島並良・上野達弘・横山久芳2009)など存在します。このように再考すると、説明を帰属化する程度でも足りず、はっきり全部消しておくべきだと思います。
  • 応用美術の件も再考しましたが、二分論が守られていない例として応用美術の著作物性の話を採り上げるのも、やはり止めるべきだと思います。まず、ProfessorPineさんもご存じのように、応用美術に該当するものだと著作物認定が厳しめにジャッジされたりして揺れているという話は、別に日本に限った話ではありません。また検証可能性・出典の観点からみても、応用美術著作物性の話を二分論と関連付けて論じているものを見たことがありません。(山本隆司2008 p.56)も日本の応用美術の取り扱い現状について淡々と説明しているだけで、二分論と何も関連づけていません。あとこれは私見ですが、二分論は「アイデアは保護してはいけません。表現だけを保護します」だけであり、「世の中の表現に類するものは区別せずに全て保護しないといけません」ではないですから、応用美術著作物性高め問題と二分論をからめる必要はないのではないでしょうか。応用美術著作物性高め問題は、別に二分論を破っているわけではないということです。連邦の米国著作権法でも固定していない表現を保護しないとか、そういうものはありますしね。
  • §定義と意義に、他にも不足を感じたので色々加えています。国際的立ち位置とか、アイデアという用語の意味範囲とか、実際のところすっぱり簡単に二分可能できなくて泥臭く毎回検討する必要とか。
あと、手を加えておりませんが、疑問に感じることを記しておきます。
  • (Leaffer2008)は確認できていないのですが、「混同法理」という言葉が「マージ理論」とは別物のように導入されてますが同じものですよね? Merger doctrineのMergerの訳として「混同」や「融合」という語がよく使われます。
  • 「Oracle対Google裁判」は掲載必要ですか? 二分論との関連について説明がないですし、最終判決が出ておらず評価が固まっていないものまで採り上げる必要があるのかなと思いました。
--Yapparina会話2019年9月1日 (日) 15:32 (UTC)[返信]
  • Yapparinaさん、ノートページ下の草案および細かい記述のご指摘ありがとうございます。あいにく図書館から借りた本の返却期限が迫っていまして、別件で手がふさがっている状況です。。。片付き次第、こちらに返信致しますので今しばらくお時間下さい。--ProfessorPine会話2019年9月5日 (木) 09:36 (UTC)[返信]
  • とりあえず、ノート:アイディア・表現二分論/草案20190831における私の加筆は一旦筆を置きます。武蔵事件は加筆していません。判例百選第6版で説明されているようなこの事件の論点については、加筆した会社パンフ事件で引いた(田村善之2013)の解説で間接的に説明する形になったのでもう十分かなと思いました。なにより、これ以上加筆していってもキリがなく、記事を肥大化させてしまうので。--Yapparina会話2019年9月13日 (金) 15:03 (UTC)[返信]

──────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────── Yapparinaさん、日本パートの充実した加筆、および前段の全体的な表現調整などありがとうございました。9月13日時点版の下書きを拝読しました。あとはどちらかというと私が抱えている宿題が未済なだけなので、下書きとして留め置く必要性はなく、このまま表に上書きして頂いて大丈夫だと思います。以下は私の宿題です。

  • Leaffer著の「混同法理」について: これは1回目に借りた時、「マージ理論」の訳語揺れなのかな?と思って調べたのですが分かりませんでした。広義のマージ理論ではなく、狭義のありふれた情景の理論解説文の中で混同法理が出てきたので、混同法理が広義のマージ理論を指しているという文脈には読めず、とても混乱した記憶があります。Leafferの書は数日後には手元に取り寄せできるので、再度確認してみます。
  • Oracle v. Googleについて: これは英語版 (en: Idea–expression distinction) から翻訳した際に使用されていた判例のため、残しています。当判例は細かいところまで読み切れていないので、詳しく書く自信が私にはなく、いったんそのままにしてあります。私が知る限りでは、第1審では特許権および著作権両方の侵害でOracleが提訴していて、陪審と裁判官で判断が割れています。どのような経緯なのか分からないのですが、第2審では特許権侵害はナシにして、著作権に絞って裁判を続けたようでして、これがもしかしたらアイディア・表現二分論の論点と関連している可能性が残されています。
  • 商材別の記述について: 著作権と相対する法律が特許権なのか、意匠権なのか、商標権なのかによって、実はアイディア・表現二分論の線引き方法が結構違うなぁというのが私の印象です。そのため、もう少し掘り下げて加筆していく必要があると感じています。たとえば応用美術 (実用品デザイン) であれば、『著作権法と意匠法との交錯問題に関する研究 : 応用美術委員会 ((社)著作権情報センター附属著作権研究所研究叢書 ; no.9)』のような文献があるので、将来気が向いたら借りて読もうかと思っています。またフランス著作権法では、なぜか応用美術だけは「著作権で保護する際に『新規性』を保護要件とする」となっています。通常、著作権には「表現性」や「創作性」が求められ、特許権や意匠権は「新規性」という分け方になっていると思っていたのですが。。。商標権についても、小説など言語著作物のタイトル (題号) を著作権で保護するか、国によって異なります。米国では対象外ですが、フランスは表現性や創作性があれば対象内としており、さらに商標登録して商標権と著作権で二重保護が可能です。つまり商材によって国によって、アイディア・表現二分論の定義や実運用が異なる、という点はしっかり言及すべきポイントだと思います。
  • 山本氏2008年著の再チェックについて: 残念ながら今だ取り寄せができておらず、1~2週間後ろ倒しになるかもしれません。
  • 著作権法の判例一覧 (日本) の立項: 著作権法の判例一覧 (アメリカ合衆国) の方は私が作成したのですが、需要が高いはずの日本は未だ作成されていません。米国の方は、アイディア・表現二分論のページで紹介した判例すべて、判例一覧の方にも記載していて同期がとれています。同様に日本も判例一覧をそのうち整備したいです (来年に持ち越す見通しですが)。一部転記の合意形成が必要となるため、判例一覧作成に着手できそうになったら、Yapparinaさんにもお声がけさせて頂きます。--ProfessorPine会話2019年9月14日 (土) 11:24 (UTC)[返信]

2020年6月改稿の補足[編集]

随分と間が空いてしまいましたが、追加調査した結果も踏まえて全面改稿しました (差分)。以下にポイントをまとめておきます。個人的には良質な記事 (GA) の水準には達したかなぁと思っていて、自薦しようかと考えていますが、何かご指摘事項などありましたらお願いします。

  1. アイディア・表現二分論と相反する額の汗の法理についても軽く言及し、各国の関連判例も追記
  2. アイディア・表現二分論から逸脱した「失敗」判例も追記 (迷走した歴史を語るため)
  3. 目次構成を見直し、1 - 4: 理論、5: 理論の実適用 と位置づけ、国際条約でどう定められているかは目次5に移動
  4. 世界の先進国で共通と思われる内容は、導入節に格上げして記述
  5. 逆に一国に限定される特徴は格下げして、目次5に移動
  6. 目次5にフランスを追加 (別文献でもう少し判例を補強するかもしれませんが)
  7. 目次5に「各国の相違点まとめ」節を追加 (ただしこのパートはまだピリっとしないので、あとでもう少し書き換えます)
  8. 理論的な小難しい説明ばかりだと初学者に読んでもらえないので、例をはさむ場所を工夫し、一部は箇条書き形式も使用
  9. 別称の書き方が場所によってバラつきがあったので、注釈内で統一感を持たせた書き方に変更
  10. 米国Oracle対Googleは、アイディア・表現二分論の観点で何が争点なのかを追加解説 (なので残しました)

なお、私事ですがここ数か月、首痛でウィキブレイクしておりまして、最近復帰しましたがスローペースでの対応になると思います。予めご了承下さい。--ProfessorPine会話2020年6月30日 (火) 04:15 (UTC)[返信]

報告 Wikipedia:良質な記事/良質な記事の選考/アイディア・表現二分論 20200825 を自薦しました。--ProfessorPine会話2020年8月25日 (火) 08:03 (UTC)[返信]