南海8000系電車 (初代)

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南海8000系電車 (初代)
8000系(初代) 8501
(現:南海6200系6521F)
基本情報
製造年 1975年 - 1977年
製造数 6両
引退 2001年
消滅 2001年(6200系 6521Fに改番)
主要諸元
編成 6両
軌間 1,067 mm
電気方式 直流 1500 V・架空電車線方式
最高運転速度 100 km/h
起動加速度 2.5 km/h/s
減速度(常用) 3.7 km/h/s
減速度(非常) 4.0 km/h/s
全長 (先頭車)20,825 mm
(中間車)20,725 mm
全幅 2,740 mm
全高 4,160 mm
車体 ステンレス
台車 S型ミンデン式ダイレクトマウント空気ばね台車
FS-392・392B・FS-092
主電動機 直流直巻電動機
MB-3198-A(改造前)
MB-3072-B(改造後)
主電動機出力 155 kW(改造前)
145 kW(改造後)
駆動方式 WNドライブ
歯車比 5.31 (85:16)
編成出力 2,480 kW(改造前)
2,320 kW(改造後)
制御装置 電機子チョッパ制御 CAFM-218-15RH(改造前)
抵抗制御 VMC-HTB-20FA(改造後)
制動装置 電磁直通ブレーキ
回生ブレーキ併用、抑速ブレーキ付き・改造前)
発電ブレーキ併用、抑速ブレーキ付き・改造後)
保安装置 南海型ATS
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南海8000系電車(なんかい8000けいでんしゃ)とは、南海電気鉄道がかつて保有していた一般車両(通勤形電車)の一系列である。

概要[編集]

1975年高野線難波駅 - 三日市町駅間の向けに1編成のみ製作された電機子チョッパ制御試作車である。チョッパ装置はサイリスタ素子を使用した自動可変界磁(AVF)式の三菱電機製 CAFM 型を採用し、従前の主抵抗器を廃止したほか、高速域からの回生ブレーキを可能とした。ブレーキは6000系列と同様の電磁直通ブレーキだが、回生ブレーキ併用のHSC-Rとなった。台車は同時期に製作されていた量産車の6200系と共通のS型ミンデン式である。車体も6200系と同一で一見しただけでは見分けがつかないが、電気連結器が無いことや、ブレーキ緩解時の排気音が独特のものであることが識別点である[1]

8501 - 8001 - 8002 - 8502 (1975年6月24日竣工)
8003 - 8004 (1977年6月27日竣工)

当初は4両編成で指定の運用に充当され、主に各駅停車で運転されたが、高野線列車の長編成化に対応するため、1977年に中間車2両を増備して6両編成となった[2]。1975年製車とほぼ同一仕様であるが、室内の荷棚が金網からパイプに変更された[3]ほか、電動発電機がブラシレスタイプ(BLMG)に変更された[2]

運用面では制御方式の相違のため他系列とは併結できず、常に単独で使用された。高野線の三日市町駅 - 橋本駅間では20 m車を入線可能とする複線化工事が進められていたが、同区間には連続勾配があり、また列車密度が低いため回生ブレーキを使用する場合に回生失効が起きる確率が高かった。本形式は巨大な電機子チョッパ制御器を搭載するために床下スペースに余裕がなく、回生失効時用の抑速制動用抵抗器を積めなかったため[1]1984年3月11日のダイヤ改正で他の20 m車が林間田園都市駅まで運行するようになった後も原則的に三日市町駅以南には入線しなかった[2]

本系列の営業運転での実績から省エネルギー効果は高かったが、新製コストが高いことや運用範囲が厳しく制限されることから量産は見送られ、量産型の回生ブレーキ車は界磁チョッパ制御を採用し、回生失効時には発電ブレーキへの切替機能により保安対策を充実させた8200系となった。

改造[編集]

6200系 6521F

1990年にチョッパ制御器の老朽化対策としてゲート制御部の更新が行われた[3]。また、同年に登場した2000系への対応として変電所側に回生電力吸収装置の設置により回生失効時対策が施されたため、6000系列や8200系と同様に三日市町駅を越えて橋本駅まで入線できるようになった[3]

しかし、車体・台車は丈夫であったが制御器の経年劣化による故障が頻発するようになり、長期にわたって使用不能となって泉北高速鉄道から100系電車を借り入れて車両不足をしのぐ事態も発生した。保守部品確保が困難になりつつあることや、試作車としての使命は既に全うしていることもあり、2001年7100系1次車の廃車発生品を流用して抵抗制御に改造、6200系に編入(6521Fに改番、同時に車体更新施工)され形式消滅となった[4]。なお、ブレーキ緩解時の排気音により当時の名残を垣間見ることができる[1]

その新旧車号の対照は以下のとおり。形式ことに6200系の追番号が付与された。

旧番号: 8501 - 8001 - 8002 - 8003 - 8004 - 8502
 ↓
新番号: 6521 - 6233 - 6234 - 6235 - 6236 - 6522

参考文献[編集]

  • 南海電気鉄道技術開発室「南海電鉄8000形チョッパ制御車両概要」『鉄道ピクトリアル』1975年11月号(通巻312号)、電気車研究会、1975年、57-60頁。
  • 南海電気鉄道車両部・井上広和(編)『日本の私鉄9 南海(カラーブックス547)』保育社、1981年、64-65頁。

関連項目[編集]

  1. ^ a b c 「南海電気鉄道高野線の車両④ 8001系」『週刊 鉄道データファイル』166号、デアゴスティーニ・ジャパン、2007年、16頁。
  2. ^ a b c 「私鉄車両めぐり〔130〕南海電気鉄道」『鉄道ピクトリアル』1985年12月臨時増刊号(通巻457号)、電気車研究会、1985年、189-190頁。
  3. ^ a b c 「私鉄車両めぐり〔153〕南海電気鉄道」『鉄道ピクトリアル』1995年12月臨時増刊号(通巻615号)、電気車研究会、1995年、237頁。
  4. ^ 「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2008年8月臨時増刊号(通巻807号)、電気車研究会、2008年、50頁。