固有派生形質

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祖先形質および派生形質の様々なパタンを記述する用語と分岐図 [1]

系統学において、固有派生形質(こゆうはせいけいしつ、autapomorphy)とは、ある分類群に固有の派生的な形質状態である。単一の分類群にのみ見られ、焦点を当てる分類群(、その他のいかなるクレード)に近縁な他のいかなる分類群や外群にも見られない[2] 。ゆえに固有派生形質は一つの分類群に関する派生形質である[3] 。固有派生形質(autapomorphy)という語は1950年にドイツ人昆虫学者ヴィリー・ヘニッヒによって造られた語であり、ギリシャ語の αὐτός, aut- = "自身"; ἀπό, apo = "分ける"; μορφή, morphḗ = "形" からきている。

議論[編集]

固有派生形質は単一の分類群にのみに存在するため、系統関係の情報を持たない。ゆえに、固有派生形質は系統関係の推定には役立たない。しかし、固有派生形質は共有派生形質共有祖先形質のように、対象とする分類群に関する概念である。あるレベルにおいて固有派生形質であるものは、系統樹のより下位の段階では共有派生形質となる[4]。例えば、ヘビの固有派生形質は、四肢動物を特徴づける2対の肢(これは近縁なen:Ophidia、およびその共通祖先も持っている)を消失したことである。よって、en:Ophidiaという分類群において2対の肢の消失という固有派生形質が存在する。[3]。しかしムカシヘビ上科とナミヘビ上科という分類群にとっては、2対の四肢の消失は共有派生形質である。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Roderick D.M. Page; Edward C. Holmes (14 July 2009). Molecular Evolution: A Phylogenetic Approach. John Wiley & Sons. ISBN 978-1-4443-1336-9. https://books.google.com/books?id=p2lWhjuK8m8C 
  2. ^ Futuyma, Douglas J. Evolutionary Biology. Sinauer Associaties, Inc., 3rd edition. 1998. Page 95.
  3. ^ a b Appel, Ron D.; Feytmans, Ernest. Bioinformatics: a Swiss Perspective. "Chapter 3: Introduction of Phylogenetics and its Molecular Aspects." World Scientific Publishing Company, 1st edition. 2009.
  4. ^ Forey, Peter L. History of the Coelacanth Fishes. Sprinter, 1st edition. 1997.