奥田亡羊
奥田 亡羊(おくだ ぼうよう、1967年6月5日[1] - )は、日本の歌人。心の花編集委員。現代歌人協会理事(2017~2021)。相模女子大学、早稲田大学講師。朝日カルチャーセンター新宿校講師。篤志面接委員[2] 。本名は奥田 尚良(おくだ たかよし)。
来歴[編集]
京都府京都市出身。祖父は俳誌「高原」を主宰した口語自由律俳人、俳画家の奥田雀草[3]。
聖光学院中学校・高等学校卒業。早稲田大学第一文学部卒業。1991年、テレビ局に入社し、文化・教育番組を制作(2002年退社)。担当番組で佐佐木幸綱と出会ったことがきっかけで、1999年、歌誌「心の花」に入会。[4]
2001年、文化庁「美しい日本語を語る会」評議員。2004年から群馬県の少年院で短歌指導を続けている。2005年、世田谷区日本語教育特区審議委員として「日本語」教科書の作成に参加。
受賞歴[編集]
- 1999年、作品「砂のダンス」で第42回短歌研究新人賞次席。[5][6]
- 2005年、作品「麦と砲弾」で第48回短歌研究新人賞を受賞。[7]
- 2008年、第一歌集「亡羊」で第52回現代歌人協会賞を受賞。[8]
- 2018年、第二歌集「男歌男」で第16回前川佐美雄賞を受賞。[9]
- 2022年、第三歌集「花」で第27回若山牧水賞を受賞。[10]
著書・評論[編集]
歌集[編集]
- 第一歌集『亡羊』(短歌研究社 、2007年)ISBN 978-4-86272-038-2
- 第二歌集『男歌男』(短歌研究社、2017年)ISBN 978-4-86272-528-8
- 第三歌集『花』(砂子屋書房、2021年)ISBN 978-4-7904-1808-5
共著・編著[編集]
- 『論争奈良美術』(平凡社、1994年)(共著)
- 『美しい日本語のすすめ』(財務省印刷局、2002年)(共著)
- 『東大寺〜美術史研究の歩み〜』(里文出版、2003年)(共著)
- 『シリーズ牧水賞の歌人たちvol.2「佐佐木幸綱」』(青磁社、2006年)(編著)ISBN 4861980305
評論・鑑賞[編集]
- 没後30年前川佐美雄特集「代表歌50首+鑑賞の手引」(角川短歌2020年7月号)
- 「牧水のイデア」(「第27回若山牧水賞記録集」2023年)
- 「牧水、後期三〇首」(沼津市若山牧水記念館館報第72号2024年)
作品[編集]
佐佐木幸綱の「男歌」の影響を受けつつ、過去を引きずる中年男を主題にした短歌などに特色がある[11]。台本の記法を取り入れた短歌など実験的な手法も取ることがある。
『亡羊』
- 宛先も差出人もわからない叫びをひとつ預かっている
- 砲弾がはるかな空をよぎる日のみずうみを脱ぐ蛇の恍惚
- 腕なくば箸を使わぬ食い方があるのだ天に揺れる向日葵
- 自転車を燃やせば秋の青空にぱーんぱーんと音がするなり
- 兵士1 ニンゲンは/兵士2 犬に食われてしまうほど/兵士3 自由なりけり/兵士4 空が青いな[12]
『男歌男』
- つわぶきの花の暗さを思いつつ体ひとつで落ちてゆく眠り
- 貝の裏とろりとろりと光りおり子を身籠もれる人の遊びに
- 石像となりたる夢に石の首落として千の椿咲かしむ
- 雨脚をほそほそと引く春雨に燃えているのは愛のある家
- 黒き傘さして運河を下りゆく 娘よ、父は雨に降る雪
『花』
- 鏡の奥にひと月ぶりの髭を剃る/空には竜の匂いがした
- 月光をもろ手ざわりに揉みしだく/菊ならば菊におい立つまで
- 鳥葬のような交わり重ねつつ/夜ごとに人の青空を見る
- アルバイトの経験をとえば俯きて/鹿の腑分けの熱さを語る
- フラワーなビューティフルなり/青空の下であなたと抱き合っていた
論文[編集]
- 「蟹満寺本尊考」佛教藝術208号(毎日新聞社、1993年)
番組制作[編集]
- NHKこころの時代「わがとこしへの川〜魂の歌人・ 竹山広〜」(2005年6月5日放送)
- NHK知るを楽しむ 「白洲正子〜目利きの肖像〜」(全4回)出演: 細川護熙 (2006年2月放送)
- NHKこころの時代「無念も捨てたもんじゃない」出演: 福島泰樹 (2011年3月6日放送)
- NHKこころの時代「永遠のいのちの教え~法華経のことば~」(全12回)出演: 北川前肇 (2012年放送)
- NHKこころの時代「道をひらく〜内村鑑三のことば〜」(全6回)出演: 鈴木範久(2013年放送)
参考文献[編集]
- 小見山輝 「奥田亡羊歌集『亡羊』」 - 「短歌往来」2015年7月号(特集「平成の名歌集を選ぶ」)
- 佐佐木幸綱論集『心の花の歌人たち』(ながらみ書房、2019年)ISBN 978-4866291369
- 梅原ひろみ 「切り石・奥田亡羊『花』」(「フランス短歌」vol.2 2022年6月)
- 梅原ひろみ 「奥田亡羊論」(「心の花」1500号記念号2023年10月号)
脚注[編集]
- ^ 『短歌研究 2014年12月号(2015短歌年鑑)』(短歌研究社、2014年)巻末「歌壇名簿」より
- ^ 公益財団法人全国篤志面接委員連盟『篤志面接委員名簿』(令和元年7月1日版)より
- ^ 短歌と定型考えたい 奥田亡羊さん 現代歌人協会賞 - 朝日新聞デジタル、「仏壇」奥田亡羊(「六花」vol.8六花書林2023年)
- ^ 佐佐木幸綱論集『心の花の歌人たち』ながらみ書房
- ^ 短歌研究1999年9月号
- ^ 菱川善夫講演集『素手でつかむ火-90年代短歌論』(ながらみ書房2001年刊)で菱川善夫は「砂のダンス」の作品の「ナンセンスの歌」「笑いの歌」を取り上げ、石川啄木との共通点を指摘している。
- ^ 短歌研究2005年9月号
- ^ 現代歌人協会ホームページよりhttp://kajinkyokai.cafe.coocan.jp/report2.html
- ^ 短歌往来2018年6月号
- ^ 宮崎日日新聞2022年12月23日記事より
- ^ “(ひと)奥田亡羊さん 中年男や働く高校生の歌を詠む元NHKディレクター:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年4月5日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ 歌集に「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ。」藤原新也『東京漂流』の脚注がある
外部リンク[編集]
- 奥田亡羊さんの本棚(ドキュメントシリーズ つながる本棚 第二章)インタビュアー 九条Tokyo店主・撮影編集 大小田直貴・撮影日 2021年8月
- 東郷雄二「橄欖追放 第9回 奥田亡羊『亡羊』(奥田亡羊作品書評)
- 「現代歌人ファイルその6・奥田亡羊」-トナカイ語研究日誌 (同上)