弦楽五重奏曲 (ベートーヴェン)

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弦楽五重奏曲(げんがくごじゅうそうきょく)ハ長調 作品29は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが1801年に作曲し、翌年出版された室内楽曲である。ベートーヴェンは3つの弦楽五重奏曲を遺したが、2曲は自作の編曲(下記参照)で、この作品29だけがオリジナルである(編成はすべてヴァイオリン2、ヴィオラ2、チェロ1となっている)。作曲されたのは作品18の弦楽四重奏曲の後である。

パトロンモリッツ・フォン・フリース伯爵に献呈された。ベートーヴェンは、彼にヴァイオリンソナタ第4番第5番、そして交響曲第7番を献呈している。

演奏時間は約30分。

楽器編成[編集]

ヴァイオリン2、ヴィオラ2、チェロ1

楽曲構成[編集]

第1楽章[編集]

アレグロ・モデラート ハ長調 4分の4拍子 ソナタ形式

冒頭に第1主題が2つのヴァイオリンで示され、経過句を経て第2主題が導入される。第2主題は、ソナタ形式において通常用いられる属調(ト長調)ではなく、平行調の同主調(イ長調)という変則的な関係の調で与えられる。この時期に始まった、ベートーヴェンの調性的・和声的な実験の一つであり、彼の作風が中期に入りつつあることを示している。展開部は主に第1主題で構成される。

第2楽章[編集]

アダージョ・モルト・エスプレッシーヴォ ヘ長調 4分の3拍子 ソナタ形式

第1主題、第2主題ともに再現部では装飾されて再現する。

第3楽章[編集]

スケルツォ アレグロ ハ長調 4分の3拍子 三部形式

主部の冒頭で主題が各パートに登場し、トリオの主題はカノン風に導入される。

第4楽章[編集]

プレスト ハ長調 8分の6拍子 ソナタ形式

再現部とコーダの前に、付点リズムの挿入句(アンダンテ・コン・モート・エ・スケルツォーソ)が置かれている。

参考資料[編集]

  • 「ベートーヴェン 弦楽四重奏曲全集 バリリ四重奏団」(UCCW-3018~25)の楽曲解説より(解説:高橋昭)

他の弦楽五重奏曲[編集]

外部リンク[編集]