強風警報システム

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強風警報システム(きょうふうけいほうシステム)とは、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)が開発した強風時の運行への影響を軽減するシステムである。

概要[編集]

これまで強風に対する列車の運行規制については、1986年に発生した山陰線余部鉄橋列車転落事故を踏まえ、風速25メートル以上で徐行規制、風速30メートル以上で運転中止(規制値は路線によって異なる)とし、規制値を下回り30分経過した時点で安全を確認し、支障がなければ規制を解除する手段を取っていた。しかしこの場合、規制値を超えていた時間は一切考慮せず、一瞬規制値を超えた場合でも規制解除まで30分待つ必要があり、運転再開に時間を要した。

同システムは統計学に基づく独自のアルゴリズム(法則)を用い、観測した風速の変化を元に今後の風速の上限値を3分間隔で予測する。予測される風速か実際に観測された風速のいずれかが規制値を上回ると規制を行い、予測される風速と実際に観測された風速の双方が規制値を下回ると直ちに規制を解除できる。速度規制時間・運転中止時間は約3割削減できるとされる。同システムは現存の観測機器を流用でき、また観測箇所ごとにデータベースを構築する必要がないため低コストで導入できる。一方で突風には構造上対応できないほか、観測した風速の変化状況によってはシステム導入前と規制時間が同じ、または長くなるケースもあり得る。

2005年8月11日に京葉線で初めて導入された後、同年末に発生したJR羽越本線脱線事故を機に強風による輸送障害が発生しやすい区間、路線で導入が進められている。

従来 強風警報システム
規制実施 観測風速が規制値を超えた段階で規制 観測風速か予測風速のどちらかが規制値を超えた段階で規制
規制解除 観測風速が規制値を下回り30分経過した後で安全確認 観測風速と予測風速の双方が規制値を下回った後で安全確認


導入路線[編集]

関東地方[編集]

導入路線 導入区間 運用開始日
京葉線 潮見 - 舞浜
市川塩浜 - 南船橋
海浜幕張 - 検見川浜
2005年8月11日
武蔵野線 北朝霞 - 西浦和
越谷貨物ターミナル - 吉川
三郷 - 南流山
2006年12月1日
宇都宮線 栗橋 - 古河 2006年12月1日
岡本 - 宝積寺 2007年12月19日
常磐線 藤代 - 龍ケ崎市 2006年12月1日
神立 - 高浜
岩間 - 友部
2007年8月1日
水戸 - 勝田
東海 - 大甕
2006年12月26日
常陸多賀 - 日立 2007年12月17日
成田線 佐原駅構内 2007年11月29日
鹿島線 香取 - 十二橋
延方 - 鹿島神宮
2007年11月29日
川越線 指扇 - 南古谷 2007年12月19日
総武本線 成東 - 松尾
飯岡 - 倉橋
猿田 - 松岸
2007年12月22日
外房線 上総一ノ宮駅構内 2007年12月22日
内房線 上総湊 - 浜金谷
太海 - 安房鴨川
2007年12月22日

東北・信越地方[編集]

導入路線 導入区間 運用開始日
東北本線 藤田 - 貝田
越河 - 白石
岩沼 - 名取
東仙台 - 岩切
松山町 - 小牛田
2006年12月1日
西平内 - 浅虫温泉 2007年12月17日
常磐線 勿来 - 植田
- 湯本
いわき - 草野
2007年8月1日
広野 - 木戸 2006年12月1日
木戸 - 竜田
富岡 - 夜ノ森
2007年8月1日
相馬 - 駒ケ嶺 2006年12月1日
羽越本線 あつみ温泉 - 小波渡 2006年12月5日
藤島 - 西袋 2007年12月17日
北余目 - 砂越 2006年12月27日
信越本線 直江津 - 黒井
柿崎 - 米山
2006年12月5日
越後線 白山 - 新潟 2006年12月5日
奥羽本線 福島 - 庭坂
板谷 - 大沢
米沢 - 置賜
高畠 - 赤湯
北山形 - 羽前千歳
舟形 - 新庄
2007年11月1日
大曲 - 神宮寺
和田 - 秋田
2007年11月6日
鶴形 - 二ツ井 2007年12月17日
田沢湖線 赤渕 - 大地沢信号場
志度内信号場 - 田沢湖
2007年11月6日
磐越西線 沼上信号場 - 関都
翁島 - 磐梯町
2007年12月14日
気仙沼線 陸前豊里 - 清水浜 2007年12月14日

参考文献[編集]

  • 強風警報システムの実用化 (PDF) (JR EAST Technial Review No.13 - Autumn 2005)
  • JR東日本「強風警報システム」を開発 (交通新聞社 交通新聞 2005年8月22日付)
  • 羽越本線事故における対策の実施状況について (JR東日本ホームページ)
  • 強風警報システムの研究(Special edition paper JR東日本)