舞鶴由良川大橋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
舞鶴由良川大橋
舞鶴由良川大橋を南側から見る
基本情報
日本
所在地 京都府舞鶴市字桑飼上・字地頭
交差物件 由良川国道175号京都府道55号舞鶴福知山線[1]
用途 道路橋
路線名 京都縦貫自動車道(綾部宮津道路)
管理者 西日本高速道路(NEXCO西日本)
設計者 新日本技研[2]
施工者 栗本・瀧上・住金・大谷櫻井JV、日立・横河・松尾・川田JV、石播・駒井JV、古瀬・大舞JV、熊谷・若築・白石・吉村JV、大林・金下JV[2]
竣工 1997年(平成9年)3月[2]
開通 1998年(平成10年)3月8日[3]
座標 北緯35度25分22秒 東経135度12分43秒 / 北緯35.42278度 東経135.21194度 / 35.42278; 135.21194
構造諸元
形式 5径間連続鋼箱桁橋+3径間連続鋼中路式アーチ橋+2径間連続鋼箱桁橋[1]
種別 鋼道路橋
設計活荷重 TL-25(B活荷重)[4]
上部工材料 鋼鉄
橋桁重量 約7,000 t[1]
全長 740 m[2]
21.6 m[5]
高さ 49.5 m[5]
桁下高 23.7 m[5]
最大支間長 200 m[4]
支間割 50.0+60.0+85.0+62.5+62.5 + 65.0+200.0+65.0 + 50.0+40.0 m[1]
地図
舞鶴由良川大橋の位置
舞鶴由良川大橋の位置
舞鶴由良川大橋の位置
舞鶴由良川大橋の位置
舞鶴由良川大橋の位置
関連項目
橋の一覧 - 各国の橋 - 橋の形式
テンプレートを表示
舞鶴由良川大橋アーチ部、由良川の上に架かる

舞鶴由良川大橋(まいづるゆらがわおおはし)は、京都府舞鶴市字桑飼上から字地頭にかけて由良川に架かり、京都縦貫自動車道(綾部宮津道路)の綾部ジャンクション - 由良川パーキングエリア間に所在する全長740メートルの道路橋である。5径間連続鋼箱桁橋と3径間連続鋼中路式アーチ橋と2径間連続鋼箱桁橋が連続する構造で、それぞれの長さは320メートル、330メートル、90メートルである。由良川を跨ぐアーチ主径間の支間長は200メートル、アーチライズは49.5メートルに達する[6]

建設の背景[編集]

京都縦貫自動車道は、京都府の縦貫高速交通軸を形成する、京都市宮津市を結ぶ全長約100キロメートルの高規格幹線道路である。このうち京都市から綾部市までの区間は建設省日本道路公団の手によって建設されたが、綾部市から宮津市までの25.1キロメートルは京都府および京都府道路公社の担当とされ、この綾部宮津道路のために1990年(平成2年)3月1日に京都府道路公社が発足した[7]

綾部宮津道路のうち、綾部ジャンクションから舞鶴大江インターチェンジまでの区間は南区間として1990年(平成2年)12月に有料道路事業許可を受け、1993年(平成5年)1月から本線工事に着手、5月24日に起工式を挙行した[8]。舞鶴由良川大橋はこの南区間に含まれる橋である。建設時の仮称は舞鶴2号橋であった[9]

設計[編集]

架設現場付近では、古生代二畳紀の堆積岩とされる下見層群と、夜久野貫入岩類と呼ばれる火成岩類(主に輝緑岩と圧砕花崗岩)を基盤岩とし、その上を洪積層に属する段丘堆積物が密に締まった砂礫層として覆い、由良川の堆積物である沖積層シルトがその上に厚く堆積している[10]

渡河地点付近の由良川は暫定改修断面であり、低水路部を溢水して周辺の田畑を冠水させる洪水がしばしば発生していた。このため低水路部に橋脚を設置しないことを条件として橋梁形式の検討を行い、以下の4案が比較された[11]

  1. 5径間連続鋼箱桁+3径間連続中路式アーチ+2径間連続鋼箱桁
  2. 6径間連続鋼箱桁+鋼ニールセンローゼ+3径間連続鋼箱桁
  3. 5径間連続鋼箱桁+3径間連続上路式アーチ+2径間連続鋼箱桁
  4. 4径間連続鋼箱桁+5径間連続鋼V脚ラーメン

このうち、構造的に曲線線形への対応が可能で、経済性と景観性の観点から、第1案が選択された[11]。第1案は、4案の中で経済性と景観性が特に優れると評価された案となっている[12]

舞鶴由良川大橋のスケルトン図

地質、構造特性、施工性、経済性などを考慮し、両側の橋台については直接基礎とし、斜面上に設置される第1、第9橋脚については深礎杭基礎、軟弱地盤上に設置される第2から第8の橋脚については荷重に対する信頼性が高いニューマチックケーソン基礎を採用した。このうちアーチの基礎となる第6、第7橋脚については、形状が大きく河川保全区域内でもあるため、ピアケーソン形式[注釈 1]とした[14]

一方上部構造については、架橋地点において半径1,000メートルの曲線となる平面線形であり、アーチ部に曲線があることから、アーチと補剛桁の交差部において主構が折れた構造にした世界でも類を見ないバランスドアーチ橋となった[15]。主構は2主構で、アーチはバスケットハンドル型ローゼ形式で頂点での主構間隔は15メートルとなっている[11][2]

補剛桁とアーチリブの交差部において折れた構造となっており、中間支点はアーチリブ、支柱、下横支材、対傾構が交わる構造であるため、複雑な力が働く。そこで立体有限要素法 (FEM) による解析を実施し、応力が許容値を超過していると判断された部材には補強が実施された[16]。さらに製作においても精度が重要なポイントになることから、3次元計測機による精度管理を実施するなどした[17]。設計詳細図の作成においても3次元CADなしには実現困難で、現代のコンピューター化によって実現された橋となった[18]

建設[編集]

右岸側5基、左岸側2基の計7基のニューマチックケーソン基礎を同時施工した。事前に地質調査、ボーリング、貫入試験、物理試験、透水試験、透気試験、簡易ガス測定、土壌分析などを実施し、その結果に応じて橋脚ごとに地盤改良やケーソン設計の修正などを実施した[19]。1993年(平成5年)11月に地盤改良に着手し、1995年(平成7年)1月12日にケーソン沈下を完了し、ケーソン沈下清め式が実施された[20]

アーチ橋部分の側径間はクローラークレーン・ベント工法で、中央径間は河川内に設けた桟橋からベント[注釈 2]を組み立てた、トラベラクレーン・ベント工法で組み立てた[注釈 3]。側径間部は3本のベントを建てて、まずアーチリブを150トン吊りクローラークレーンを用いて架設し、続いて補剛桁を架設した。中央径間は、アーチリブと補剛桁の交差部までを150トン吊りクローラークレーンと360トン吊りトラッククレーンを使用して架設した。その後、河川内に仮桟橋を設置して、そこにベントを建てて、第6橋脚・第7橋脚上に組み立てたトラベラクレーンを使って両側から中央へ向かって補剛桁を架設していった。最後にトラベラクレーンを使って第7橋脚側から第6橋脚側へ向かって、床組上に設置したベントを使って順次架設して第6橋脚側で閉合した[18]。架設工事中には、日本海側特有の気象条件により風雪によって工事の中断を余儀なくされることもあった[23]。1996年(平成8年)6月5日に舞鶴由良川大橋の閉合式が実施された[24]

舞鶴由良川大橋のアーチ橋部の組み立て順序図、丸数字が組み立て順序を示し、プライムがついている丸数字は図の右側から組み立てた、赤い柱は仮設の柱(ベント)

開通とその後[編集]

橋上(京都縦貫自動車道)

1998年(平成10年)3月8日、南区間の開通とともに供用を開始した[3]

京都縦貫自動車道の丹波インターチェンジより北の区間を京都府道路公社が管理してきたが、高速道路料金の統一化を図り利用者の利便性向上をめざす取り組みとして、全区間が西日本高速道路(NEXCO西日本)に2023年(令和5年)4月1日から移管された[25][26]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ピアケーソンは、ピア(橋脚)とケーソン(基礎)を一体で沈設する方法で、高い施工精度が必要とされる[13]
  2. ^ ベントは、架設桁を支える仮設備[21]
  3. ^ トラベラクレーン工法は、架設する桁に走行軌条を設置して、その上を走行するクレーンを使って桁の架設を実施する工法[22]

出典[編集]

  1. ^ a b c d 「舞鶴2号橋(仮称)」p.12
  2. ^ a b c d e 『橋 BRIDGES IN JAPAN 1997-1998』p.58
  3. ^ a b 『京都府道路公社の歩み』p.77
  4. ^ a b 「京都府道路公社向け舞鶴由良川大橋」p.74
  5. ^ a b c 「舞鶴2号橋(仮称)」p.13
  6. ^ 「舞鶴2号橋(仮称)」pp.12 - 13
  7. ^ 「悠久の文化が薫る綾部宮津道路」pp.3 - 4
  8. ^ 『京都府道路公社の歩み』p.2
  9. ^ 『京都府道路公社の歩み』p.20
  10. ^ 「舞鶴2号橋(仮称)の設計と施工(上)」pp.17 - 18
  11. ^ a b c 「舞鶴2号橋(仮称)の設計と施工(下)」p.31
  12. ^ 「舞鶴2号橋(仮称)の設計と施工(下)」p.32
  13. ^ 北陸新幹線 関川橋りょう”. 錢高組. 2024年2月27日閲覧。
  14. ^ 「舞鶴2号橋(仮称)の設計と施工(上)」p.19
  15. ^ 「舞鶴2号橋(仮称)の設計と施工(上)」p.17
  16. ^ 「舞鶴2号橋(仮称)の設計と施工(下)」pp.34 - 35
  17. ^ 「舞鶴2号橋(仮称)の設計と施工(下)」pp.36 - 37
  18. ^ a b 「舞鶴2号橋(仮称)の設計と施工(下)」p.38
  19. ^ 「舞鶴2号橋(仮称)の設計と施工(上)」pp.19 - 22
  20. ^ 「舞鶴2号橋(仮称)の設計と施工(上)」pp.22 - 23
  21. ^ ベント工法(トラッククレーンベント工法)”. 日本車両製造. 2024年3月12日閲覧。
  22. ^ トラベラクレーン工法”. 日本車両製造. 2024年3月12日閲覧。
  23. ^ 「舞鶴2号橋(仮称)」p.14
  24. ^ 『京都府道路公社の歩み』p.76
  25. ^ 京都縦貫道の全区間が4月からネクスコ管理に”. 両丹日日新聞 (2023年3月30日). 2024年3月5日閲覧。
  26. ^ E9 京都縦貫自動車道(宮津天橋立IC~丹波IC)の移管及び新たな料金への移行について”. NEXCO西日本 (2022年11月14日). 2024年3月5日閲覧。

参考文献[編集]

  • 京都府道路公社 編『京都府道路公社の歩み : 京都縦貫自動車道綾部宮津道路全線開通記念』京都府道路公社、2004年。 
  • 『橋 BRIDGES IN JAPAN 1997-1998』土木学会、1997年。 
  • 「京都府道路公社向け舞鶴由良川大橋」『日立造船技報』第58巻第4号、日立造船、1998年1月、74頁。 
  • 神敏郎、松原武司「悠久の文化が薫る綾部宮津道路」『橋梁』第32巻第7号、橋梁編纂委員会、1996年7月、2-7頁。 
  • 「舞鶴2号橋(仮称)」『橋梁』第32巻第7号、橋梁編纂委員会、1996年7月、12-14頁。 
  • 神敏郎、木村淳、堀田洋二、村江博信、川嶋淳一、荒木俊「舞鶴2号橋(仮称)の設計と施工(上)」『橋梁と基礎』第30巻第1号、建設図書、1996年1月、17-23頁。 
  • 神敏郎、木村淳、堀田洋二、村江博信、川嶋淳一、荒木俊「舞鶴2号橋(仮称)の設計と施工(下)」『橋梁と基礎』第30巻第2号、建設図書、1996年2月、31-38頁。 

外部リンク[編集]