電波妨害弾1型

電波妨害弾1型 (でんぱぼうがいだんいちがた) は海上自衛隊が装備する艦船用の投棄型電波妨害装置であり、主に護衛艦に装備されている。

略称としてEJ弾とも呼ばれる。開発・製造は三菱電機が行っている^[1]。

概要[編集]

海上自衛隊の艦船が装備するの Mk36 SRBOC チャフロケットシステムの固定式ランチャーから発射される投棄型の電波妨害装置である。発射されると数百メートルを飛しょうした後にパラシュートによって滞空し、主にアクティブレーダーシーカーの対艦ミサイルに対して電波妨害を行ってミサイルの追尾を回避または電波妨害弾に追尾転移させて、自艦を防御する。

なお、本システムは単独で用いられるものではなく、NOLQ-3を始めとする水上艦用EW管制システムのEWオプションの一部である^[2]。

開発[編集]

1984年度（昭和59年度）から開発名「投棄型電波妨害機」として開発が着手され、下北試験場で飛しょう体としての性能試験、埼戸島で妨害性能を確認後、実海面でのシステム試験を経て1995年度（平成7年度）以降に導入が開始された^[3]。

詳細[編集]

アクティブレーダーシーカーの対艦ミサイルに対しては、チャフやデコイ、自艦に装備した電波妨害装置(オンボードジャマー)等があるが、近年のアクティブレーダー方式の対艦ミサイルは電波妨害源を追跡するHOJ(Home On Jam 妨害源追跡)機能を有しており、自艦の電波妨害装置の安易な使用は逆効果になる。そのため、電波妨害を自艦から離れた場所で行う投棄型の電波妨害手段の導入が必要となり開発された。

電波妨害弾1型はMk36 SRBOCから発射されるため、現有のチャフ弾と同じサイズ(全長1.2m、直径0.13m)となっており、発射されると推進装置で加速する二段階推進方式を行い、機械式の展開翼を開いて飛しょうする。数百メートル程度飛しょうして推進部が分離し弾体が降下し始めると落下傘を開いて浮揚するとともに、電波を発信して妨害を開始する^[3]。

妨害波の妨害成分は相手ミサイルのアクティブレーダーシーカーが送信している電波を妨害弾が受信して周波数メモリに記憶させ、自艦が探知した目標のレーダー情報(距離、速度等)と電波探知機からの情報(周波数、飛来方位)等を計算機へ入力してミサイルから見た自艦及び電波妨害弾の距離を算出し、この距離差から妨害波をミサイルのレンジゲート(ミサイルが把握しているミサイルと自艦との距離範囲)に入れるための妨害波遅延時間を算出する。この遅延時間は遠隔制御器により飛しょう中の電波妨害弾へ無線にて指示され、周波数メモリ内の受信情報を変調して発信する^[4]。その際、自艦からの情報により妨害弾の空中線を飛来するミサイルの方向に向けることにより実効放射電力を高めている^[5]。なお、空中線の指向制御は地磁気検出方式を用いている^[3]。

このため、ミサイル側から見るとミサイルが得ている目標エコー(自艦)とほぼ同じ距離でよりシグナルが強い目標が出現することになり^[6]、ミサイルの追尾を回避または電波妨害弾に追尾転移させる。

脚注[編集]

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出典[編集]

^ “Judgeit”. 一般社団法人構想日本. 2024年5月1日閲覧。
^ “見えざる敵との戦い非対称戦から対称戦へ”. 水交会. 2024年5月1日閲覧。
^ ^a ^b ^c “技術研究本部50年史 3 技術開発官(船舶担当)”. 国立国会図書館. p. 78. 2024年5月1日閲覧。
^ “特開平08-200995”. 独立行政法人工業所有権情報・研修館. 2024年5月1日閲覧。
^ “特開2001-221595”. 独立行政法人工業所有権情報・研修館. 2024年5月1日閲覧。
^ アクティブレーダーホーミングの場合、ミサイル側で目標との距離を把握することが出来るため、目標との距離でフィルタリングすることにより、電波妨害による偽目標を排除している。

参考文献[編集]

技術開発官（船舶担当）『技術研究本部50年史』2002年、78頁。
見えざる敵との戦い非対称戦から対称戦へ水交会研究委員平川眞治
特許情報プラットフォーム　特開平08-200995　電波妨害装置　独立行政法人工業所有権情報・研修館
特許情報プラットフォーム　特開2001-221595　電波妨害装置　独立行政法人工業所有権情報・研修館