QPS研究所

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株式会社QPS研究所
市場情報
東証グロース 5595
2023年12月6日上場
ISIN JP3244850008
業種 人工衛星開発/ソリューションプロバイダ
設立 2005年6月15日
創業者

八坂哲雄(九州大学名誉教授 工学博士)

桜井晃(九州大学名誉教授 飛行力学)

舩越国弘(三菱重工業株式会社 ロケット開発者)
本社 〒810-0001 福岡市中央区天神1-15-35 レンゴー福岡天神ビル6F、
福岡県
日本
主要人物

大西俊輔(代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)

市來敏光(代表取締役副社長兼最高執行責任者(COO)
製品 小型SAR衛星QPS-SARシリーズ、衛星データ、衛星データを利用したソリューションサービス
売上高 16億4000万円 (2024年5月期)
営業利益
2億9000万円 (2024年5月期)
利益
1億4000万円 (2024年5月期)
純資産 52億00百万円(資本剰余金含む) (2023年5月)
従業員数
46人 (2023年5月)
ウェブサイト https://i-qps.net/

株式会社QPS研究所(キューピーエスけんきゅうじょ: Institute for Q-shu Pioneers of Space,Inc.)は小型SAR衛星を開発、運用し、衛星データを提供するとともに、衛星データを活用したインフラ管理業務の高度化・効率化や新たなサービス創出を目指す、ソリューションサービスを提供する日本の企業。

⼩型合成開口レーダー(SAR)衛星を開発し、観測したデータを販売している。また、衛星データとマシーンラーニングを活用した小型SAR衛星を36機同時に運用することで得られる、高頻度観測データ提供サービスの事業化と、衛星データを活用した企業・政府向けのソリューションを提供している。

歴史[編集]

1995年(平成7年)、九州大学で八坂哲雄の下で50cm級の小型衛星の開発を始めた。

1998年(平成10年)、テザーダイナミクス研究衛星を開発。

2003年(平成15年)、オーロラ帯磁化プラズマ観測衛星を開発。

2005年(平成17年)6月15日、九州に宇宙産業を根付かせることを目的にQPS研究所を設立。

2009年(平成21年)、九州大学と協力体制の小型人工衛星QSAT-EOSプロジェクトが文部科学省超小型衛星開発事業に採択された。

2014年(平成26年)11月6日、ロシアのオレンブルク州ヤースヌイ宇宙基地からQSAT-EOSを打ち上げ、成功させた[1]

2017年(平成29年)、シリーズAラウンドで九州最大規模の総額23.5億円の資金調達が行われた。

2019年(令和元年)7月8日、内閣府より、「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(平成28年法律第77号)」(通称 衛星リモートセンシング法)[2]に基づく「衛星リモートセンシング装置使用許可」の認可を宇宙ベンチャー企業としては初めて認可された[3]

QPS-SAR PROJECT[編集]

このプロジェクトでは衛星の軌道によって名前が付けられている。

QPS-SAR 1号機 「イザナギ」[編集]

日本初の100kg台小型SAR衛星の「イザナギ」は、将来の可視化データ解析ビジネスのための実証機として2019年(令和元年)12月11日18時55分(日本時間)にインドサティシュ・ダワン宇宙センターにて、PSLVに乗せて打ち上げられた。打ち上げは無事に成功した。 打ち上げの当日には福岡県庁ロビーでパブリックビューイングが開催され、衛星の開発した九州の地場企業や地元の小中学生など約500人が集まった[4]。 高度は575kmで周期は90分、傾斜角は37°の軌道に乗った。

翌日12月12日早朝にイザナギと初交信に成功し、12月16日にアンテナの展開に成功[5]、12月18日にはレーダーの使用を開始した。 初の試みづくしだったイザナギは衛星機能の95%の成功を確認することができたが[6]、最後に一部不具合が見つかり、最終ステップのデータの画像化には至らなかった。そのため、2号機では改良に取り組むこととなった。

QPS-SAR 2号機 「イザナミ」[編集]

1号機での結果を受け改良を加えられたQPS-SAR2号機の「イザナミ」は、2021年(令和3年)1月25日0時00分(日本時間)にアメリカ合衆国フロリダ州ケープカナベラルメリット島にあるケープカナベラル宇宙軍施設から、SpaceXファルコン9によって打ち上げられた。打ち上げは無事に成功し、同日1時14分に高度525kmの太陽同期準回帰軌道に軌道投入された。 コロナ禍による影響により、打ち上げの際はオンラインのパブリックビューイングが開催され、深夜にも関わらず800人以上が同接し、新聞やテレビやウェブの記事で取り上げられた[7]

同日の朝に初交信に成功し、1月30日の朝に収納型アンテナの展開を成功させた。そしてファーストライト(初画像)の取得に向けた衛星機器の調整を続けて、同年2月19日の14時9分(日本時間)にファーストライトの取得に成功した。初画像ながらいきなり小型SAR衛星としては日本初のアジマス(ここでは衛星の進行方向のこと)分解能1.8mであった。記念すべき初画像は、アメリカ合衆国のカリフォルニア州サンフランシスコであった。高層ビル群やサンフランシスコ港の船舶と積み込まれる車を鮮明に写していた。さらに、同年5月13日には小型SAR衛星において日本初のレンジ(衛星のマイクロ波を照射する方向。もしくは、衛星の進行と直交する方向のこと)分解能0.7mの高分解能かつ精細な画像の取得に成功した[8]

2021年(令和3年)6月22日、「福岡市実証実験フルサポート事業「宇宙」採択プロジェクト」に採択された[9][10]

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ 年の差チーム・QPS研究所が取り組む「使える」小型人工衛星QSAT-EOS”. astavision (2015年5月14日). 2024年5月26日閲覧。
  2. ^ 衛星リモートセンシング法”. コトバンク. 2024年5月26日閲覧。
  3. ^ QPS研究所:INCJ投資先のQPS研究所が、ベンチャー企業で初めて衛星リモセン法「衛星リモートセンシング装置使用許可」を取得”. 株式会社INCJ (2019年7月8日). 2024年5月26日閲覧。
  4. ^ QPS研究所、小型SAR衛星「イザナギ」の打ち上げが成功~福岡県庁でパブリックビューイングを実施~”. 株式会社INCJ (2019年12月17日). 2024年5月26日閲覧。
  5. ^ 株式会社QPS研究所の小型SAR衛星「イザナギ」の超軽量展開型パラボラアンテナに、東芝マテリアルのモリブデンメッシュが採用されました。”. 株式会社東芝 (2020年1月31日). 2024年5月26日閲覧。
  6. ^ 小型SAR衛星「イザナギ」、SAR送信に成功! 初期運用で約95%のSAR衛星機能を実現いたしました”. 株式会社QPS研究所 (2020年4月3日). 2024年5月26日閲覧。
  7. ^ [九州から宇宙へ]QPS研究所が小型SAR衛星2号機「イザナミ」打ち上げに成功!”. 福岡市科学館. 2024年5月27日閲覧。
  8. ^ <速報>2021年3月3日(水) 小型SAR衛星2号機「イザナミ」のファーストライト(※1)画像を公開! 待望の初画像で、小型SAR(※2)衛星としては 日本初アジマス(※3)分解能1.8m、レンジ(※4)分解能0.7mを実現しました!”. 株式会社QPS研究所 (2021年3月3日). 2024年5月27日閲覧。
  9. ^ 宇宙テーマの実証実験プロジェクト4件を採択 福岡市と福岡地域戦略推進協議会”. ふくおか経済Web (2021年9月29日). 2024年5月27日閲覧。
  10. ^ 福岡市実証実験フルサポート事業 「宇宙」 採択 プロジェクト衛星データを活用したため池モニタリング実証で有効性を確認”. スカイパーフェクトJSATグループ (2022年7月22日). 2024年5月27日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]